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この世界で生き残るために  作者: スタ
四章 ゲームシナリオ編
37/61

旅立ち

11月までに投稿しようと思ったのですがすぎちゃいました。

遅くなってすみません。

 


 漸く視界の先が明るくなる。

 路地裏を抜けるとそこは予想通り中央広場だった。


「やっと着いた。」


 最初に目にしたのは、一体の巨大なロック鳥。その大きな魔物を中心に鳥系の魔物が群れを成している。大きな一つの目をギョロリと瞬かせて十数羽のグループで襲ってくるのは一目鴉。バチバチと電気を纏い素早い動きを見せているのはサンダーバード。骸骨の頭に屍肉の残った体をまとっているのはレブナントホーク。

 どちらもこの近辺には生息しない魔物だ。



 北に東に・・・・

 うわぁ、アンデット系までいるのね。

 見事にバラバラね。



 そんな魔物の群れに相対しているのは勇者一行と戦闘に加勢しに行ったグレン。戦え無い町の人達の避難は終わっているらしく、中央広場以外に居る魔物達はこの街の自警団が対応しているようだ。

 私が来るまでにも相当の数を倒していたようで、足元には倒された魔物の山が出来ていた。

 この数から言って当初は百を超える数の大群が押し寄せていたと推測される。

 それでもまだまだ数は減らない様で、バッサバッサと切り捨てているが敵の方が数が多い。


 こんな状況だとフィーアが心配になってくる。

 まだ目覚めて日は浅く、旅をするのならと戦闘訓練を始めたばかりだった。

 そんな子がこの大群の中に突っ込んで行っても足手まといにしかならないだろう。

 早く見つけないと、と焦る気持ちを抑えて辺りを見回す。


 漸く見つけた視線の先には、たった今襲われそうになっている彼女の姿があった。

 数羽の一目鴉が彼女へと襲い掛かっている。

 私は慌てて駆け寄ろうとするが、それでも彼女との距離は遠く間に合いそうもない。


「フィーア!!」


 背後から襲い来る魔物に気づいて急いで駆け寄ろうとするも間に合わない。



 ヤバい、と思った。

 このままでは殺されてしまう、と。



 思わず見ていられなくて、目を瞑ってしまう。

 その瞬間、ザシュッと何かが切れる音が響いた後静寂が訪れた。

 恐る恐る目を開けて見遣ると、其処にはレナルドが一目鴉を切り捨てていた。





「エル後ろだ!!」



 ホッと息を吐く間も無く、鋭いグレンの声が聞こえてくる。

 私は咄嗟に腰に差していたレイピアを引き抜いていた。

 後ろからの殺気にレイピアを盾に構えるとキンッという音と共に衝撃が来る。

 サンダーバードが間近にまで迫って来ていた。

 相手がよろけている間に体勢を整えて突きを入れる。


「大丈夫か?」


 敵を倒して一息吐いていると、隣から気遣い声が聞こえた。

 振り向くとグレンが敵の数を減らしつつ近づいて来ていた。


「グレン。」

「エルも避難してなかったんだな。」

「ええ、私にも出来ることがあるかと思って。」


 それに宝玉も持ってるしね。


「・・・無茶だけはするな。」

「分かってるわ。」

「来るぞ!」


 短く言葉を交わし合った後、直後に数十もの魔物が襲い掛かって来た。

 私は素早く数枚の術具を取り出して短く呪文を唱える。

 グレンは私の前に出て大剣を構える。

 襲いくる敵を一体一体確実に仕留めていく。

 振り下ろされる大剣に無駄は無く、然りげ無く守ってくれる後ろ姿は頼もしい。

 その安心できる後ろ姿に今朝の悪戯っ子のような彼の笑顔が思い浮かんでドキリとした。


 な、何であの時の顔がっ!?

 お、落ち着け自分!!!


 内心の焦りは表情に出ることはな方が、瞬間唱えていた呪文が途切れてしまった。

 そんな分からない感情に私は慌てて首を振って思考を切り替える。

 一度深呼吸をして、途切れていた呪文をまた唱えた。





 次々と敵をなぎ倒していき一時間とかからない間のうちに数を減らしていった。

 残すはロック鳥一匹だけとなった。

 しかし、そのロック鳥が厄介極まりなかった。

 剣や魔術で攻撃するも素早いうえに、鋭く硬い羽毛に覆われていて一向に致命傷にもっていく事が出来ない。

 遅延魔術をかければ攻撃も当たるだろうと、魔術を掛けるもなぜか効果が無い。

 確かロック鳥は魔術系に弱かったはずだが、如何してか魔術が効かなかった。

 そんな終わりの見えない戦闘に皆の焦りや疲労が見受けられた。



 おかしい。

 ロック鳥は魔術系が有効だったはずだけど。

 そう言えば、ゲームではボスは特殊能力があったっけ。この魔術無効はボスの特殊能力なのかも知れない。



 急いでショルダーバックから例の物を取り出す。


「レナルド!!」


 突然呼ばれた事で驚いて振り向いたレナルドへ向けて、助走をつけて思いっ切り投げる。

 それは放物線を描く様にレナルドの手に収まった。

 無事レナルドに渡せたことに安堵する。

 一方でレナルドは突然投げつけられて驚くも、難なくそれをキャッチする。


「えっ・・・これって!?」


 レナルドは自分の手に収まっていた物を見て最初は不思議そうにしていたが、段々と驚愕に目を見張る。

 遠くからだが、よく見るとそれは淡い輝きを放っていた。


 へぇ、私が持っていた時は全然そんなそぶりは見せなかったのに。

 やっぱり聖剣と共鳴しているのかしら。


 その宝玉は淡い輝きを放ちながら聖剣へと納まる。

 それは元から聖剣の一部であったかのように、聖剣全体を包み込んで納まった。



「エリオット!敵の遊撃を!ジルは支援!アルコ、回復を頼む!パトリシア、ジルとアルコの護衛に!」


 矢継ぎ早にレナルドが指示を出す。

 それに彼らは分かっていたかのように素早く対応していた。

 その変わり身の早さに少々呆気にとられたが、クスリと近くにいたグレンが笑うのに気が付く。


「俺達も加勢しに行くか。」

「・・・・ええ、そうね!」


 グレンはニヤリと私に向かって不敵に笑うと、大剣を構え直した。

 その不敵な笑いに吃驚するも私も武器を構え直して彼らの元へと向かった。






 先程とは違い、聖剣による攻撃が効き徐々に敵を追い詰めていく。

 しかし形勢が逆転してきたと思っていた矢先、思いもかけないことが起こった。


 物陰に隠れていたと思っていたフィーアがふらりと戦闘中のレナルドの元へと近づいて行ったのだ。

 その事に気が付くのが遅れてしまい、気付いた時にはレナルドの傍まで近寄っていた。


「なっ!?フィーア!?」


 其処に一瞬の隙が出来てしまい、ロック鳥がレナルド達に襲い来る。


「危ない!!」


 誰が叫んだのかそれとも全員が叫んでいたのか。しかし、その声に気づいて回避しようとしたが時は既に遅く間に合わないと誰もが思った。

 ロック鳥に殺されるという最悪な場面を想像してしまった次の瞬間、視界を遮るほどの眩い光に覆われていた。




 ギィエェエェエエェエェェェエ!!



「・・・え?」


 突然の魔物の咆哮に光が眩しくて伏せていた視界を慌てて彼らの方へと向ける。

 其処にはロック鳥が繰り出していた片足を薙ぎ払った聖剣が切り落としている光景があった。


 剣を見ると先程とは違い、眩いほどの光を宝玉が放っている。

 眩しい輝きの後、先程よりも切れ味の増した聖剣にレナルドは戸惑っていたが、ギロリと睨む敵に我に返ってフィーアを背後に庇うと再び構え直す。

 レナルドは力を振り絞って渾身の一撃をロック鳥へと放った。


「此れで終わりだ!!」


 レナルドの叫びと共に放たれた斬撃と共にロック鳥は真っ二つに斬れる。





 ・・・・・・・・・。



 え?

 真っ二つ?



 先程までに苦戦は何だったのかと言うほどの呆気なさ。

 余りの呆気なさに一瞬呆けてしまった。

 しかし「終わったか。」と言う誰かの呟きと共にジワリとこの戦闘が終わったことへの実感が押し寄せてきた。





「皆。」

「あ、エルさん。」


 駆け寄ってきた私に気づいたレナルドが笑顔で迎えてくれるが、チラリと宝玉に視線を寄せると不思議そうに此方を見てきた。


「宝玉、渡してくれて助かりました。・・・・けど、何でエルさんが此れを持ってたんですか?それに、聖剣に必要な物だってよく分かりましたね?」

「な、何となくよ。何となく、必要なんじゃないかって。」


 真っ直ぐ見つめるその眼差しに思わず視線を逸らしてしまう。



 そんなこと、もちろん知ってましたよ。

 何て、言える訳無いじゃないですか!!!


「そ、それに、仕事で遺跡調査していた時にグレンが見つけたのよ。いい資料になると思って持ってたの。」

「そうだったんですか。あ、でもそれじゃあ俺が此れを持って行ったらエルさんが困るか。」


 そう言って聖剣にはめ込まれている宝玉を困ったように見つめる。


「いいわよ別に。それ必要な物なんでしょ?貴方が持ってる方がいいわ。」

「でも・・・・。」


 全く何てお人好しなんだろうか、勇者って奴は。

 自分の方が必要なものなのに。

 と言うか、魔王を倒すための重要なアイテムなのだから返されても困るけどね。



 それまで戦闘が終わった後、レナルドの後ろに隠れていたフィーアが申し訳なさそうに顔をのぞさせていた。

 フィーアに気付き近寄ると、彼女はビクリと肩を竦ませる。


「フィーア。」

「・・・・。」

「貴女、自分がどれほど危ない行動を取ったのか分かる?」

「・・・・。」

「ま、まぁ、そんなに怒らないでやって。どういう訳か彼女のおかげで倒せたわけなんだし。」


 醸す雰囲気に不穏なものを感じたのか、レナルドが慌ててフィーアを庇う。

 それにじろりと睨むと、彼は気圧されたのか再び黙り込んだ。



「・・・心配したんだから。」

「っ・・・!!」

「無事でよかった。」

「ご、ごめんなさい。」


 目を潤ませてしがみつくフィーアの背を撫でながら、この時やっと安堵のため息が吐けたことに気が付いた。

 暫くそうしていると、戦闘後の後処理をしていた仲間たちが集まって来た。





「エルさん。」


 皆が集まるのを見計らって、レナルドが私に声を掛けてきた。


「まだ魔物を倒したばっかりでこの街も混乱しているだろうけど、今回の件で他の街も気に掛かるし俺達は早々にこの街を立とうと思う。」

「そう。それならここでお別れね。」


 レナルドの言葉に斯く斯く出立の準備を始める。

 私は別段彼らを引き留めることも無く、寧ろやっと勇者たちと離れられる!!などと思っていたのだがそんな彼らに待ったをかける声が上がった。



「あ、あの!待って!!」


 行き成り声を発したフィーアに皆驚き手を止める。


「私、レナルド達に付いて行きたい。」

「フィーア!?」


 聖剣をジッと見たかと思うと、レナルドへと視線を向けながら訴えた。

 困惑するレナルドに対して、私はなるほどと納得していた。


 なるほど。

 フィーアは聖剣に魅かれているみたい。

 ふむ、此れで勇者一行が全員揃うという訳ね。


 其処でふと視線を感じる方を見るとフィーアが此方を見ていた。


 ん?

 何ですか?

 その、子犬がお預けを食らったかのような潤んだような眼差しは。



 ・・・・・・・・。



「エル、一緒・・・・?」

「・・・くっ・・・・・。」



 視線を逸らすも懇願するような声に思わず心が揺れる。

 チラリとフィーアを窺い後悔する。

 向けた視線の先には今にも泣き出しそうなフィーアの姿があった。


 ああもう!なるようになぁれ!(やけくそ)



 ・・・・・私、この子の泣き顔に弱いのかしら?


「はぁ、今回のような行動は二度としないと約束する?」

「うん!約束する!」

「エルさん?」

「・・・レナルド。私達も旅に同行させて欲しいの。そしたら、宝玉を私に渡さなくていいのだし。足手纏いにならない様に気を付けるわ。どうかしら?」


 この提案に初めは渋っていたが、どうやら諦めたのか苦笑気味に手を差し出してきた。


「・・・それじゃあ、よろしく。」

「こちらこそ。」



 こうして私たちは勇者一行と旅を共にすることになった。









 まったく、死亡フラグを回避しようと頑張っていたら敵役から勇者の仲間になるなんて。

 私の死亡フラグは何処にいっているのでしょう?

 無くなった訳じゃないって思えるから尚更不安だ。




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