記録
記録が消える。
過去の記録が、次々と消える、消える、消えていく。
新しい記録も、一瞬で消えてしまう。
再生不可、一瞬しか記録できない故障品。
修理もできず、使い物にならず、欠陥だらけだけど、使い続けるしかない、記録装置。
新しい情報が記録される。
永遠に保存しておきたい、消したくない、大切な記録が。
でも、そんな記録もあっという間に消えてしまう。
復元しようにも、バックアップ機能はついておらず、消えた記録は戻ってこない。
それでも、必死に記録を取り戻そうとする。
そうしている間にも、次々と記録が消えていく。
必死になればなるほど、記録が消えるペースが速まる。
最終的に、大切な記録を戻すこともできず、無駄に他の記録を失う結果になる。
そんな絶望的な状況に、僕は涙を流す。
悲しくて、記録装置を壊してしまいたくなる。
けれども、そんな負の記録も、記録されることなく、すぐに消えてしまう。
記録は消え続ける。基本的な記録、大切な記録、恐ろしい記録、すべて消されていく。
悲しみも喜びも、どんな記録でもすぐに消えて、いつもの自分に戻る。
記録が消えていくと同時に、苦しみ以外の感情を失ってしまった、機械のような自分に。