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この世界で生き残るために  作者: スタ
一章 前世との決別
3/61

新たな世界に誕生

 三話連続投稿です。

 


「わたち、ほしのかおりしゃんしゃい。よろちくね!」


 見知らぬ土地に見知らぬ人達、あの頃の私は人見知りでそのすべてに怯えていた。

 両親に手を惹かれて訪れたのはお隣の貴女の家。

 突然の周りの変化に怯える私に、嬉しそうに差し伸べてくれるその手がとても嬉しかったことを今でも覚えている。








 ***





 く、苦しい。


 命一杯空気を吸いたい。





 この息苦しさから解放されたくて、私は一気に空気を吸い込んで吐き出した。


「おぎゃああああああああああああああぁぁぁ!!」


 え?


 突然私の傍で響く赤ちゃんの泣き声。

 その声に吃驚していると、上の方から声が聞こえてきた。


「おめでとうございます、奥様。元気な女の子でございますよ。」

「あぁ、私とあの人の子。」


 その声にホッとしたような声が少し離れた場所から聞こえてくる。

 まったくもって状況が呑み込めない。


 第一私は香織に突き落とされて死んだんじゃなかったのか?

 どういうこと?


 状況を確かめたいのに目を開けて確かめることすら出来ない。

 その事に不安になるが、それでも周りが嬉しそうな声を上げているので悪い状況でも無いのかも知れない。

 急に眠気が襲って来たことに抗う気も起きず、一旦考えることを後回しにしようと意識を手放すことにした。






 ***



 寝て起きてを繰り返すこと数日。

 やっと目が見えるようになりました。

 身体は思うように動かせないんですけどね。

 ぱちりと目を開けて、映ってきたのは豪華なシャンデリア。

 あまりに見慣れないものに一瞬慄いてしまった。


 しゃ、シャンデリアですか!?

 お、おおぉう。

 ん?


 身動きが出来ないのでシャンデリアをじっと眺めていると、視界の端に見慣れない物体がフヨフヨと漂っていた。

 よく見ると半透明な小さな人間?のようにも見える。


 んん?

 何でしょうね、あれ。

 ま、まさか・・・・・・・幽霊!?

 ちょっ、止めて下さいよ!

 私眼に見えないものは信じない性質なんですから!!

 あ、今見えてるんだった。

 だ、だからって幽霊を認める訳には・・・・・!!!


 そんなことを考えながら視界に映る不思議現象を見つめていると、誰かが私の視界を横からさえぎって来た。

 暗くなった視界に一瞬ビクッとする。

 私の視界を遮って来たのは一人の女性。

 目尻の少し吊り上ったその眼はきつそうに見えるのに、私を見下ろすその眼差しは優しげで、晴れ渡る空を想わせるように澄んだ碧眼を此方に向けていた。サラリと私の顔に掛かってきた髪はサラサラの茶髪。少し明るめの茶髪は瞳の色を引き立てるようでその女性によく似合っている。


 綺麗な女性(ひと)


 思わずその人に見惚れていると、彼女も私をじっと見つめていた。

 互いに見つめ合っていると違和感を感じることに気が付く。

 彼女の瞳に映るのは、可愛らしい赤ちゃん。


 ん?赤ちゃん?

 私、赤ちゃんになってる?

 否、何となく気がついてはいたんですけどね。

 でも信じたくはないかなって・・・・・。

 これは所謂転生と言うやつなのかしら?

 マジ・・・ですか。


「おはよう、エルゼリーゼ。フフッ、よく眠れたかしら?」


 彼女は優しげに問いかけてきた。

 私もそれに「眠れたよ。」と返事をしようと声を出す。


「だぁう。」


 うん、言葉になりませんでした。

 まぁ、彼女も分かったみたいで、ニコニコと此方を見つめてくる。

 私を見つめる優しい眼差しから多分この人が母親なんだろうなと察する。

 この流れでいくと、エルゼリーゼと言うのが私の現世の名なのだろうなと思う。


 外見のきつさとは違ってこの人はきっと優しい母親(ひと)


 その事が何だか嬉しくもあった。

 まあ、誰しも優しい親の元に生まれたいですしね。


「あぁ、早く貴女をあの人に見せてあげたいわ。そうしたら、きっとあの人も・・・・・」


 そう呟いた彼女は、とても悲しげな表情だった。

 しかしそれも一瞬のこと。

 直ぐに笑顔に戻って優しく私を抱き上げる。

 トントンと私をあやすその手は優しい。


 でも、


 あの人って誰?


 一瞬見せた母の悲しげな表情に少しの不安が過ぎる。

 しかし今の私の身体は赤ちゃんなので、母のあやすその手に睡魔が押し寄せてくる。


 母にとってその人はきっと大切な人。

 でも、私は正直その人に会うのが不安でしょうがない。

 大丈夫、なのかな?










 そういえば父親って誰だろう。



 微睡む思考の中で最後に思ったのはそんなこと。

 少しの期待と不安を胸に、私は再び眠りについた。



 

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