回想・・・と言う名の現実逃避
大変遅くなりました。
一話投稿です。
精霊の話し方を漢字とカタカナに変えました。
これで少しは読みやすくなったか・・・・・改めてみると微妙?
皆様お久しぶりです。
時間が経つのは早いもので、あの出来事から早二年になります。
私ももう十二歳です。
あの出来事の後、瞬く間に邸内でわたしが精霊と契約したことが広まりました。
いやぁ、人の口に戸は立てられないって言いますものね。
まさにその通りでしたよ。
もともと扱いづらい主人の娘として遠巻きにされてましたけれど、この噂で一気に邸内の使用人に煙たがられる様になりました。
別にシアンと契約したくらいでどうにかなる訳でも無いんですけどね。
あ、シアンと言うのは私が契約した青い小鳥の精霊です。
どうやら彼(彼女?)は名前が無いらしく、と言うよりも前の契約者たちが読んでいた呼び名が沢山あり過ぎて本人から何でもいいよと言われてしまいました。
それでいいのかと思ったのですが、精霊と言うのは自然そのものであり名前に拘るのは人間だけなんだとか。
あの日以降、変わらず接してくれたのは私を溺愛する母アンジェリーナと表情は動かないがあの出来事の前と変わらず接してくれる(むしろあの前よりも親しくなったかも!←希望的観測)弟エリオット。
そして、乳母の頃から変わら無い鉄壁の使用人の顔を貼り付ける侍女のヘイザ。
・・・この人は・・・何というかあれです。うん。
私のことをどう思っているのかちょっと分からないです。はい。
不吉の精霊と契約していようと怯えるでもなく、悲鳴を上げるでもなく、避けられるでもなく、変わらない対応をしてくれました。
何と言うか、彼女なら私が伯爵なろうが、魔王になって世界征服を掲げようが、勇者になって人類を救おうが変わらず私の世話をしてくれそうです。実際に似たようなこと言ってましたし。
「ヘイザは他の人達みたいに避けたりしないのね?」
「仕事ですから。」
「えっ。いや、でも私・・・・」
「貴女がどのような者になろうとも私は貴女の侍女として仕事をするまでです。」
「・・・・そ、そう。」
淡々とした口調で言われました。
もうね、淡々とし過ぎていて嬉しいのやら嬉しくないのやら複雑な思いでしたよ。
否、嬉しくはあったんですよ?
でも、何だろう素直に喜べないんですよね。
彼女はこれが通常という事で諦めました。
そう言う事で、この三人だけがいつも通り接してくれたんです。
父親ですか?
あの人はあの日以降二割り増しで避けるようになりましたよ。
あれの前から私を避けている節がありましたし、あの人に至ってはもう悟りを啓く思いでしたよ。
まあ、元々余り会わない人でしたし、会っても笑うでもなく抱きしめるでも無く淡々と用件を言うだけでしたしね。
哀しくない訳じゃないですけど、諦めてましたから。
そうそう、契約精霊であるシアンについてなんですが。
彼(彼女?)契約してからというもの、小鳥夫婦の巣に常駐するかことあるごとに私の周りをうろつくかのどちらかなんですよね。
あ、今は小鳥夫婦(子供が生まれたので家族ですかね)も新天地へ向かって旅立ったのであの巣に居る時は一羽のんびり寛いでいますがね。
あの小鳥のせいで私の立場が危うかったので、せめてその姿を如何にか出来ないかと聞いてみたんですよね。
「その姿如何にか出来ない?青い鳥の姿だとちょっと・・・・。」
・・・・分カッタ
出てきたのは、青い鹿、青い栗鼠、青い蛇、青い―――
「いや、別に普通の鳥でいいんだけど・・・その青い体を変えられないの?」
ソレハ無理。青ハ、マナノ高イ証シ。
「証し?」
ソウ。ダカラ、色ハ変エラレナイ。
(証しねぇ。そういえば、今までの精霊も青緑や青っぽい体してたかも。)
「じゃあ、動物じゃなくていいからアクセサリー類になれる?ネックレスとか指輪とか耳飾とか。」
・・・・コウ?
そう言って変化したのは、青い玉をくっ付けた羽根の形の小さなハーフピアスだった。
「へえ。出来るんだ・・・。(流石に生き物じゃないから出来ないと思ってた。)」
精霊ニ、姿形関係無イ。
生マレル時、周リニ合ワセタ姿ヲトルダケ。
「ふ~ん。ところで・・・・・えっと?」
?・・・ナニ?
「そう言えばあなたの名前はなんて言うの?」
精霊ニ、名前ハ無イヨ。
「え!?それだと不便じゃない?」
人間ニハネ。
ワタシ達ニトッテ、名前関係無イ。
皆同ジ、自然ソノモノ。
「そっか、それなら何て呼べばいいかな?」
何デモイイ。
前ノ主達、イロンナ名前デ呼ンデタ。
エルモ、好キニ呼ンデ。
「う~ん。そうねぇ、じゃあ・・・・・シアン!綺麗な水色だし。それで、何で傍に居たがるの?別に傍に居なくても契約してれば力は制御できるんだし。」
前ノ主達、面白カッタ。
エルノ傍、面白ソウ。
面白イノ好キ。
「・・・・・あぁ。うん。・・・・そう。」
結論から言って、この精霊シアンは好奇心旺盛な変わり者(精霊)だった。
そんな変わり者シアンが日常に加わりつつも月日は流れ、十一歳になると私は王立ダリア学園へと通うことになりました。
・・・・一文に端折ってますがこの学園に通う為に笑いあり涙ありの厳しい道のりだったんですよ。
この王立ダリア学園は平民にも門徒を開ける寛容さの学園でして、その分入学試験がとても厳しいんですよね。まあ、王宮に仕える人材育成の場としての役割もあるので仕方がないのですけどね。とは言え、上に立つ者の殆どが貴族なので平民よりは試験は緩いようでしたけど。
入学するまで、と言うか試験前日までスパルタと言うお母様と鬼と言うヘイザによる猛勉強の日々でした。それはもう、家庭教師のサブリエラ先生のお小言が可愛く思えるくらい。偶に来る弟と言う名の天使があの日々の癒しでしたよ。
そんなこんなあってやっと入学を果たしたのですが、ふとある事に気が付いてしまったんです。
そう言えばエルゼリーゼを殺す親友っていつ頃出会うのかしら?って。
学園入学前は弟以外は年の近い子と会うことも無かったし、学園を卒業したら貴族の子女はすぐ婚活に勤しむようになり、その上ゲームのシナリオも数年としないうちに始まってしまう訳で。
あれ?これって学園で出会うってことですよね?
その親友を思い出そうとしても、ゲームではモブとして名前も設定も無く、画面のキャラもフードを被った人物で男か女かもわからない、唯一分かるのはそこそこ強い魔術師と言うことだけ。
相手を特定しようにもその特徴はこの学園全員に当てはまる訳で、砂漠の中から米粒を見つけ出す様なもの。そんなの絶対無理。
その事に気が付いてしまったら、周りの生徒全員が不審に見えて・・・・・・。
ボッチになってました。
しかも声を掛けられるたびビクビクしていた態度が、釣り目がちのきつい外見も相まって何故か上から目線の傲慢な態度に見えたようです。その態度が平民はおろか同じ貴族の生徒にも悪印象を与えてしまったようで、避けられるか向こうから衝突してくるようになりました。
この時になって失敗したって気付いたけれど、もう後の祭りでした。
否、仕方なかったんですよ!
学園でのことはゲームでは主人公達が思い出話程度に話すくらいだったし、設定でも詳しく書かれている訳でも無くさわり程度の内容でしたもん。ましてや敵のモブの事なんて書いている訳でも無し。
そんな中警戒しないのは無理だと思うんですよ。
言い訳だって?
・・・・・そんなこと分かってますよ。
エル。
「何?」
エルハ行カナクテイイノ?
頭に直接響く声がした。
シアンの問いに何処へ?とは答えない。
だって今日は入学式だから。
もちろん私のではありませんよ。
二年生ですからね。
「行くよ。ちょっと今までの反省をね。」
反省ッテ何ヲ?
「何でも無いわ。はあ、今年はエリオットも入学することだし。それに・・・勇者も・・・。」
ユウシャ?
「・・・・気にしないで。」
エリオットハ、来年違ウノ?
「お父様が特例で無理矢理試験を受けさせたみたいよ。まあ、新入生代表の挨拶までやるくらいだし、入学も許可されたみたい。やっぱりエリオットは天才ね。」
フウン。
「さてと、そろそろ行かないと遅れちゃうわね。」
私は気分を切り替えて先程から蹲っていた人目に付かない植え込みの中から立ち上がる。
向かう先は入学式が行われる学園中央に位置する建物。様々な式典などに使われるその建物は豪華絢爛で、まさに学園の顔と言っても過言ではない。
そこへと向かう生徒たちの声は明るく希望に満ち溢れていた。
其れとは対照的に気分を切り替えきれていなかったエルは彼らにチラリと羨ましそうな視線をやった。
「・・・・・平和に暮らしたいな。」
遠くへ視線を向けながら、切実な願いがつい出てきてしまった。
あ、目の端に涙が出てきそうです。
今年は厄介な人が入学する。
そう、前世プレイしていたゲームの主人公にして勇者(まだ予定)が。
ゲームでは勇者になったあたりから始まるので、この学園生活は会話で少し話すくらい。
でも、本編に入ってないからと言って二年前みたいなイベントが無いとは言い切れない。
しかも、裏切って私を殺す仲間もこの学園に居るはず。・・・・・まだ見つけてないけど。
うう、脇役過ぎて分かんないよぉ!!
勇者とかあまり関わりたくないかも・・・。
なるべく平穏な学園生活送りたいな。もう既に平穏は霞んでるけど。
先行き不安だわ・・・・。
一部修正しました。




