19.報告日誌(2)
【報告日誌】
『今日も仕事をした。
追記:私の体は丈夫だ。
朝、コーヒー
昼、サンドイッチ、コーヒー
夜、まだ食べていない
一番美味しいものはコーヒー
以上』
【ミッチェ、フェミィ、コニー】
「ねぇ。駄目な大人がいるのだけど」
「困りましたね。叱ってあげてください」
「だーめだめっ♪だーめだめっ♪はっくしゃっくさまはっ、だーめだめだっ♫」
「お歌は上手ですが表現がストレート過ぎますね?」
【報告日誌、コメント】
『コーヒーは食事ではありません。三食栄養のあるものをちゃんと食べましょう。
丈夫かどうかは問題ではありませんから!
ユーフェミアより』
『ダメダメなうたをつくったら、ミッチェにだめだしされました。
ブロッコリたべれますか?
コニーより』
【伯爵と侍従】
「……料理長に三食栄養のある、片手で食べられる物を頼んでくれ。ブロッコリーを使ってだ」
「いや、ちゃんと食事の時間を取らないとお嬢様に叱られますよ?」
「そんな事は書かれていない」
◇◇◇
【報告日誌】
『今日も仕事をした。
朝、ブロッコリーとエビのサンドイッチ、コーヒー
昼、ブロッコリーとスモークサーモンのサンドイッチ、コーヒー
夜、ブロッコリーとチキンのサンドイッチ、コーヒー
美味しかったものはサンドイッチ
以上』
【ミッチェ、フェミィ、コニー】
「何なの?サンドイッチ大好きっ子なの?」
「たぶん、お仕事をしながら食べてらっしゃるのではないかしら。叱ってあげてください」
「さ…、三かいもブロッコリたべてる!……ぼくはおともだちにはなれないね」
「その前に親子ですよ?」
「じゃあ、なかよくなれないね」
【報告日誌、コメント】
『食事は食事の時間に食べましょう。作ってくれた人に失礼だと思います。
サンドイッチは一日一回だけしか認めません。
ユーフェミアより』
『ブロッコリはくしゃくはすごいけど、ぼくとはおともだちになれそうもありません。
コニーより』
【伯爵と侍従】
「……ブロッコリ伯爵?」
「ああ!コンラッド様はブロッコリーが大の苦手ですから。ご自分の嫌いなものが好きな旦那様とは仲良くなれないと言いたいのでしょう」
「好きだから聞いたんじゃないのか……」
「あ、ほら。叱られたじゃないですか。食事の時間を作ってくださいね」
「……料理長にサンドイッチは一回だけで、ほかはなるべく早く食べられて栄養があってブロッコリー以外の物を使った料理を頼んでくれ」
◇◇◇
【報告日誌】
『今日も仕事をした。
朝、ハムとチーズのサンドイッチ、野菜ジュース
昼、ミネストローネ、パン、コーヒー
夜、クリームチャウダー、パン、コーヒー
美味しかったもの、ミネストローネ』
【ミッチェ、フェミィ、コニー】
「……何だか汁物でパンを流し込んで三分くらいで食べ終わっている気がするわ」
「旦那様はたったこれだけで、よくあの大きな体を維持できていますよね。不思議です」
「ねー、もうね。いっしょに食べたらいいとおもうの」
「では、スパイのノーランに旦那様のスケジュールを確認してもらいましょうか」
【報告日誌、コメント】
『お父様、食事はもっと楽しむものです。明日、教えて差し上げます。お楽しみに。
ユーフェミアより』
『ぼくのすきなたべものはなんでしょう!
あした、おしえてあげるね。
コニーより』
【伯爵と侍従】
「……どういう意味だ?」
「そのままでしょう。よかったですね」
「何が?……コンラッドは何が好きなんだ?」
「答えを聞くのはズルです。嫌われますよ。頑張って当ててくださいね」
「……お前はそんなに喋る男だったのだな」
「ふだんは旦那様が無口すぎるから会話にならなかっただけです。私の名前は覚えてますか?」
「ミッシェルといいワイラーといい、私を老人扱いしているのか」
「おや、覚えていましたか。まったく名前を呼んでくださらないのでお忘れかと思っていましたよ」
「………呼んでいないか?」
「はい。ほとんど」
「………………すまなかった」
「おお!お嬢様達は素晴らしいですね!旦那様をこんなにも素直にさせるだなんて。いや、ミッシェル様の手腕ですかね?」
「仕事をするから黙れ」
「はーい」
◇◇◇
「旦那様、そろそろお昼の時間です。ご準備をなさってください」
「……いや、あと少しで終わるから」
「駄目ですよ、そろそろ来られますよ」
「は?なにが」
こんこんこん、こんこんこん
「……誰だ、このふざけたノックは」
「お父様、ごきげんよう。食事の時間ですよ」
「ですよー!」
「……………………は?」
「父さま、ごあいさつは?」
「……え」
「ごきげんよー!はい、父さまも!」
「……ごきげんよう……」
「よくできました!ん、あれ?父さましゃがんで!とどかないの!」
「は?」
「旦那様、屈んでくださいませ」
「ちょ、ワイラー痛いぞ!」
「父さま、よくできました!いいこいいこ」
「ぼっちゃま、撫で過ぎです。旦那様の髪がボサボサですよ」
「ボッサボサ!」
「…………何だ。今のは」
「ごほうびだよ。ぼくがね、いいこいいこしたの!うれし?」
「………ああ」
「ほら、早く行かないとミッチェが待っているのよ?」
「……どこへ」
「おそと!じゃんけんかったからね、おそとで食べるのよ」
「虫が来たら嫌なのに」
「ぼく、むしさんすきだも」
「私は嫌いなの」
「じゃあ、ぼくがつかまえるね!父さまは?虫さんすき?」
「……嫌いではない」
「やった!ブロッコリなかまはダメだけど、虫さんなかまになれるね?」
「私はパスよ」
「ちょうちょは?」
「近くに来なければ」
「てんとう虫は?」
「近くに来なければ?」
「……どうして?」
「虫さん?」
「違う。なぜ私を食事に誘うんだ」
「昨日のコメント、読んでないの?」
「いや、読んだが」
「じゃあ、分かっているじゃない。皆で楽しく食事をするのよ。こんなギリギリのお断りは許さないからね!」
「そうよー、ゆるさないからねっ」
「……ミネストローネもあるわよ」
「え」
「好きなんでしょ?ここは喜ぶところだから」
「……ありがとう」
「どういたしまして」
「行くわよ」「いこっ!」
【報告日誌】
『今日は午後から仕事が進まなかった。申し訳ない。
食事は、昼ごはんしか覚えていない。
美味しかったものは昼ごはん全部だ。
とても嬉しかった。ありがとう』
【ミッチェ、フェミィ、コニー】
「ミッチェ、父様が嬉しかったって」
「よかったですね」
「うん!父さまね、バッタににげられたんだよ」
「二人とも、楽しかったですか?」
「うん!父さまこわくなかったよ」
「そうね。何だかビクビクしてたわ」
「これからも時々突撃しますか?」
「こんどはね、ケーキがいいな!」
「……甘いもの食べますかね?」
「あ!ぼくのすきなたべもの、おしえるのわすれちゃった」
「次がありますよ」
「そだね、つぎね!チョコレートケーキがいいなっ」
「私は苺タルトが食べたいわ」
「楽しみですね」
「うん!」




