33.疑わしきは
「ミッチェ、どうしたの?」
子供達に会うなり心配されてしまいました。
「すみません、ちょっと疲れる話し合いを頑張っただけですよ」
「ミッチェちかれたの?おひるねする?」
「大丈夫です。お二人のお顔を見たら、疲れなんて吹っ飛んでしまいましたから!」
本気でそうお伝えしたのに、何故か不審げな顔をされてしまいました。
「あ、そうですわ。お二人にお話ししたいことがあったのです」
「なぁに?」
「ダイアナ様のことです」
「お母様に何かあったの?」
凄く心配そうです。よかったわ。全然会いたいと言わないから、何かあったのかと思いましたが思い違いのようです。
「いえ。お二人は会いたいのを我慢しているのかなと思いまして。フェミィ様達は誰に気兼ねすることなく会いに行っていいのですよ?」
「……でも」
「勝手に会いに行ってはいけないのは旦那様だけですから」
「え!父さま、おしごとないとき母さまのそばよ?」
なるほど。旦那様にお時間がある時はダイアナ様を独占していたのですね?だから、帰って来てからコニー様達は遠慮して会いに行けなかったのかしら。
本当に駄目な旦那様です。
「残念ながらルールが変わりました」
「ルールって?」
「今まで旦那様がダイアナ様の側にいることが許されていたのは、お二人が結婚していたからです。
でも、今はサヨナラしてしまいましたので、旦那様は側にいてはいけない人になりました。
ですから、フェミィ様達がダイアナ様の一番です。会いたいときに会いたいと言っていいのですよ」
妻としての自覚が足りなくてうっかり許していた私がいけないのです。フェミィ様達に申し訳ないことをしてしまいました。
「……父さま、母さまとなかよしできないの?ないちゃうよ?」
「仕方がないのです。旦那様は私と結婚してしまいましたからね。今回、ダイアナ様を探しにいかれたのはちゃんとお別れするためですよ」
私は勘違いしていたのですよね。確かにダイアナ様を探すようお願いしましたけど、それは、よりを戻すためではなく、けじめをつけてもらうためでした。
旦那様があまりにもダイアナ様愛に戻っていたせいで、すっかりと流されておりましたよ。
「旦那様は暫く落ち込んでしまうと思いますから、お二人が慰めてあげてくださいね」
「3人なの」
「え?」
「そうね。コニーの言う通り。慰めるのは私達3人の間違いでしょ?だってミッチェは妻なのだから」
「ん゛!?」
「どしておどろくの?ミッチェがいったよ?『わたしとけっこんしたから』って」
……合っているけど合っていません。
妻ですけど愛はないのですよ。さすがに言えませんけど。
「残念ながら、ダイアナ様ほど仲良しではありませんので、私が慰めても喜びませんよ」
「父さま、ミッチェのことすきだよ?」
「……ありえません」
「何て顔しているのよ。淑女のしていい顔じゃないわ」
だって!コニー様が恐ろしいことを仰るから!!
「でも、ミッチェはここにいてくれるのでしょう?」
「それはもちろん……」
「それなら今までどおり仲良くしないと」
「……いままでどおり?」
「そうよ」
「父さま、おしごと?それならおかしおとどけいく!」
「え?……ああっ、そういう!」
ご飯やお菓子のお届けみたいな仲良しですか。ビックリしました。そうですよね、お二人が男女としての仲良しを求めるはずありません。
自分の勘違いに、恥ずかしさで顔が赤くなりそうです。
あら?というか、ダイアナ様に会いに行くお話しはどこへ?
まだ旦那様に遠慮なさっているのかしら。
「では、ダイアナ様にもお届けに行きますか?」
「いいの?」
「ポーラに体調を確認してからですけどね」
「はーい!」
持って行くお菓子の相談をしているところに、ブレイズ様がやってきました。
「お久しぶりです。ユーフェミア様、コンラッド様」
「久しぶりね。どうしたの?」
あら?もしかして、ダイアナ様と駆け落ちという話は聞いていなかったのでしょうか?
ややこしい設定を増やすから、説明が面倒臭いことになってます。
「俺は今、ダイアナ様の専属執事なんです」
……そうきましたか。
「そうなの?」
「はい。それにしてもお二人とも大きくなりましたね!」
「うん!父さまくらいおおきくなるの!」
「それは楽しみだ」
上手く話をそらしましたね。執事が腹黒ってこんな感じでしょうか。ノーランのイメージは合っているのかも。
残念ながら、私はブレイズを信用していません。だってこの方、絶対にダイアナ様に恋心を抱いていますよね?
亡きお兄様の無念をはらすため、と、もっともらしいことを言ってましたけど、どこまで信じてよいのやら。
そもそも本当にお兄様にはそんな無念があったのかしら。
何なら、ご夫婦の仲が進展しなかった原因なのでは?と思ったりもするのですけど、どうなのでしょう。




