聖剣に選ばれし者(レナルド視点)
明けましておめでとうございます!!
今年も頑張って更新していこうと思います!
と言うことで一話投稿です。
何の因果か知らないけれど、俺は聖剣に選ばれた。
魔王を倒してくれと言う王様の言葉に、初めは戸惑った。
確かに剣術や魔術に自信はある。しかし、他にも俺より強い人は沢山いるはずだ。
なのに、何故俺が選ばれたのかそれが分からなかった。
一介の騎士であるこの俺が勇者に選ばれるだなんて思っても見なかった。
そりゃあ、聖剣に選ばれたし、王様にも頼まれたから魔王討伐を放棄する気は無いが。
それでも俺が魔王を倒せるのか不安だった。
平民で初の首席で学園卒業を果たしたことで、予てより念願の王国騎士に入団することが出来た。
王国騎士は、各町にある警備隊とは違い剣術・魔術共に高い素養が必要で尚且つ厳しい入団試験を合格しなければなれない。
また、平民、傭兵と階級に関係なく試験は受けられるが入団試験には多額のお金がいるため、多くは貴族のなる職業とされていた。
例外を上げるとするなら、この王立学園を優秀な成績で卒業した者には王国の保有する騎士団・王宮魔術師などの就職に対して資金免除がされる。
また、この王立学園は優秀な人材育成を目的としている為、入学試験はとても難しいが学費は平民でも払える費用だった。
その為、俺のように平民で騎士団に入りたい者の多くが学園に通っていた。ただ知識を深めたいと言う者もいたが。
俺は其処で主席という優秀な成績で卒業することができ、資金免除を受けられることができた。
魔術の成績も良かったため魔術師側からも誘いが来たが、幼い頃に見た魔物と戦う騎士の後姿にずっと憧れていた。
だから、魔術師という選択はなかった。ただただ騎士だけを目指してやっと掴んだ道だから嬉しくて、これから俺も騎士として沢山の人を救うんだと意気込んでいた矢先だった。
***
騎士として間も無くの出来事だった。
最近魔物の動きが活発化して、魔王の復活が囁かれていた。
その為、国を挙げて我はと思う強者を募り聖剣に選ばれる勇者を探していた。
今のこの状況に俺も何か出来ないだろうかと考えはしたものの、たかが一介の新米騎士である自分に聖剣なんぞ抜けるわけは無いと諦めていた。
そんな折に、王宮に魔物が襲撃するという事件が起こった。
侵入して来た魔物は何処かを襲撃するでもなく王宮の人達を嘲笑うかのように逃げ回っていた。
何の目的で襲ってきたのか分からなかったが王宮を大混乱に陥れたのは言うまでもないだろう。
王宮内を逃げ回る魔物達を騎士団総出で追い駆けていた。
ある一匹の魔物がその部屋に入ったのを見かけて慌てて後に続いて中に入った。
その部屋は聖剣が祀られている部屋だった。その魔物は部屋の中央に突き刺さっている聖剣に手をかけ様としているところだった。
改めて考えてみると、聖剣は勇者しか抜く事の出来ないものである為魔物が持って行ける筈も無かったのだが、その時の俺は国の宝である聖剣を奪われると思い焦ってしまった。
騎士団の入団祝いにと両親から貰った真新しい剣を抜き魔物を聖剣から引き離す。
王宮に侵入して来た魔物を何匹か倒していたが、どうやらこの魔物は他とは段違いに強いようだ。ガーゴイルやゴーレムのように石系でできている訳でもないのに、まるで鋼のように異様に硬い。
もしかしたら魔族に匹敵するかもしれない。
剣を切り結び援軍が来ることを少し期待しつつ相手の攻撃を耐えていたのだがそう甘くは無かったようだ。
一向に誰かが来る気配は無い。
そのうち剣の方から何かがひび割れる音が小さく聞こえてきた。
良く見ると剣の柄の部分に小さなひび割れが入っていた。
両親がくれた剣ではあったが、こいつではこの魔物の攻撃を防ぎきれなかったようだ。
「くっ!!」
ひびの入った剣では戦えないと思い距離をとろうと後ろに下がるが、此方の考えを読まれていたらしく魔物が追撃してくる。
慌てて持っている剣で防ぐ。
ガキンッと言う音と共にととうとう耐えられなくなったのか剣は折れてしまった。
迫り来る攻撃に咄嗟に何かで防ごうと横に在った物を手にしていた。
「え!?」
思わず手に取ってしまったがそれが今自分の手の中に在ることに吃驚していた。
聖剣で防いだことで敵も驚いたのか一瞬の隙が生まれる。
すかさず後ろへ飛び退いて体勢を立て直すことにした。
剣を構え直して敵の方へ向き直る。
よく見ると敵の攻撃して来た側の手には深々と切り傷があった。
剣で防いだだけだというのに、聖剣ってのはこれほどの鋭さがあるのか。
聖剣の鋭さに警戒したのか魔物も一定の距離へと後ずさる。
斬り込もうとしたところで相手はもう片方の手をかざして魔弾を放ってきた。
慌てて横へと避ける。
魔弾というのは自身の魔力を圧縮して放つ技で魔族と知能の高い特殊な魔物しか扱えず、殆どの魔物はこれを使えない。
と言うことは、この魔物はその特殊な部類に入るという事か。
次々と魔弾を撃ってくる。
どうやら近付かせる気は無さそうだ。
なら魔術で倒すか。否、この部類の魔物は魔術に耐性があったな。
剣で斬るしかないという訳か。
なるほど、敵も考えたもんだな。それほど聖剣を恐れていると言うことか。
剣の間合いを避けて離れているようだな。
そっちがそう来るならこっちにだって策はあるさ。
次々と迫り来る魔弾を掻い潜り剣を構える。
剣に魔力を纏わせる様に流し込む。
すると、剣の周りに風が纏いだした。
予想外の事に少し驚いたが敵のことに集中することにした。
「ハアッ!!」
剣を振り抜くと纏っていた風は風の刃となり、魔物を二つに切り裂いた。
「す、すごい。」
思っていたよりも威力が凄いことに驚いた。
これが聖剣の力ということか。
「こ・・・これは。」
「!!」
突然扉の方から声が聞こえてきたので吃驚して振り返ると、この国の第三王子と近衛騎士が立っていた。
どうやら、聖剣の力に呆けて誰かが入ってくるのに気が付かなかったらしい。
ジッと此方を見ている。
「・・・。」
えっと・・・・この状況どうすればいいんだ?
聖剣、元に戻した方がいいかな?
「お前・・・・。」
そっと聖剣を元在った場所に戻そうと動いた時、王子が声を掛けてきた。ビクッと肩が跳ね動きが止まってしまう。
数秒固まっていた後、恐る恐る王子の方へと振り返る。
「えっと・・・・。」
「その剣を抜いたのか?」
ジッと見る視線は何を考えているのか分からない。
ゴクリ。
聖剣と自分を無表情で凝視するその人に不安が募る。
怒られる?
もしや、聖剣を盗んだと思われてるのか?
国の宝である聖剣を抜いたから何か罪にでも問われるのだろうか!?
ちょ、ちょっと待って!!
俺別に聖剣を盗んだわけじゃないよ!?
「あの、俺は別に盗んだわけじゃ―――」
「シア。あいつを連れて来い。」
「はい。」
「え!?」
焦って弁解をしようとしたが、どうやらあちらは聞く耳を持たないようで隣に佇んでいた近衛騎士に命令する。シアと呼ばれた騎士は、直ぐさま近付いてレナルドを連行していった。
連れられて来たのは何と謁見の間で、どうしてこういう状況になったのかは知らない。
ただ、今は王様と対面していることに驚きで声も出せなかった。
まぁ、王様の許可がありるまで声なんか出せないけども。
「・・・・。」
えっとぉ・・・・これはどういう状況なんだろうか?
何で俺は王様と向き合っているんだ?
と、とりあえず成り行きを見守るとしよう。
「フム。この者が聖剣を抜いたのか?」
「はい。」
斜め前で膝をついていた王子が返事をする。
「そうか。お主、名は何と申す?」
「は、はい!レナルド・コルトーと申します。」
いきなり此方に質問してきたので驚いて上擦ってしまった。
一介の騎士が王様と話をする事なんて滅多に無い。
その滅多に無い状況に陥ったことで脳内はパニック状態だ。
「では、レナルド。お主に魔王討伐を頼みたい。」
「ッ!?」
聖剣を抜いてしまったその意味。
聖剣に選ばれた勇者が魔王討伐に出かけるということは、寝物語として誰もが知っていることだった。
それなのに、魔物襲撃事件や王様の謁見と予想外の事が続けて起こったことで自身が仕出かした事に今まで気が付かなかった。
そう、聖剣を抜いたレナルドは選ばれた勇者だと言うこと。
改めてそのことに気が付いて思考停止してしまった。
その後色々と話が続いていたようだがショートした頭には入ってこず、気が付けば宿舎の自身の部屋の前に立っていた。
ちなみに、後から聞いた話だが返事をしないのは不敬という思いが無意識に働いたのか返事はしっかりとしていたらしい。
あれ?俺あの後如何したんだっけ?
夢か!?
と、思ったが手にしている聖剣に気が付いて現実だという事にドッと汗が出る。
夢じゃなかったぁ!!!?
え・・・じゃあ、俺が勇者?
勇者という重責に不安が圧し掛かる。
聖剣を握る手が汗をかく。
「レナルド。」
「うわぁ!!」
ジッと聖剣を見ていた時後ろからいきなり声を掛けられた。
立っていたのはエリオットだった。
平民と貴族と言う身分差はあるが、それでも彼は貴族と言う身分を鼻にかけず接してくれる親友だ。
「エリオットか。・・・驚いた。」
「驚かせたか。すまん。」
彼も騎士を目指し、同じ王国騎士として入った同期だ。エリオットなら近衛騎士としてでもやっていけたのだが彼はその話を蹴って王国騎士になった少し変わった貴族でもある。
「・・・・それは?」
手に持っていた聖剣を指差して聞いてきた。
「これか?これは・・・・聖剣だ。」
「・・・そうか、それが聖剣か。お前、本当に勇者に選ばれたんだな。」
「ああ。・・・と言うか、広まるの早いな。」
王様との謁見は少し前だというのにもう知っていると言うことに正直驚いた。
「さっき招集があったんだ。その時聞いた。」
「招集!?」
え!?俺出てないぞ!?
隊長に怒られるかな!?
俺のとこの隊の隊長は少々時間に厳しいからな。サボったとなると怒鳴られる。
「ああ。珍しくお前が居ないと思ったら、勇者の名前がお前だって言うから本当か聞きに来たんだが・・・・・そうか・・・。三日後、ジルベール王子達と行くんだってな。」
「え?・・・あ、あ~。そ、そうみたい?」
「何で疑問系なんだ?」
「あ、あははは。」
そ、そんな話になってたんだな。
王子と近衛騎士数名と旅を共にするって事か?
うう~ん・・・・気まずいな。
俺大丈夫だろうか。
「・・・そうか、じゃあな。」
「え?・・・あぁ。」
ん?
エリオットは何しに来たんだ?
俺が勇者だってことを確認しに来ただけか?
・・・・・・・。
時々あいつが何考えているのか分かんないんだよな。
無口すぎるだろ。
もっと言いたい事言ってくれればいいのにな。
話の続きになりますので、次の話も夜に予約投稿しておきます。
誤字脱字・感想等ありましたらコメントくださると嬉しいです。




