第10話 冒険者登録
「次はどこだ?」
ロバートが俺に訪ねる。
「ポーション屋だな」
「街のポーション屋は安いのしか置いてないぞ」
「かすり傷程度しか治せないのか?」
「そうだ。病気の薬も風邪薬ぐらいしか置いてない」
「ちなみに何でだ?」
「防犯の為だな。金貨が必要なポーションを店頭に置いておく訳ないだろう。そして高いのを売るには診察がいる。診察しないで薬を売って効かなかったなんてなったら、店の信用が丸つぶれだ」
なんとなく分かる。
金貨が必要というと10万円からだ。
それが効かなかったら、文句の一つも言いたくなる。
薬師の診察が必要なんだろう。
「傷薬はどうなんだ?」
「一般になら安いのだけだな。冒険者なら、無条件で高いのも売ってくれるけどな」
「それなら冒険者になる」
「よし、ポーション屋の前に冒険者ギルドだな」
「おう、頼む」
冒険者登録かぁ。
なんかワクワクするな。
冒険者ギルドに行きカウンターに並び、俺の番になった。
「冒険者登録したい」
「ちょっとお待ち下さい」
そういうと受付嬢は奥の部屋に行った。
しばらくして戻って来て。
「待たせて、申し訳ありません。承ります。用紙にご記入下さい」
「文字が書けないんだけど」
「代筆致します。名前をどうぞ」
「クラモト」
「出身は?」
「ええと……」
「魔穴271番だ」
ロバートが助け舟を出してくれた。
あそこは魔穴271番と言うのか。
「特技は何かありますか?」
「ええとそうだ。魔力」
「確かにこの魔力量は特技と言えます。分かりました特技魔力で登録します」
魔道具に手をかざすとカードが出て来た。
なるほどギルドカードか。
「ギルドカードで金銭の授受なんか出来るのかな?」
「できないぞ。理由は偽造防止が出来ないからだ。民間の魔道具職人の方が腕が良いからな。国のお抱えが作ったのではすぐに真似されちまう」
「じゃこのカードは何が出来るんだ」
「簡単な本人確認だけだな。口座のお金の出し入れの時の本人確認は、もっとごつい魔道具でやる」
デジタル技術を応用すれば、魔道具も凄い発展を遂げるのだろうけど、それは言わない事にした。
「指紋認証とか、網膜パターン認証とか、静脈認証とか使えればな」
「何だそれは?」
テレパシーでも上手く伝わらなかったらしい
「指紋は分かるよな。指にある凹凸の模様だ」
「ああ、人間によってみんな違うのか」
「まあな。網膜パターン認証は目の模様。静脈認証は手の平とかを光に透かして血管の形で判断する」
「金庫の鍵に良い技術だな。魔道具で再現できると思うぞ。まあ、ギルドカードに搭載はできないけどな」
「大きくなるのか?」
「お前が持ってきた魔導金属を使えば出来るが、物騒過ぎる」
「魔石がでかいんだな」
「ああ、そうだ。魔石の代わりに魔導金属を使えば良いが、物騒だ」
爆弾をカードに入れるような物か。
安全だと分かっていても、何かの拍子に爆発したら敵わない。
「魔導金属を爆発させる条件は?」
「魔法で刺激を与えれば良い」
「うひっ、魔法食らったらやばいのか」
「いいや、お前の場合、魔導金属を身に着けていれば問題ない。それだけ魔力を放出すれば、魔法の魔力なんか届かないからな。ただ余波の熱とかは届くからな。魔法に飛び込んだりするなよ」
俺の魔力放出はバリアか。
でも、余波は届くと。
覚えておこう。
手持ちの金貨が少なくなった。
「魔導金属を換金したい。面倒だから100枚ぐらいしたいが、どうだろう」
「そんなに現金はありませんので、少しお待ちを」
少し待たされ、受付嬢が戻ってきた。
「商業ギルドから、借り入れしますので、お待ちください」
しばらく経って、台車に積まれた金貨9100枚が運ばれてくる。
冒険者がギラギラした目で俺を見つめた。
「お前ら言っとくぞ。クラモトの剣は雲を裂いた。嘘じゃないぞ。武器屋から光の柱が上がったのを見ただろう。襲うならその真偽を確かめてからにしろ」
ロバートがそう言ったら、ほとんどの冒険者は目をそらした。
「これでほとんどの奴は諦めたはずだ」
「なら良いけど」
「光って眩しいお前を襲う奴はいないだろ。言っとくが魔剣は最後の手段だぞ」
「ああ、分かっている。護身用の魔道具を他にも手に入れるべきかな?」
「電撃の魔道具より強力な奴は特注になる。今からでは間に合わない。昼は俺達が警護している。寝る時は金庫室用の結界を使えば、問題ないだろう」
「そうだな。そう願いたい」
魔道具は間に合わないのか。
魔道具ってどう作るんだろう、ちょっと興味が湧いた。
インテリジェンスブックで魔道具の基礎原理を念ずると知識が頭に浮かび上がった。
魔導インクで回路を書くとできるらしい。
魔導インクの種類は何十とあるみたい。
素人には無理だな。
プリンターを使うにしても特殊なインクで印字は無理だ。
やっぱり魔道具は異世界で作って輸入するのが良い手みたい。
俺は何の気なしに掲示板に目をやった。
「掲示板に目が行っているようだが、依頼は受けさせないぞ」
ロバートに釘を刺された。
「せっかく冒険者になったんだから、依頼が気になって」
「とにかく今のお前だったら、危なっかしくて駄目だ。文句を言いたいのだったら、魔剣を制御できるようになってから言え」
「これって制御できるのか?」
「当たり前だろう。常に全力でなんて道具は効率が悪い。流れ込む魔力を加減すれば威力を抑えられるはずだ。だが、抜くなよ。訓練なら誰も居ない森の中でやれ。それも切っ先を天に向けてだ」
「分かったよ」
異世界で一気に金持ちになれたが、同時に危険になっちゃったな。
そして、不自由な事も多い。
地球に戻って、収納の魔道具で銃を密輸する事も考えた。
だが、辞めておこう。
そんなのは柄じゃない。
護衛は雇えばいいんだ。
何も俺がドンパチやる必要はない。
次はポーション屋だ。




