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この世界で生き残るために  作者: スタ
四章 ゲームシナリオ編
38/61

四面楚歌(ゲーム的に)

今回タイトル詐欺と言う名の内容です。

別にシリアスでも無い日常の一コマです。

 


 敵陣ど真ん中!(ゲーム的に言って)




 あ、勇者一行と敵対する気はないですよ?

 何となく言ってみたかっただけです。









「エル~!!色々採って来たよ!」

「茸に山菜の群生地までありました。」


 茂みの奥からフィーアとパトリシアが両手いっぱいの食材を抱えて帰って来た。


「あら、大量ね。」


 駆け寄って来たフィーアの頭を撫でつつ、両手いっぱいの食材を見る。


 うん。

 毒茸とか入ってないわね。

 やっぱ、パトリシアに付いて行って貰って良かったわ。


「ありがとう。其処に纏めて置いておいて。」

「分かりました。」


 指差す方へ置いてもらって、早速食事の準備に取り掛る。


 今、私達は宝玉のある遺跡まで旅をしているのですが、今日は街に着けず森の中で野宿となりました。


 レナルドとエリオットは薪を拾って火を起こして貰った後、鍛錬と言って今二人で打ち合いをしています。いや~暑苦しいですね、男の子って。

 グレンは今晩のお肉を狩りに行ってます。

 アルコは近くの川まで水を汲みに行ってます。


 ジルですか?

 近くの木に寄りかかって不貞腐れてますよ。

 よく見るとジメジメとした空気を漂わせて茸まで生やしてるじゃないですか。

 うわぁ、近寄りたく無いですね。



 彼があんなになっているのは、ほらあれですよ。王子ですから庶民の生活には不慣れでして。

 水汲みに行かせれば井戸は何処だとか言うし、川の水を汲んでくることを教えたら何故か桶を失くしてくるし(流れていったんだとか)。

 山菜を採りに行かせればこんな物を食べるのかと文句を言い、終いには茸の傘だけを取ってくる始末。因みに毒茸や毒草を取ってくるのは標準装備ですよ。

 薪拾いに行かせれば、湿った木を持って来て薪にならない。

 狩りに行かせるにも魔術師なので術を唱えている間に獲物が逃げるので不向きだし。剣を使わないのかって?魔術の才能はあったけど剣の才能は無かったんだって。笑いながらパトリシアが言ってた。

 料理は出来ないししたことがないと。



「ジルは役立たずですね。水汲みも満足に出来ないとは嘆かわしいです。」

「うぐッ!!・・・・・・お前だって料理出来ないくせに・・・・。」


 満面の笑みを向けながら毒を吐くパトリシアに苦虫を噛み潰したような顔でジルは反論する。


「私は料理が出来ないのであって、他は出来ますから。何も出来ない駄目王子とは違います。」

「だっ!?・・・・フ、フンッ俺はやった事が無いから出来ないだけで慣れれば出来る(はず)!幾らやっても破壊的な料理しか出来ないお前とは違う!!」


 ピクリとパトリシアの米神が動く。


「・・・・ほう、私にそんなことを言うんですか。」


 パキッポキッ

 腕を鳴らしながらジルにじりじりと近づいてくるパトリシア。


「ッ!!あっ・・・い、いや・・・!!」


 パトリシアの動きに合わせてじりじりと後退するが木にぶつかってそれも出来なくなる。


「・・・・・・少し、話し合いが必要なようですね。」

「まっ、待て!!それは話し合いじゃない!!ちょッ・・・・うわぁぁああぁぁあぁぁあぁあ!!」


 ジルはズルズルとパトリシアに引きずられながら二人は森の中へと消えて行った。

 数分後に顔を出した二人の表情は清々しいほど正反対でした。

 すっきりとした表情で帰ってきた彼女に対して、顔面蒼白にしてジルは帰ってきました。



 何したんでしょうね。

 いや、聞きたくは無いけど。

 彼、王子でしたよね?

 不敬罪にはならないのでしょうか?

 偶々聞く機会があったんですけど、どうやら王様から厳しく教育するようにとのこと。

 あれですか。王様もパトリシアもSですか?ドSですか?

 そうですか。

 聞かなかったことにします。



「エルさん。水を汲んできましたよ。ついでに魚も数匹釣って来ました。」

「ありがとう。それじゃあ、魚の方をお願い。」


 桶一杯に汲んできて貰った水を鍋に入れて火にかける。

 アルコは、串に刺した魚を火の周りに刺していく。

 勇者パーティの仲間になって分かった事なんですけど、この中でまともな料理が出来るのって私とアルコだけでした。人数多いのにね。

 ジルとパトリシアは前述の通り。

 グレンは大雑把過ぎて味にムラがあるんですよね。美味い二割不味い八割の確率で不味いです。

 フィーアとエリオットは料理はしたことが無いので出来ません。

 レナルドはチートなので料理も出来るはず!と思ったんですが、どうやら料理は例外らしく味は美味くも無く不味くも無く味付けしてるのに味が無い・・・・あれ?それってある意味凄くない?



 食材を切り終わる頃に、グレンが帰ってきた。


「ただいま。」

「あ、おかえり。」

「今日はウサギ一匹しか見つけられなかった。」


 そう言って掲げたのは頭に角の生えた普通のウサギよりも一回りほど大きなウサギ。この世界にはこの角の生えた生き物がウサギみたいです。ちなみにこのウサギは魔物ではなく動物みたいです。

 魔物と動物の違いは何かって?

 この世界では魔物と動物の明確な区分は無いそうです。

 あえて挙げるとしたら魔力の有無といったところでしょうか。

 この世界には、地球の動物とは変わった形をとっていても動物であり、地球のヘビに似ていても――――


 ガサッと言う音と共に後ろから気配を感じたと思えば、間を置かずしてトスッと言う音が後ろからした。

 振り返ればナイフに突き刺さったヘビが最後の力を振り絞って体から静電気を発していた。


「大丈夫か、エル。」


 傍に居たグレンを見ると、先程まで持っていたナイフは見当たらずその手はナイフを振り投げた形で止まっていた。


「え、ええ。」

「一応確認はしたとは言っても小物は見逃しやすいからな。気を付けろ。」

「う、うん。」

「じゃ、俺は肉の下処理してくる。」

「わ、分かったわ。」


 グレンはそう言うとヘビの刺さったナイフを取りに行き、ウサギを片手に川辺へと向かって行った。


「・・・・・。」


 ・・・・・えっと、魔物です。

 つまり、地球での動物が居てもその生き物に魔力があればそれは魔物と言うことになるんです。

 まあ、でもRPG定番のモンスターに魔力無しはいないんでそこはすべて魔物なんですけどね。







「エル。肉の処理終わったぞ。」

「ありがとう。」


 グレンから渡された肉は綺麗に血抜きまでされている。

 それを細かく切って鍋の中に入れ煮込む。

 十分に火が通ったらスープの出来上がりだ。


「アルコさん。そっちは如何ですか?」

「こちらもいい具合に焼けてますよ。」

「それじゃあグレン。皆を呼んできて。」

「ああ。」





 日が落ちた森の中、エル達は火を囲んで食事をしていた。


「やっぱエルの作る料理は美味しいね!」

「ええ、美味しいです。」

「ありがとう。」


 フィーアとパトリシアが笑顔で褒めてくれる。

 褒められるのは素直に嬉しいので、笑顔のつもりでお礼を返す。


「羨ましいです。」


 そう言ってパトリシアが羨望の眼差しで見つめるので、照れくさくなってしまった。

 だから、思わず余計なことを口走ってしまったのは仕方ないと思う。


「ま、まあ、でも何時もしてたことだから。パトリシアもきっと上手くなるよ!」

「そうですかね。」

「・・・・?エル、家で料理なんてしてたっけ?」

「え!?」


 ぼそりと言ったエリオットの疑問にギクリと固まった。


「そ、それは、ほら研究所に勤めることになって家を出たでしょ?一人暮らしをするようになって料理を覚えたの。その時の事よ。」

「ああ、そう言うこと。」

「ええ!!」


 エリオットは私の説明に納得したようで頷いている。


 あ、危ない。

 前世で料理をしてたから。何て言える分けないものね。



 こうして賑やかな食事を楽しみつつ夜は更けていった。









 ゴロンと仰向けになったエルは木々から覗く星空をぼんやりと見つめる。



 ・・・・星が綺麗ね。

 この世界は星がよく見える。

 あの日もこんな感じに夜空は輝いていたっけ。


 ・・・・ううん、今の私には関係ないことね。

 もう終わったことだもの。

 それよりも今は今後の事を考えなくちゃ。


 初っ端から予定外だけど勇者パーティの仲間になったのよね。

 まあ旅は順調に進んでる。

 多少の変化はあったけどゲームの大筋は変わらないのね。

 ただ、幾つか寄った街の中で同じように魔物の襲撃に遭う事があったけど、あれ以来フードの女性を見つけることは無かった。

 どうやらあちらも用心しているようね。


 ・・・・・あの子はどうして魔王側に付いているのかしら。

 ゲームのエルゼリーゼは確か、表立って使うことの出来ない自分の力(本当はシアンの力)を見せ付ける為とか言っていた様な。

 彼女もそんな感じで魔王側に付いたのかしら?

 もしかして、ゲームでエルゼリーゼを殺した人物だったりして・・・。

 可能性は無くはないけど、如何せん影の薄いキャラだったし男か女か判んなかったからなぁ。

 う~ん。


 まあ、考えても分からないものはしょうがないか。

 今は、この旅が無事終わる事だけを考えていよう。

 何時か分かる時がくるかも知れないしね。

 明日も早いし、旅はまだまだ始まったばかり。

 早く寝ることにしよう。




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