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この世界で生き残るために  作者: スタ
四章 ゲームシナリオ編
35/61

再会早々に

 一か月ぶりの投稿です。

 不定期すぎてすみません。

 

 

「いや~何処ももう宿屋が空いてないかと思ったよ。」


 目の前に座る人物が安堵したように微笑む。

 私達は今、宿屋の一階にある食堂の片隅で朝食を摂っていた。とは言え、私もフィーアももう朝食は済ませているのでグレンと目の前にいる彼等だけなんですけどね。


「今日は大市場が開かれてますからね。色んな所から多くの人が来ているみたいだから、何処もいっぱいでしょうね。」

「何処へ行っても満室で困ってたとこだったんだ。エルさん達に会えてほんと良かったよ。」

「それにしても吃驚したわ。」

「それはこっちの台詞。王都に居たんじゃないの?」


 横から聞こえてきたのは、淡々とした言葉。

 声のする方を見ると、ふわりとした金髪をなびかせながら表情の変わらない冷たそうな紺色の瞳が此方を見ていた。


「エリオット。えっと、まぁ色々あってフィーア達と一緒に各地の遺跡調査をしているの。」

「へぇ、そうだったんですか。でも、まさかこの街でエルさんと会うとは思わなかったです。しかもフィーアの連れだなんて。」

「ええ、私も勇者御一行に会うなんて、驚いたわ。」


 そう、目の前に座っている人達は今巷で有名な勇者御一行様。そして、金髪紺眼の彼は私の弟であるエリオット。彼は元々勇者の仲間としてゲームに出ていたので一行の中に居るのに何ら不思議はないのですけどね。


 しかし、それにしてもこんな所で勇者達に出くわすとは思ってもみなかった。

 と言うか、いきなりすぎて心の準備がまだっ!!



「エルさん。勇者御一行だなんて流石に他人行儀過ぎますよ。」

「あら?そうかしら?」


 私としては勇者とそれほど親しくした覚えはないのだけれど。

 え、何?

 やっぱり、友達の友達は友達(確定)さ☆みたいな感じなのかしら?




「おいおい、レナルド。知り合いに会ってはしゃぐのは良いが俺「エルはレナルドと知り合いなの?」ぐらいしろよ。」


 ん?


 レナルドの隣に居た青年が彼に声を掛けようとした時、同じタイミングで私の腕に張り付いていたフィーアも私に声を掛けてきた。

 被せるように。



「「・・・・・・・・・。」」



 無言で見つめ合う二人。(一人睨んでますが)


「レ「エル」ド」


 また被りました。

 向いている方向も問う相手も違うのによく被りますね。



「「・・・・・・・・・・・。」」



 あら、珍しくフィーアの眉間に皺が寄っているわ。


「何だお前。話の邪魔をするな。」

「むぅ・・・・それはこっちの台詞だもん。」


 あぁ、険悪なムードに。


「落ち着きなさいフィーア。」

「そうだよジル。落ち着いて。」


 私とレナルドが静止をかけると二人は大人しくなった。


「大人しくなったところで、紹介してもらってもいいですか?レナルドさん。」


 エリオットの隣に腰掛けていた、遠目からだと老人のようにも見える白髪の中年の方が声を掛けてきた。

 うむ、ナイスタイミングですね。

 多分さっきの人も同じような事を言いたかったんだと思いますよ?

 何か、美味しいところを持って行った感がありますね。

 ジルと呼ばれた人の隣の女性も思ったのか似たような事を言ってきた。

 ニッコリといい笑顔で。


「台詞を被さられた上に盗られるなんて、間抜けに見えますよ?ジル。」


 うわぁ、いい笑顔で酷い事言いますね。この人。


「おまっ!!」

「ところで、私も気になっていたので説明をお願いします。レナルド。」


 憤慨する彼を華麗に無視して彼女は話を促してきた。


「えっ?・・・あ、う、うん・・・・えっと?」


 レナルドは話に全くついていけてなかったようですね。

 言葉になってませんよ。


「私達に紹介してください。」

「あ、うん。と言っても俺が知ってるのは彼女だけだから、全員自己紹介しようか。」


 そう言って苦笑いしたレナルドは自己紹介を始めた。


「じゃあまず、俺から。レナルド・コルトーです。えっと、一応勇者に選ばれました。」

「聖剣に選ばれたのはお前だ。お前なら魔王を倒せる。」

「事実は変えられません。勇者は貴方です。」


 エリオットと女性は、淡々とした口調で言う。

 正反対の表情で。

 貴方達、あまりフォローになってませんよ。


「お前らちょっとは言葉を選べよ。まあ、何だ。不安がるな。お「そうですよ。自信を持ってください。私達も居るんですから。」」


 ん?まだ何か言おうとしてましたか?


「・・・・・。」

「また盗られちゃいましたね。」

「うるさい。」


 あ、やっぱりですか。


 何か、ゲームでの主人公は聖剣に選ばれた!魔王を倒すぞ!見たいな感じで悩んだりせず魔王討伐に行ったのに、この現実では違うんですね。

 勇者だって人間ですもんね。

 悩んで不安になることもありますよね。



「次はエリオットかな。」

「エリオット・ファウマン。其処に居るエルゼリーゼの弟。」


 な、なんとも素っ気無いわね。


「じゃあ、貴女がエリオットのお姉さんなんだ。」

「はい。・・・エリオットから聞いていたんですか?」


 私のことをなんて話したんでしょう?


「ええ。あ、私はアルコ・イーリスと申します。皆さんの回復役として同行しております。」


 エリオットの隣の青年はニッコリと挨拶をしてくる。


「俺は、ジルベール・グラシアン・ロジェ・フォルジェ。この国の第三王子だが魔術師として同行している。」

「私はパトリシア・フィエルロ。其処の意地っ張りな王子の御守り兼護衛です。」

「御守りってなんだよ。」

「御守りは御守りですよ。」

「大体俺は意地っ張りじゃない。」

「意地っ張りじゃないですか。今回の同行だって陛下や国を思って反対を押し切ってまで着いて来たくせに。」

「ばっ!!そ、そんなんじゃない!!魔術師団長より能力的には俺の方が上だから同行したまでだ。」

「そうですかぁ?ならそう言うことにしておきましょうかね。」

「ぐぬぬっ・・・・・。」


 ニヤニヤと表現しそうな笑みで言い返すパトリシアに、ジルベール王子は苦虫を噛み潰した顔で押し黙る。


 お、おう、何だか彼女の方が一枚上手のようですね。

 それにしても、三人ともこんな感じでしたかねぇ?

 アルコはおっとりとした雰囲気は同じなのにジルの言葉を度々盗るし、パトリシアは王子に厳しいという設定なのに何かからかってるみたいだし、ジルはツンデレ設定・・・あ、この人は変わらないですね。

 ゲームでは見れない三人の一面を垣間見た気がします。



「私の名前はエルゼリーゼ・ファウマンです。エリオットの時にも言いましたが彼の姉です。そして、この子がフィーア。そういえば、どうして一緒に居たの?」


 彼らと会ったときに一緒に居たんですよね。

 はて?いつの間に会ったんでしょうか。


「あのね、道に迷ってた時に怖い人に絡まれたの。」

「え!?怖い人に絡まれたの!?大丈夫だった?」


 やっぱり一人で行かせるべきじゃなかったかしら?


「大丈夫だよ、その時にレナルドが助けてくれたんだ。助けてくれてありがとうレナルド。」

「どういたしまして。」


 ニッコリと笑い合う二人。

 微笑ましいですね。

 それにしても不良に絡まれてたなんて、まだ一人で行かせるのは無理・・・・・


 ・・・・ん?

 ああ、ヒロインとの出会いイベントでしたか。



「彼はグレン・フィンドレイ。・・・グレン?」


 グレンの方を見遣ると彼は気まずそうに視線を逸らしていた。


「よう、グレン副団長。こんな所に居たんだな。」

「辞めたんですから元ですよ。ジル王子。」

「お爺様が探していましたよ。」


 お爺様?


「総団長が?」


 え!?パトリシアの祖父は総団長だったんですか!?

 そういえば、騎士の家系という設定でしたね。


「ええ、『見つけたら根性叩き直してやる!』と腰を押さえながら叫んでましたよ。」


 グレン。貴方何やったんですか!?


「普通に渡したら受け取って貰えないと思って、ちょっと煽てて書類に混ぜて辞表を出しただけなんだがなぁ。」


 ちょっ!?そうやって騎士団を辞めたんですか!?

 ゲームでは語られない真実ってやつですか。


「それと、会ったら伝えておいて欲しいと頼まれていたことがあるんです。」

「何だ?」

「『副団長の地位は空けてあるから早く戻ってこい』だそうです。」

「そう言われてもなぁ。」


 渋い顔をするグレン。


「魔物の被害を減らすために騎士団じゃ効率が悪いから辞めたんですよね。」

「まあ、そうだな。」

「なら、私達と行動を共にしませんか?レナルドも如何ですか?」

「俺も元副団長の貴方が一緒に来てくれるなら心強いです。」


 レナルドがニッコリとグレンに言う。

 これで勇者パーティーの仲間入りですか。

 このまま二人ともそっちに行ってくれないかしら。


「いや、でも俺も今護衛の仕事をしてるしなぁ・・・・。」


 チラリと此方を見る。


「そうですか。それは仕方ないですね。」


 しょんぼりとした顔でレナルドが言う。


 あれ?諦めるんですか?

 え?仲間に入らないんですか?

 ちょっ、ストーリー変わっちゃうんじゃ・・・。

 あ、私が此処に居るから既に変わってるか。






 ドゴォォォオオオォォォオオォオォン!!



 そんなことを思っていると、突然外から物凄い音が聞こえてきた。

 振り返ると窓の外は土埃が舞っていて様子か見えない。


「え、何事!?」

「魔物か!?」


 驚いて立ち尽くしている私とは裏腹に、レナルド達は既に扉の方へ駆けていた。


「エル達は避難していろ!」


 そう言ってグレンもレナルド達の後を追って行く。

 私は唖然とグレンの駆けていく姿を見つめた。



 ま、まあ私とフィーアが行ったところで何も出来ないし、グレンの言うとおりにした方が良いわよね。


 漸く思考が動き出し、フィーアを連れて避難しようと彼女の方を振り向いた。

 しかし、其処に彼女の姿は無く、周りを見ても何処にも居なかった。


「フィーア?」


 え。

 も、もしかして・・・・・・


 フィーアナラ、皆ニツイテ行ッタヨ?


 頭の中にシアンの声が響く。


 やっぱりぃぃ!?


「はぁ。」


 これは正しく、ゲームのイベントなんでしょうね。

 ああ、そんなイベントあった気がするわぁ。

 と言うか、ヒロインの出逢いに騒動はつきものですもんね。


 ・・・・私だけ避難してもいいですかね?

 関わりたくないなぁ。

 ん?

 そういえば・・・・。


 ショルダーバックの中に入っている緑色の玉を思い出す。


 宝玉、私が持ってるわね。

 これが無いと力を発揮できないんじゃ・・・・。


「ああ!もう!!」


 回避不能って事ですか!?


「フィーアも心配だし、仕方ない。」





 そう言ってショルダーバックを持って皆の下へ駆け出して行った。



 

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