第38話 臓器売買
「ボス、亜熊組の人身売買組織の場所を知ってます」
なんということか。
佐奈子が人身売買の組織のことを知っていた。
世間は狭い。
そう言えば、佐奈子の所に来てた借金取りが臓器を売るような話をしてたよな。
ただの人身売買じゃなくて、臓器売買だったか。
「話せ」
「はい、ボス。でもちょっとご褒美が欲しいな」
佐奈子が指で銭のジェスチャーをする。
「100万円でいいか?」
義士の借金は300万円。
それを取り返すのに100万円使うのは業腹だ。
この100万円も義士に請求してやろう。
「ボス、愛してます」
「お前の愛なんて要らん。早く話せ」
「場所は繁華街の外れです」
地図で場所を示して貰った。
場所は分かった。
「人身売買の人はどうなった?」
「臓器を抜かれたらしいわ。高級クラブに来た亜熊組の組員が話していたから」
赤い国旗の国で行方不明になった人達は臓器を全部抜かれているのだろうな。
ちょっと寒気がした。
「向こうの国の警察は何もしないのか」
「党員が関わっているらしいわよ」
国家ぐるみの疑いがあるのか。
さすがに上層部は関与してないだろうけど、末端はそうでないらしい。
赤い国旗の国では公務員が出世するには金が物を言うと聞いている。
医者もグルなんだろうな。
ほんとうにぞっとする。
「他には?」
「多重債務者は出国までアジトに寝泊まりするらしいわ。目的地まで逃げないように組員が監視しているみたい。赤い国旗の国に何度も行って観光したと組員が言ってたわ」
「犠牲者には子供とかもいるのか」
「みたいね。多重債務者の家族まるごとというケースもあるって」
「臓器売買は許せないが、子供は特に許せないな」
「私もそう思うわ」
繁華街の外れにあるアジトはカメラが何台もあって、赤外線センサーまである。
扉は鉄だ。
このアジトは違法カジノが前に入っていたと調べにはある。
警備が厳重なのはそのためだな。
もちろん違法カジノは摘発された。
ここは実質、亜熊組の所有物件なのだろう。
義士の魔力痕跡は扉の向こうに続いている。
どうやらここで間違いないようだ。
警察が踏み込むのを待つべきだろうな。
ただ、抜け穴が用意されているかも知れない。
違法カジノで捕まったとされる人数は余りにも少ない。
普通に考えたら抜け穴がある。
さて、どうするか。
違法カジノの時も抜け穴は発見されなかった。
今回も無理かも知れない。
義士が悪の手先になっているなら懲らしめないと。
抜け穴を見つけるしかないか。
警察も見つけられなかった抜け穴か。
たぶん地下通路だろう。
ただ、都内で地下通路を掘るのは容易ではない。
ガス管や水道管が埋まっているからだ。
亜熊組の傘下には建築会社もある。
そういう情報は入手できるだろう。
俺もブラックバイパーの伝手で資料を入手したが、抜け穴の場所を特定はできない。
空蝉に頼むことにする。
水道管の検査を装って地下の空洞を調べるようにした。
だが、敵もさる者。
空洞が見つからない。
空蝉によれば使わない時は土のうを詰めているんじゃないかと。
里奈に相談したらきっと不思議道具で突き止めろと言うんじゃないかな。
「というわけで地下通路を探したい」
ロバートに相談してみた。
「空洞なら分かる魔法はあるが、使わない時に土のうを詰めているんじゃな」
駄目か。
「リーダー、洞窟で閉じ込められた時に出られる場所を探すのがあったじゃない」
「あれか」
クラウの言葉にロバートがポンと手を打った。
「あれって? もったいぶらずに言えよ」
「魔力放出するだけだ」
「それだけ?」
「魔力で出口を探す。魔力をたくさん使うから非常時にしか使わないがな」
「俺にできるかな」
「魔道具を作って貰えよ。簡単な仕組みだからな」
魔力放出の魔道具を作ってもらった。
アジトの近くで起動。
俺には魔力は見れないのでどうなっているか分からないが、きっと広がっているんだろうな。
魔力の流れは何となく分かる。
扉の隙間から染み込んだ魔力が出口を探してアジトに満ちる。
そして、地下室の空間から横に魔力が伸びる。
土のうを詰めても魔力は染み込む。
魔力は物体も透過するからな。
ただ、流れやすいのは何もない空間だ。
だから隙間から漏れる。
抜け道を把握した。
2軒離れた場所のスナックへと抜け穴は伸びていた。
この情報を悪徳警官に流すとしよう。
問題は、魔力を流して気がついたんだが、銃火器が常備されていることだ。
魔力の流れで形が分かるからな。
キャビネットの中に銃が多数。
手りゅう弾もある。
抜け穴の出口で待ち構えていたら、銃撃戦になる可能性もある。
警官に殉職者が出てほしくない。
何か考えないと。
攻撃魔道具はなしだな。
警察に説明するのがめんどくさい。
となると、麻痺は駄目だな。
化学兵器を使ったと思われると厄介だ。
眠り魔法の魔道具かな。
薬物の反応など魔法効果では検出されないからな。
インテリジェンスブックにも眠りの魔法は記されている。
レジストされ易い魔法らしいけど、どうなんだろうな。
迷いの魔法もレジストした奴はいなさそう。
魔法耐性と言う意味では、耐性なんかないだろうからな。
眠りの魔法は、説明がつかなくて報告書が大変になるんだろうけどな。
たぶん、全員が間抜けで眠り込んでいたと、強引に説明して終わりかな。
担当の警官は上に怒られるんだろうな。
ばかもん、小学生も書かないような報告を上げやがってとか怒鳴られるだろう光景が脳裏に浮かぶ。
明日は眠りの魔道具を調達しに異世界に行くぞ。




