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この世界で生き残るために  作者: スタ
一章 前世との決別
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転機は危機

 今回は改稿前の内容をもとに書き加えたので早く更新できました。


 


「沙耶ちゃん、紹介するね。彼が武藤正輝くん。この間転校して来た私のクラスメイトで彼も天文部に入る予定なの。それと・・・・・・・彼が私を助けてくれた王子様だよ。」


 私に紹介したい人が居ると言って、会わせられたのは最近隣のクラスに転校してきたと言う少年だった。

 最後の方は私だけに聞こえるような小声で喋ったので彼は聞き取れなかったが、あまり気にしていないようで朗らかに笑ってよろしくと手を差し伸べた。


 明るくて人を包み込むような優しい笑顔。

 私をまっすぐに見つめるその瞳の奥には芯が一本通った強さが窺えた。

 優しくて強い、太陽みたいな彼。


 貴女の一番は私だと思っていたのだけれど。

 ああ、敵わないな。





 あの時の私はそんな事を想っていた。

 私と彼が談笑しているその横で、貴女がどんな表情で、どんな想いでいたのか気付くことの無かった私にはもう知る由も無い。


 ただ、あの日。


 彼との出逢いが、


 私達の関係を変えるきっかけだったのだと、今はそう思う。







 ***



 皆様おはようございます。

 ここ数日、雨や突風など天気が崩れた日が続いていたのですが今日は台風が過ぎ去ったかのような晴れ晴れとした晴天です。

 ポカポカとしたいい天気ですね。

 外で日向ぼっこしたいくらいです。

 あ、でも昨日の雨で外で寝転ぶことは出来ませんね。

 残念です。


 そうだ!

 日向ぼっこは出来ないけれど、エリオットを誘って庭に散歩にでも行きましょう!

 最近、薔薇園の隅にある樹の上に小鳥の夫婦が巣を作っていたのを見つけたんですよね。

 数日の悪天候で小鳥夫婦の巣は如何なっているのでしょう。

 無事だといいのですが。

 彼を誘って小鳥夫婦の巣を見に行ってみましょう。

 そうと決まれば早速エリオットを誘ってみましょう。

 確か彼は最近書庫に入り浸って・・・・


「――――!!」

「――――」



 窓から見える晴れ渡る空を見上げながら廊下を歩いていると、前方の廊下の角から争うような声が聞こえてきた。

 よく知る二つの声に、私は角を曲がる前に踵を返して元来た道を戻ることにした。


 おっとぉ、今日は晴天ですがどうやら一部吹雪が吹き荒れているようですね。

 危ない危ない。

 ちょっと遠回りすることになるけれど、別の道を通ることにしよう。






「おはよう、エリオット。」

「・・・・おはようございます。」

「エル、もしくはお姉様。」

「・・・・・・・・。」



 書庫へと向かう途中、エリオットに会ったので早速日課になってきた挨拶をする。

 最近では愛称で呼んでもらうか、姉って呼んでもらえるように頑張っています。


「お姉ちゃん・・・・・姉上でもいいわ。」

「・・・・・・・・。」


 バリエーションを変えて言ってみるもエリオットは無反応。

 暫くの間二人して無言で見つめ合う。

 最初に動いたのはエリオットだった。


 彼は私を無視して書庫へと行ってしまう。


「あっ!!ちょっと!!」


 私は慌てて彼を追いかける。

 なおも着いて来た私にチラリと視線をよこして、目線だけで何?と訴えかけられた。

 眉間に少し皺が寄っている様で鬱陶しがられているみたいだが気にしない。


 うん、此処は強引に誘っちゃおう。


「エリオット、今から庭に散歩にでも行かない?」

「行かない。」

「でもいい天気よ?」

「課題ある。」


 手を握って庭園へと誘ってみる。

 が、即答で返された。


 ぐぬぬっ・・・・強情な奴め。


「そんなに根を詰め過ぎると疲れるわよ。偶には息抜きもした方がいいわ。だから一緒に散歩に行きましょ?」

「あんたは息抜きしすぎ。」

「あんたじゃなくてお姉様かエルって―――」

「確か出された課題がまだ終わらないって昨日言ってなかったか?」


 あ、遮りやがったな。


「・・・・・・・・。」

「息抜きより勉強―――」

「エリオットは忙しいみたいだし、仕方がないわね。今回は諦めるわ。勉強頑張ってね!」

「・・・・・・。」


 私は仕返しとばかりにエリオットの言葉が言い終わる前に遮って、そそくさとその場を後にした。


 くっ、忘れようと思っていたことを!!

 今は小鳥達で癒される時だから、課題なんて気にしないわ!!








 小鳥の巣を見る為に庭へと出る。

 昨日は雨が降った為か、花々に付く雫が太陽の光を浴びてキラキラと輝いて見える。


「うわぁ・・・・綺麗。」


 キラキラと輝く庭を堪能しながら小鳥の巣がある薔薇園の隅の樹へとゆっくりと歩いて行った。

 庭は大きく三つに分かれている。一つ目は季節によって様相を変える四季に合わせた庭園。二つ目はハーブなどの香りが強い花が植えられている庭園。そして三つ目が薔薇園だ。この庭園は母の好みが全開に出されていて、ほとんどが真っ赤な薔薇である。

 その薔薇園に差し掛かったころ、ふとある事に気が付いた。


「あれ?そう言えば、今日は精霊を見かけないわね?」


 不思議に思いつつも気にすることはなく、私は小鳥の巣がある樹へと近づいた。

 野生の動物なので、脅かさないようにと薔薇の植え込みの陰から巣がある樹の枝を見遣る。

 その枝の上にはここ数日の悪天候の被害も無く巣は無事に鎮座していた。

 その事にホッと胸をなでおろした後、改めて小鳥夫婦の姿を見る為に辺りを見回す。




 ここ最近でこの樹に住みだした小鳥の夫婦は、色鮮やかな黄色い羽根の夫婦でした。

 インコに似ているんですよ。

 インコなんでしょうか?

 この世界の動物は、地球と同じなんでしょうかね?



 疑問は尽きませんが、それよりも雛が生まれるのが楽しみです。

 小鳥夫婦が住みだしてから、毎日様子を見に行っているんですよ。

 直ぐ産まれるわけ無いんですけどね。

 早く雛の顔が見てみたいです。




 その小鳥夫婦の姿を探していたのだが、今日は一向に見当たらず姿が見えなかった。

 不思議に思いもう一度当たりを探すも姿を見つけることは叶わなかった。



「あれ?」


 今日はなんだか様子が変ですね。


「?」


 じっと伺っていると、巣のそばに別の小鳥を見かけた。

 全身が色鮮やかな水色をしている。


 何て言うんでしたっけ?

 シアン色・・・とでも言うんでしょうか?

 綺麗な小鳥です。


 これはもしやライバル出現!?

 夫婦の危機ですか!?


 ドキドキ・・・・!!


 ・・・・・・。


 ・・・・・・・・?


 何かあの小鳥、揺らめいているような・・・・・?



「服、汚れるよ。」


「!?」


 前屈みで見ていると、突然後ろから声が掛かってビクッとしてしまった。

 振り返るとエリオットが真後ろに立って私を見ていた。。


「び、吃驚した。驚かさないでよ。それにしても、やっぱり私と一緒に散歩がしたくて着いて来たのね?」

「何してるの?」


 私の質問は無視ですか?

 仕様が無いですね、私は姉ですから?弟のそんな態度にも寛容ですよ?

 弟の質問にだって答えてあげますよ。

 ・・・・・ちょっといじけてなんていませんから。


「・・・・・早く雛が産まれないか、鳥の巣を見てるの。」

「・・・・。」


 興味無さそうですね。

 表情は見えないですが、どうでもいいって声が聞こえてきそうですよ。



「でも今あの小鳥の夫婦の危機かもしれないのよ。」

「?」


 あ、よく分からないって顔をしてますね。

 最近、彼の表情の機微が分かるようになってきました。

 これは仲良くなっている証拠ですよね!



「ほら、あそこに綺麗な青いとり――――――


 青い鳥を指そうとして、出来なかった。



 ミツケタ



 え?


 頭の中から小さいのによく通る声が響く。

 何故だかあの鳥が言った様な気がして振り返ろうとした。

 その瞬間、突風が吹き荒れる。


「!!」


 息も出来ないほどの風に身体が飛ばされそうになる。

 エリオットは!?

 後ろを振り返れば彼は近くの茂みにしがみ付いていた。

 飛ばされそうになっている。


 このままじゃ、エリオットが木に叩き付けられちゃう!!


 足を踏み出した瞬間頬に痛みを感じる。

 その痛みと共に、強大な何かが押し寄せてきて視界が暗転していった。




「エル!」









 意識を手放す瞬間に彼の私を呼ぶ声が近くで聞こえた気がして、その時私はこんな状況だと言うのに場違いなことを考えていた。





 ああ、やっと私をエルって言ってくれた。

 でもちょっとお姉様って言われてみたかったかも、前世一人っ子だったし・・・・・。





 そして私は意識を手放した。










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