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この世界で生き残るために  作者: スタ
三章 予測不能な出逢い
24/61

王立魔術研究所

 一話更新です。

 前回と少し繋がってます。

 


 必然と言うには少し弱くて、偶然とするには少し運命めいたものを感じた。


 でも、


 これはきっとチャンスなのだろう。

 ダリル先生と再会できたのも。

 彼と話す機会があったことも。

 そして、彼が研究所に誘ってくれたのも。


 きっと神様がくれたチャンス。




 だから私は、その手を取ることに躊躇はなかった。














 ***





 王立魔術研究所。


 此処は聖クローネル王国魔術師団の下部組織であり、魔術の研究・開発を行っている。

 まあ、簡単に言えば国直営の研究機関と言うことだ。


 この研究所には、魔術・術具・魔術史の3つの部署に分かれている。

 まず、魔術支部は主に魔術の簡略化や効率化、新たな魔術の開発を研究している。

 術具支部は、さらに二つに分かれており、魔術武具と生活術具とに分かれている。

 そして、魔術史支部。ここは数年前に新たに設立した部署で、魔術の歴史や古代遺跡の研究を主に行っている。


 私が今勤めているのは、この魔術史支部だ。

 この支部は、数年前に研究所に入ったとある天才が作った部署で、この人何とダリル先生が前に言っていた先輩だと言う。術具師の奇才と言われた人で、本当は術具支部に配属の予定だったのだけれど、何でも自身の研究が出来ないのなら研究所に入る気は無いとかなんとか。我儘なとは思うけれど許されちゃうのがその先輩の凄いところで、王立魔術研究所以外にもいろんなところからのお誘いが沢山、果ては隣国の研究所からもお誘いがあったとか。

 そんな彼を逃したくない為に出来たのがこの部署だったりするんです。

 そんなんだから他からはお飾りの部署と言われているんですよね。まあ、他にも研究対象が古代遺跡ってのもあるんでしょうけどね。

 と言うのも、古代遺跡に深く関わっているのが魔術師ではなく、精霊術師なんですよね。

 此処は魔術を研究するところだからってのもあるだろうし、精霊術に忌避感を感じるってのもあると思うんですよ。寧ろ後者の方が強いかも。

 だからかこの部署は他と比べて人数が非常に少なかったりする。

 私含めて十人にも満たないんですよね。


 ま、まあでも、その分この部署の人達はどの人もすごく優秀なんですよ。

 ほとんどの人が支部長(あ、件の先輩です)の知り合いみたいで、どの人も何かに秀でていて類は友を呼ぶとはこの事かと思ったくらいです。

 ダリル先生もその知り合いの枠に入るため例外では無く、学園時代でも成績優秀者の部類に入っていたみたいですし。何より、規格外な天才についてこれる後輩と周りからは一目置かれていたみたいですよ。


 そんな部署に入った当初はこの中でやっていけるのかとちょっと・・・・いやかなり不安になったのですが、此処の皆はとても気さくな人達で安心はしました。

 まあ、気さくと言うよりも変わったと言った方がしっくりくる人達なんですけどね。

 前世知識があると言うのにチートになれない平凡な私は、それでも此処の人達の足手纏いにならない様に必死で頑張りましたよ。前世だって考古学の分野は全く無知だし、ましてや魔術や精霊術なんて前世になかったですからね。

 まあ、その甲斐あってか、一年たった今では小さな遺跡の調査ですけど任されましたしね。

 ちょっと嬉しいものです。








 この一年のことを思い返しながら、廊下を歩いていれば既に目的地へと着いていた。

 と言うか、危うく通り過ぎるところだった。

 危ない危ない、ふう。



 先程まで通って来た廊下に点々と在った扉とは違い、目の前にあるのは華美と言うほどでは無い品の良い装飾の施された扉。

 その扉の前に立って一つ深呼吸をした後、ゆっくりと二回ノックする。



 コンコン



「入れ。」


 扉をノックして待てば、一拍おいてぶっきら棒な返事が中から返ってきた。

 私は両手に抱えていた書類を抱え直してその扉を押し開けた。


「失礼します。」


 ゆっくりと開いた扉の向こうには、応接用のテーブルと革張りのソファ。その向こうには山と積まれた書類が置かれている執務机。

 そして、その書類に足を乗せ行儀悪く座って一束の資料を見ていた人物が入って来た私にチラリと一瞥をくれた。


「おう、ファウマンか。その書類はそっちに置いといてくれ。」


 だらしない恰好のまま資料を呼んでいた男は応接用のテーブルを指して促す。

 私はその姿に少し戸惑いながらテーブルに書類を置いた。


「あの、支部長。その、足蹴にしている書類は、いいんですか?そんな事して。」

「あん?平気平気。コレはくっだらない嘆願書だから。」


 私に一瞥もくれず言うその内容に、ああなる程っと少し呆れ返ってしまう。

 勿論呆れているのは嘆願書を出した者にだ。

 目の前の支部長が足蹴にしているのは、彼が兼任している術具支部への貴族の嘆願書だ。中にはちゃんとした物もあるのだが、多くが私利私欲に溺れた自分本意な物ばかりで足蹴にされている物もそうなのだろう。

 ちなみに、術具支部では魔術史支部の支部長も兼任している為あまり重要な役職では無かったはずなのだが・・・。

 何故か術具支部の書類も彼が見ているのは気のせいではないと思う。

 術具支部はそれでいいのだろうか?


「おぉそうだ、丁度良い。ファウマン。お前この遺跡調査に行って来い。」

「え!?あの、今調べている遺跡はどうするのですか?」


 丁度書類を置いて踵を返そうとした時、後ろでダラけていた支部長が唐突に切り出した。

 その言葉に私が今調査している遺跡をどうするのか尋ねた。


「あ?そりゃダリルに引き継ぎだな。実地調査はもう済んだんだろ?」

「えぇ、まぁ、経過報告書を出すとこでしたけど・・・・で、でも、ダリルさん他にも担当しているものがあるんじゃ・・・・。」

「大丈夫大丈夫。あいつなら一つぐらい増えたところでやれるやれる。ハハッ。」


 否、流石にそれは無茶ぶりだと思いますよ、支部長。


 確かにダリルさんは支部長補佐と言う地位に見合う優秀さですよ。

 でも、彼にだって自分の仕事がありますし、他の職員の書類チェックまでやっている彼が忙しくないわけ無いじゃないですか。

 その上私の仕事もやらされるとか・・・・。

 最近寝不足気味なんですよねとか言ってたのに、彼の睡眠時間がどんどん削られていっている気がする。


「それにこの遺跡は最近土砂崩れが起きて被害状況も見て来てもらいたいから急を要するんだ。他の奴らは手が空いてない上に引き継ぎにも時間の掛かるもんばっかなんだよ。だから直ぐに向かえそうなのはファウマンだけなんだ。」

「・・・・そうですか。」

「ああ、だから引き継ぎ終わったら直ぐにこの遺跡に向かってくれ。」

「分かりました。」


 渡された資料に目を通す。

 今回土砂崩れの被害に遭ったのは、西に位置するフリューリング遺跡。

 資料には大まかな内容しか書かれていない。

 と言うのも、この遺跡は西端に位置しており、馬車で一週間程はかかる距離にある。

 ただでさえこの部署は新しく人数が少ないというのに、初っ端から遠い遺跡へ赴くのはと後回しにされていたみたいだ。

 その為この遺跡の資料は少ない、のだが・・・・。


 んん?

 フリューリング遺跡・・・・・どっかで聞いたことある様な・・・・?

 はて?何処だっけ?

 ん~ま、いっか!思い出せないってことは然程重要なことでもないってことだろうし。



「お、そうだ。出発は明日な。」

「!?」

「馬車の手配もしてあるから、引き継ぎ済ませとけよ。」


 な、な、な・・・・・ッ!!!

 急すぎるわぁぁ!!


「そう言うことは早めに言ってください!!準備がありますので失礼します!!」


 まずダリルさんに私の担当している遺跡の引継ぎしてもらわなくちゃ!

 遺跡調査用の道具は元からまとめてあるからいいとして、移動に一週間もかかる長旅になるんだから着替えその他もろもろ長旅用に用意しないと!!


 あぁ此処がファンタジーな世界でよかったよ。

 持って行く物を吟味する時間さえ無いけど、亜空間鞄があれば物が嵩張らないし。

 地球じゃあそうはいかないものね。



 退室を告げ、慌てて扉に向かう途中支部長は後ろから、聞かせるために言ったのかよく分からない声量でぼそりと呟いていた。


「ちょうどアイツも西に居るみたいだし、護衛はアイツに頼むか。」



 ・・・・アイツって誰ですかね?









 取り敢えず出発に間に合うように急がないと!!






 


 

 誤字脱字在りましたらご指摘ください。


 一部修正しました。

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