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この世界で生き残るために  作者: スタ
三章 予測不能な出逢い
26/61

どうしようこの状況

 本日の二話目です。

 


 遺跡調査のおり、護衛のグレンと逸れてしまいました。

 秘密の通路が聖域への道なら何処か神殿や大広場なんかと繋がっているのではと思い向かうことに。

 不思議な樹と魔光石によって仄かに輝く聖域に見惚れていると、そこに倒れている少女を見つけてしまいました。

 こんな所に遭難者が?と思い声を掛けてみたのですが、何とその少女はゲームのヒロインでした。




 ・・・・・・・・・・は?




 何故こんな所に?

 ちょッ!!訳分からないんですけど!?

 どどどどどどうどうしよう!?


「う・・・ん・・・・。」


 焦ってオロオロとしていると、少女が目を覚ましました。


「あ・・・・・えっと・・・・・・。」


 え?え!?この状況をどう切り抜ければ!?

 無意味に辺りを見回してしまう。



 目の前には起き抜けのぼんやりとした少女。

 真後ろにはストーンゴーレム。

 辺りは沢山の淡く輝く魔光石。

 中心に輝く不思議な樹と大小様々な魔光石が部屋全体を照らし幻想的に見せている。

 真後ろに鎮座する石色の肌は、下から照らされる魔光石によって若干ホラーに見えるのが少々残念に―――――




 ・・・・・・・・・・・ん?



 危ない危ない。

 幻覚が見えるなんて疲れてるのかな?

 思わず二度見しちゃいましたよ。

 もう一度。


 目の前にはヒロイン。

 後ろには・・・・・・・・・拳を振り上げているストーンゴーレム・・・?

 拳を・・・・!?


「きゃああ!!?」


 咄嗟に少女を引っ張って真横へ飛び退る。



 間一髪。

 ストーンゴーレムの拳は真横に突き刺さっていた。


「っ・・・・。」


 もう少し遅かったらぺちゃんこですよ!?

 少女の腕を引っ張って立たせ、急いで離れる。


 ヒロインの次はゴーレムですか!?

 何この状況!?何この展開!!??フラグ回避に走っててどうしてこうなるの!??

 ・・・・ハッ!!こ、混乱してる場合じゃない!!

 まずはこのゴーレムを何とかしなくちゃ!!

 えっとえっと、ストーンゴーレムの弱点って何だっけ??

 あああぁぁああ、混乱しすぎて直ぐに思い出せない!!

 落ち着け。落ち着け。

 ストーンゴーレムって言うと・・・属性は地。と言うか、石でできてるんだよね?

 火・・・は効かないね。水?・・・も効かないんだっけ。風・・・だったかな?

 まあ、何でもいいや!とりあえずやってみよう!!


「どっかに隠れてて!!」

「は、はい。」


 少女を避難させつつ呪文を唱える。


「ウィンド!!」


 風系の上級魔術も中級魔術も使えないので、初級魔術で攻撃してみる。

 パシンという情けない音が聞こえてきました。


 ・・・・・・・・・・・。


 あはは・・・・あんなんじゃあ効きませんよね?

 

 ストーンゴーレムは構わず襲ってきた。


 どどどどうしよう!!どうすれば!?

 必死で逃げつつ考えていた。



 エル、早クシナイト、死ンジャウヨ?



 この状況にそぐわない暢気な声が頭の中に響く。

 ハッ!!シアンの力があるじゃない!!

 えっとえっとぉ!!

 風!?嵐!?・・・って、こんな所に風なんて吹いてないよ!?

 地割れとか岩でも落として生き埋めにしちゃう!?

 ああぁぁ!!それじゃあ私達も生き埋めになっちゃう!!


 ・・・あ!!そうだ!!


「し、シアン!!あいつを倒して!!」


 ワカッタ。


 ピアスから小鳥に変身したシアンに魔力を注ぎ込む。すると段々と大きくなる。

 少女が見ているが彼女は分からないだろうし大丈夫だろう。


 訓練をして分かったことだが、精霊術には二種類の術がある。

 一つは、精霊自身の力マナを引き出し操る術。マナを操ることによって嵐や地割れなど意図的に自然災害を起こすことが出来る。

 もう一つは、精霊自身に魔力を注ぎ込む術。術師の魔力を注ぎ込むことで力が倍に膨れ上がるので結構強力な術でもあるんですよ。術者の魔力によって内側から操作することによって精霊自身の力を最大限に引き出すことが出来る術でもあるんです。

 ただ、難点なのはこの術を使っている時術師の魔力で制御していると言っても、精霊自身のマナは荒れ狂っているのでもう一つの術は使えません。例えて言うなれば、パンパンに水の入った水風船のような物です。その水風船から水を無理やり取り出そうとすれば大惨事確定です。

 そんな術だから使うと気絶どころじゃすまないのだとか。やったこと無いけど。

 お、恐ろしい!!


 私よりも一回りも大きい巨鳥になると、ストーンゴーレムへと飛び掛っていく。

 シアンの羽ばたき一つで物凄い突風が押し寄せてくる。




 (これも一つの自然災害よねぇ。)




 シアンの起こす突風を岩陰で回避する。

 岩陰からシアンとストーンゴーレムの戦いを傍観しつつ(手を出すことも出来ないし)見守る。

 シアンの起こす風は鋭利なようだ。

 次第にストーンゴーレムは石ころへと切り刻まれていく。

 ・・・すごっ!!てか、こわっ!!


 後に残っていたのはゴロゴロと転がる石の山。


 ・・・・・・・・・・・・。



 終ッタヨ。


 飄々とした声で私の元へと戻ってくるとピアスへとまた変身する。


「・・・・・あ・・・・うん・・・ありがとう・・・・。」




 うん。気にしないことにしよう。








 ちょっと現実逃避に走りそうになったが、ヒロインのことを思い出し少女の傍へと駆け寄る。


「大丈夫だった?」

「あ、・・・・はい。」


 小さな返事が返ってきた。


「そう、よかった。」





 ホッと一安心した時、入って来た入り口とは別の入り口から近づいてくる足音が聞こえてきた。

 一瞬身構えたが、其処から入って来た人物に私は詰めていた緊張を解いた。



「エル!!大丈夫か!?」

「グレン!ええ、大丈夫よ。貴方も大丈夫だった?・・・・あっ!頬に傷が・・・。」


 来る途中で怪我をしたのだろうか?


「ああ。大したこと無い。それより、護衛として雇われたのに護衛対象を見失った上、危険に晒させたみたいだな。すまなかった。」

「そんな!?こっちこそ勝手に逸れてしまってごめんなさい。ちょっとしたミスって言うか・・・何と言うか。そんなことより傷!!えっと傷薬が確か・・・・。」

「大丈夫だ。掠っただけさ。」

「でも・・・・。」


 血が出てる。痛そう。

 そう思っていると、ポンポンとまた頭を撫でられた。


「・・・・ところで、その子は?」


 見上げると彼は私の隣に居る少女に視線をやっていた。


「ああ、この子は此処で倒れてたの・・・・・。」


 あれ?

 そういえば、勇者の仲間になる前はヒロインはグレンと旅をしてたんだっけ?

 確か記憶も無く両親も分からないから保護したとか何とか。

 ゲームでグレンがヒロインに出逢ったのは遺跡だって言ってたっけ。




 ・・・・・・・・・。


 ここ・・・・遺跡よね?


 ヒロイン・・・・ここで倒れてたわね。


 グレンは・・・・私の護衛としてだけどここに居ますね。




 ・・・・・・・・・・ん?




「どうした、エル?」

「?」

「な、何でもないわ!!」


 不思議そうに見つめる二人に慌てて頭を振る。


「俺はグレン。彼女はエル、エルゼリーゼだ。君の名前は?」

「名前・・・・・・フィー・・・・・ア?」


 少女は首を傾げつつ答える。


「フィーアって言うのか?」

「多分。」

「・・・・じゃあ、どうしてこんな所で倒れていたんだい?」

「・・・・・・分かんない。」

「分からない?」


 グレンは訝しげな顔をしていた。


「・・・記憶・・・無い。ここ・・・・どこ・・・?」

「・・・・。」


 沈黙が重いです。



「と、とりあえず、外に出よう?」

「そうだな。」

「・・・。」


 この沈黙に耐えられず咄嗟に言った言葉に二人は頷いてくれた。

 よし。まずは、外に出よう。






 遺跡を出る途中思い出したことなんだけど、ゲームでフィーアと会った場所はフリューリングって遺跡でした。

 私が調査しに来たのはフリューリング遺跡ですね。

 うん。ここですね。



 ・・・・って、何でそんな場面に遭遇してんの!?

 ちょっ、有り得なくない!?

 ど、どうしよ?







 やっと宿屋まで帰ってきた。

 道中三人とも無言でした。

 私は脳内でパニックを起こしてましたからそんなこと気にしてられませんでしたがね。

 一先ず一階の食堂の端っこで話をすることとなった。

 うん、まあ、今後の事をどうするか、ね。


「さてと。この子をどうするか・・・。本当に何も覚えていないのか?両親の事とかも?」


 グレンの質問にコクリとフィーアは頷く。


「困ったなぁ。この村で保護してくれる人は居ないだろうか?」

「グレンは彼女を引き取れないの?」


 ゲームでもグレンが保護したし、無責任だけどグレンに押し付けてみる。


「傭兵家業は危険が伴うしなぁ。」


 心底困り顔でグレンが呟く。

 彼女は十四~十五歳ほどの容姿で、この国ではまだ子供だ。

 まぁ、間違っちゃあいないけどね。・・・・否、違うのか?

 どちらにしろ、記憶も無いし保護してくれる人が必要だよね。


「あ・・・あの。・・・私・・・・村に残るの嫌。記憶、探したい。」


 なるほど、それでグレンと一緒に旅に出るわけね。

 ・・・・それで、何で彼女は私の方を向いて話しているのかしら?


「・・・そう。なら、貴方なら旅をしているし、グレンにお願いできるかし――――」


 ガシッと手を掴まれた。


「貴女は来てくれないの?」


 んん?私?何故?


「・・・え?」


 思わずグレンの方も見てしまう。

 彼も驚いているようだ。


 ・・・・・・・・・。

 そんな捨てられた子犬のような目で見ないで下さい。

 えっと・・・・。


「・・・えっと、私・・・研究所の仕事が・・・・。」

「・・・・・。」


 ウルウルと目に涙が溜まって今にも泣きそうだ。


「うっ・・・・・。」


 やめて!!

 私その瞳に弱いんだから!!

 香織の時もその瞳に抗えた(部活叱りお泊り会叱り)試しが無かったのに!!

 うぅ・・・・・・!!


「部署は魔術史部だったよな?」


 唐突にグレンが聞いてきた。


「え?ええ。」


 何なのだろう?


「支部長とは旧知の仲だし、俺が話をつけてやるよ。確か、遠い遺跡のほうは調査員と研究員に別れているんだったよな。」

「ええ、まあそうね。」


 そうそう、資金不足やら経費削減とかで遠い場所を往復しなくていいように調査員に各地を回って調査させてるんだった。しかも一人で。

 どんだけ鬼なのよ、あの上司。守銭奴ね。


「エルが調査員になれば彼女と一緒に居られるだろ?」

「ほんと!?」


 フィーアが嬉しそうに聞いてくる。

 確かに私も旅をするとなれば一緒には居られるわね。


「え?まあ、そうなるわね。」

「じゃあそれで決まりだな。」



 ん?

 えっと・・・・・・は?

 あれ!?

 外堀埋められた!?

 あの、私是も否も言ってない・・・・・・・


「じゃあ早速彼奴に連絡してみるよ。そうだ、エル。彼奴に至急報告しとかないといけないこととかないか?」

「えっと、特には・・・・。」

「そうか、分かった。」


 私の頭が混乱している中、話は勝手に進んでいく。


「俺は部屋に行くな。」


 そう言ってグレンは立ち上がる。


「あ、そうそう。女将さんに話しておくからエルの部屋にこの子泊めてくれるか?金は俺が出すよ。」

「え、いいけど。」

「それじゃあ、よろしく。」


 クスリと笑ってグレンは女将さんの所へと去って行った。

 唖然として気がつかなかったが、私の腕にフィーアがニコニコとくっ付いていた。









 あれ?

 いつの間にか三人で旅することになってない!?

 どうしてこうなった!?











 フラグを回避するために頑張ってるんだけどな・・・。

 なかなか上手くいかない。



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