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元公爵家執事の俺は婚約破棄されたお嬢様を守りたい 第1章

元公爵家執事の俺は婚約破棄されたお嬢様を守りたい 第1章(4)護衛クエストと彼女の事情

作者: 刻田みのり

 イアナ嬢に話をはぐらかされてしまい、俺は彼女がメラニアを嫌う理由を聞けぬまま護衛クエストの当日を迎えた。


 *


「ライトニングスラッシュ!」


 叫び、シュナが聖剣ハースニールを横降りに抜き放つ。


 一瞬の閃光が雪原を走るスノーウルフたちを襲った。一、二、三……八頭の白い狼が瞬時に消し炭と化す。やばい威力だ。


 あと雷撃の被害をスノーウルフしか受けてないというのもやばい。


 スノーウルフが炭化したというのに周りの雪が全く溶けてないだと?


 何だこのご都合主義ウェポンは。非常識過ぎるだろ。


 俺は別方向から迫ってくるスノーウルフの群れに注意しながらシュナの戦いぶりに圧倒されていた。


 ギルドで彼とやり合ったときは屋内ということもあって実力を発揮しきれていなかったのかもしれない。そう思える凄まじさだった。


 俺とシュナの背後には防御結界を張ったイアナ嬢。彼女と共に結界の中にいるのは今回の護衛対象である小太りの男とそっくりな顔の痩せた男たち。オロシーとその部下の双子だ。何やら大声で喚いているがとりあえずは無視している。


 戦闘中だしな。集中、集中。


「ジェイ、あっちからも来たわよっ!」


 イアナ嬢の声に俺は片手を上げて応じる。


 無詠唱で身体強化の魔法を発動させる。


 これで使える魔法はあと一つだ。人間が同時に発動できる魔法の数は二つまでと決まっている。これはもう世界の理のようなものなのだから諦めるしかない。


「余裕だ、任せろ」


 俺は先に現れていたスノーウルフの群れへと走った。


 両拳には黒い光のグローブ。


 魔法で強化された俺の身体は黒い光のグローブの現出によってさらにその効果を強めていた。常人を遥かに超えた脚力があっという間に俺を白い毛皮の狼の群れへと運ぶ。シュナの雷撃ほどではないがかなりの速さだ。


 俺は間近のスノーウルフに殴りかかった。


 拳は正確にスノーウルフの額を捉える。鈍く残酷な音を響かせてスノーウルフの額が潰れた。鳴き声も発さずにスノーウルフが倒れる。


 俺はすぐ近くにいた二匹目に拳を向けた。俺の中で「それ」が囁くように煽ってくる。


 怒れ。


 怒れ。


 怒れ。


 俺の身に宿っているのは怒りの精霊だ。この精霊は魔力と怒りを糧として俺に力を与えてくれるが代償もある。沸き上がる激情に飲み込まれたが最後狂戦士と化してしまうのだ。


 狂戦士となった者の末路は悲惨だ。


 魂をも「それ」に喰われ、転生すら許されず世界から消える。


 俺はそんな終わり方なんてお断りだ。


 だから、執拗に煽ってくる「それ」の声を無視した。鋼のような精神力で沸々と沸いてくる怒りの感情を抑えつける。これは並大抵の自制心ではできないことだ。


 でもまあ、俺はやってのけるんだがな。


 一匹また一匹と拳でスノーウルフたちを仕留めていく。俺はシュナのように一撃で複数を倒すことができないので相手の数が多いと不利だと思われがちだ。しかし、そんなことはない。


 確かに俺の攻撃範囲は狭い。


 だが、身体強化でパワーとスピードをアップさせたこの肉体は欠点を補って余りある動きをする。それに加えて黒い光のグローブを発言させたことによる「それ」の影響がさらに俺を常人離れさせた。


 俺の攻撃範囲が狭い?


 なら、こっちから相手に近づけばいい。それだけのことだ。


 俺は躍るように地を蹴り宙を舞いスノーウルフたちをぶん殴っていく。一撃で額を打ち抜き即死させてさしたる時間もかけずに最初の一群を殲滅した。ふん、こいつら弱すぎるぞ。いくら格下のEランクモンスターとはいえ、これでは全く戦った気がしない。


 俺たちの強さに怯んだのか新手のスノーウルフたちが戸惑ったように動きを鈍らせる。


 俺にとっては好都合。もちろんこの好機を逃したりはしない。


 俺は一歩で次の獲物へとジャンプした。身体の奥から歓喜にも似た「それ」の声が聞こえてくる。当然無視だ。


 怒れ。


 怒れ。


 怒れ。


 シュナが別の群れに雷撃を浴びせるのを視界の端で認めつつ俺は拳を振るう。そこに命中するのが決まっているかのように俺の拳はスノーウルフの額にめり込んだ。頭蓋骨を砕く音がこの個体の生命の終わりを示すかのように虚しく響く。


 俺は跳ねるように遺骸となったスノーウルフからすぐ傍の個体へと移った。着地と同時に拳で絶命させる。


 この地に残るのは消し炭と額を拳で打ち抜かれた死体。


 スノーウルフたちが自分の縄張りを荒そうとした人間を襲ってきただけだというのはわかっている。四十頭ほどの群れの中で数頭単位のグループを形成して行動する彼らは無駄な狩りをしない。魔獣だが基本さして攻撃的ではないのだ。


 彼らは自分の縄張りを守ろうとしただけ。


 オロシーが雷光石を安全に探すために周辺に生息するスノーウルフを駆逐すると言い出さなければ……。


 俺は止められなかったことを悔やんだ。


 だが、俺たちが命令を拒否したらオロシー本人か双子がスノーウルフの縄張りに踏み入れただろう。それで怪我でもされたら堪らない。


 最悪死なれたら面倒では済まない事態に陥る可能性大だ。考えただけでもうんざりする。


 やむなく俺たちはスノーウルフたちの縄張りを侵した。悪いのは俺たちであってスノーウルフたちではない。


 襲われても文句を言えないのだ。


 ただ、俺には護衛クエストがあったし、大人しくスノーウルフに殺られるつもりもなかった。どうせ死ぬならお嬢様のために死にたい。


 俺は冒険者としての義務と生きるために戦った。


 その結果がこれだ。


 俺は自分が殴り殺したスノーウルフの一頭の傍で膝をつき、黙祷した。どう考えても無駄な戦いだったし、無駄な殺戮だと思えたからだ。


 俺は熱心なウィル教徒ではない。


 だが、祈ることはできる。


 自己満足でしかないのかもしれないがそれでも祈っておきたかった。


「おい、そんなところでボケっとしてないで雷光石を探せっ!」


 金糸と宝石を贅沢に飾り付けた防寒着を着たオロシーが怒鳴ってくる。キンキン声がどうにも耳障りだ。いかにも悪徳商人といった顔も気に入らない。


 戦闘が終わって周囲の安全を確認するとオロシーたちは雷光石を探し始めた。俺たちも手伝わされる。


 ここはノーゼアから北に半日ほど歩いた位置にある雪原だ。


 オロシーより早くノーゼア入りしていた双子の調査によってここにも雷光石があるらしいと判断されていた。ここならペドン山脈よりもノーゼアに近い。


 上空にも警戒しながら俺は立ち上がる。デイブの店で話していた冒険者たちの言っていた場所はここではないはずだが一応ワイヴァーンに注意しておくにこしたことはない。連中の生息域はこのあたりも引っかかっているからだ。


 オロシーたちの目的は雷光石だった。


 元はアーデス男爵のお抱え商人でしかなかったオロシーがどこで雷光石のことを聞きつけたのか、そんなことは知らないしどうでもいい。


 しかし、オロシーがメラニアの推薦によって事業を拡大したらしいという話は聞き捨てならなかった。あからさまなくらい不正の匂いがプンプンしていた。


 できればこの護衛クエストをぶん投げたいのだがそうもいかない。


 あの禿げ頭、いつか憶えておけよ。


「それにしても」


 自分の身長と同じくらいの岩の陰に回り込みながらイアナ嬢が言った。


「ここ、完全にスノーウルフのテリトリーよね? そんな場所を荒らしたって何も出てきやしないのに」

「そうだな」


 俺も岩の窪みを覗きながら応じた。


「雷光石はもっと雷の落ちやすい場所でないと見つかり難い。だが、そんな場所を縄張りにするほどスノーウルフが馬鹿かというとどうかな? 雷がドッカンドッカン落ちるような危ない縄張りなんて俺なら御免だ」

「そこっ、喋ってる暇があるなら雷光石を見つけろ!」


 オロシーが怒鳴る。


 大声を出して喉が渇いたのか彼は足下に置いたバッグから果実酒の瓶を取り出した。ゴクゴクと喉を鳴らして一気飲みする。


 ぷはぁ。


 オロシーが果実酒を飲み干し、空き瓶をポイと投げた。


 空き瓶が俺の撲殺したスノーウルフの亡骸に命中する。


 クヒヒ、と下品に笑いオロシーは双子の一人に命じた。


「瓶はちゃんと回収しておけよ。あれ高いんだからな」


 はい、とどっちかはわからない双子の片割れが返事をする。そいつはシュナに視線を向けた。


「そこの剣士、あれを回収しろ」

「ええっ、それ僕がやるの?」

「他に誰がいる」

「あのおじさんに言われたの君だよね? それなのに僕に振るの?」

「魔獣の死体で汚れた物なんて触れるか」

「……」


 シュナとほとんど同じタイミングでため息が出た。


 おいおい、あんたらのせいで死ななくてもいい命が奪われたんだぞ。


 せめてその命にくらい敬意を払えよ。


 何だかがっかりしてしまい俺はもう一度ため息をついた。


 俺、こんな奴らを護衛しないといけないのかよ。



 **



 陽が傾くまで雷光石を探したが一つとして見つからなかった。やはりこの雪原は見当違いなのではないかと思う。


 オロシーが街に戻りたいと言い出したので俺たちは探索を終了した。来た道を引き返す足取りは決して軽くなかったが俺はこの馬鹿馬鹿しい護衛依頼もその護衛対象も良しとしていなかったので少しほっとしていた。一応野営の準備も揃えていたがあんな奴らとずっと一緒にいるなんて御免だ。使わずに済んで本当に良かった。


 いっそ護衛ではなく採取依頼に切り替えて欲しい。その方がよっぽどマシだ。何なら俺一人でも探しに行けるしな。


 ペドン山脈の鉱山とノーゼアの街を行き来する乗り合い馬車があったので朝はそれを利用していた。帰りも途中から乗り合い馬車を使うことにする。


 狭い馬車の中で身を縮めるようにして俺たちは座っていた。オロシーのぶつぶつ言う不平をスルーできるようになる程度には俺たちも慣れていた。人間は慣れる生き物だとつくづく思う。


 だが、オロシーはどうやら人間ではなかったらしい。


「狭い、狭すぎるっ! どうしてこんな狭いところに座っていなければならないんだ。私は荷物ではないんだぞ!」


 ああ……。


 このおっさん、馬車を用立てる金をケチったのが自分だって憶えてないのか?


 双子に乗り合い馬車の不便さを散々言われていたのに何故それも忘れている?


 あれか、知能がトロールなのか?


 乗り合い馬車には俺たちの他にも乗客がいる。身なりから推測するに鉱山関係者だろう。すっかり汚れた衣服はオロシーの豪奢な防寒着と比べるまでもない粗末さだ。だが、駄々っ子のように騒ぐオロシーはどう見ても彼らより人として劣っている。俺はこんな奴に敬意を払いたくない。


 ううっ、早くこのクエスト終わらないかな。


 俺がそんなことを無言でつぶやいていると何かの衝撃音を轟かせながら乗り合い馬車が急停車した。


 姿勢を保てなかった数人が座席から転げたり喚いたりする。口汚く御者を罵っているのは双子の片割れだ。未だにどっちがどっちかわからないがまあそんなことどうでもいいか。


 俺の横にいたイアナ嬢が声をひそめた。


「何かあったのかしら?」

「何かって何だ?」


 応えながら周囲の気配を探る。


 前方、乗り合い馬車のすぐ先に大きな反応があった。


 王都やその付近ほどきちんと整備されてこそいないがちゃんと人の手の入った道である。ましてやノーゼアからも近い。それなりに魔物除けが施されているはずだった。


 つーか、乗り合い馬車が通るような道が魔物除けをしていなかったら問題だぞ。


 ま、まあモンスターのランクが高いと魔物除けも効かないんだけどな。ランクSSSプラスのエンシェントドラゴンとかだったら絶対に効かないし。


 で、今回のこれ。


 俺は腰を上げた。


「……ジェイ?」

「俺が外に出たら結界を頼む」

「おい、勝手なことをするな。お前はオロシー様の護衛だろ」


 双子の片割れが唾を飛ばす。汚いな。


「護衛だから出るんです。放っておいたら危険ですよ」

「ええっと、じゃあ僕も出ようか?」

「いや、俺一人でいい。シュナは万が一に備えておいてくれ」


 聖剣ハースニールを片手に立ち上がりかけたシュナを制して俺は乗り合い馬車から降りた。


 すぐに背後でイアナ嬢の詠唱が始まる。かなりの早口だ。


 さて、何がいるかな?


 いくつかの予想をしつつ俺は身体強化の魔法を発動させる。全身に力が漲ってきた。さらに「それ」の力を借りて黒い光のグローブを発現させる。


 より強い力を己の身に感じながら俺は御者台へと回り込んだ。


 乗り合い馬車に乗車したときは雪道だったが今は周辺に雪は積もっていない。やや湿った道に車輪の跡ができていた。北風が冷たい。


「……っ!」


 おいおい。


 御者と二頭の馬の首が無くなってるぞ。


 御者は手綱を握ったまま御者台に固まっていた。


 その首から上が見事に切断されている。断面は何かに焼かれたように焦げており、そのせいか出血はなかった。


 馬も同様に首を失っている。こちらも斬られた部分が焼け焦げていて出血はない。ただ、肉の焼けた臭いが酷く鼻を刺激した。結界を張らせたのはある意味正解だったな。


 この臭いはきっと一般人には堪えられない。イアナ嬢もたぶん駄目だろう。シュナは……あの聖剣ハースニールが何とかしてしまいそうだなぁ。何しろご都合主義ウェポンだし。


 などと思いながら襲ってきた爪をぶん殴って払い除けた。


 乗り合い馬車を通せんぼするみたいに巨大な蜘蛛型モンスターが道を塞いでいる。八つある目と足の関節部位が赤くそれ以外は真っ黒な化け物だ。カチカチと一対の牙を鳴らしてこちらを威嚇している。


 さっきとは反対側の脚を伸ばし、蜘蛛は俺に攻撃してきた。長く鋭い爪が熱を帯びて赤く発行する。かなりの高温だと判じられる熱気が俺の肌を嘗めた。


 俺は黒いグローブでその爪を受け流す。ぴりっと皮膚を刺激したのは熱のせいか、あるいは何かの毒か。おそらくは前者だろう。


 俺は足に力を入れて前に踏み込み、そのままの勢いで蜘蛛に突っ込んだ。


 真正面からぶん殴るべく拳を振り上げる。


 蜘蛛が炎を吐いた。


 うおっ、とちょい吃驚しつつ無詠唱で防御結界を張る。突然過ぎてサイズの小さなものしか展開できなかった。だが、間に合っただけ良しとしておく。


 おい、こいつただでかいだけの蜘蛛じゃないぞ。


 まあ、あの爪を見せられた時点で普通の巨大蜘蛛じゃないとは思ってたけど。


「わぁ、すごい。ゲルズナーのブレスを防いだ人間なんて初めて見た」


 この場にそぐわない無邪気な子供の声がした。


 え?


 俺は声のした方に意識を向けてしまう。


 乗り合い馬車の中で探ったとき気配は一つしかなかった。蜘蛛型モンスターの気配が強過ぎて探知漏れしたとかそんなつまらないミスはしていない。気配は一つだけだった。


 となると、こいつは……。


 短杖を持った緑色のローブを着た白髪の子供がいた。


 やや痩せた体躯の酷く青白い肌の子供だった。十歳くらいの女の子のようにも思えるが男の子だと言われてもおかしくない顔立ちだ。


 てか、何だか生意気そう。


 子供は愉快げに目を細めてこちらを見ていた。


「ケチャこんな仕事どうせすぐ終わるって思ってたんだ。けど、ちょっとだけ面白くなりそうだね♪」


 仕事?


 俺はその単語に引っかかりを憶えたが深く考える暇を与えてもらえなかった。


 蜘蛛(いや、ゲルズナーと呼んでいたな)が俺へと突進をかけてくる。


 速い。


 俺は迫りながら爪の攻撃を仕掛けてくるゲルズナーにラッシュで対抗した。拳の連撃が黒い光の帯を幾重も作る。


 硬い。


 いくら殴ってもダメージが通っている感じがしない。


 何なんだこの化け物は……。


 俺の中で「それ」が囁いた。


 怒れ。


 怒れ。


 怒れ。


 その声を無視して振り下ろされた爪をサイドステップで避ける。ぶわっと熱気が頬を撫でたが熱がる余裕はない。


 俺はぐっと拳を握り直してゲルズナーの頭を殴りつけた。一番前にある二つの目の真ん中ちょい上あたりだ。


 カキンと金属のような音を響かせて拳が弾かれる。硬い。黒い光のグローブがなかったらダメージを受けていたのは俺の方だったかもしれない。


 俺は拳を庇いつつ後ろへ飛び退いた。


 一瞬遅れてゲルズナーの爪が俺のいた場所を横払いする。あ、危ねえ。もうちょいタイミングがずれていたら食らってたぞ。


 ゲルズナーの口が開く。


 俺は防御結界を張った。今度は余裕でブレスをガードする。


 子供の声。


「すごいすごい、人間がゲルズナーとこんなに戦えるだなんて超すごいよ。ケチャもう大興奮だよ」


 こ、このガキ。


 馬鹿にされている気がして俺は無言で毒づく。


 子供が何者かはわからないが敵であることは疑いようもなかった。


 そしておそらくはこのゲルズナーを使役しているのはこいつだ。


 俺はそう判断を下すと一足で子供へと調薬した。


 死なない程度にぶん殴って大人しくさせてやる!


 俺の拳が正確に子供の鳩尾を狙った。ゲルズナーに邪魔させる隙など与えない。電光石火の早業だ。


「ねぇ」


 子供の声にはっとした。


 俺の拳が空振りしている。


 さっきまでいた子供の姿が消えていた。


「ケチャなんて放っておいてゲルズナーと戦ってよ。そういうつまんないことするのやめて」


 ぷんすか、という擬音を携えて子供が俺の真後ろに回り込んでいた。


 こいつ、どうやって……。


 驚いている暇はなかった。


 高温が肌をぴりぴりとさせる。


 俺は全力でジャンプして上空に逃れた。見下ろすと子供がまた別の位置に移動している。


 ビュン。


 高速で向かってきたゲルズナーの二本の爪がさっきまで俺のいた位置を左右から突いた。あまりの熱に空間が少し歪んで見える。おい、あの爪どんだけ熱くなってるんだよ。



 **



 ゲルズナーのブレスに盾代わりの小さな防御結界で対処する。無詠唱だ。


 怒りの精霊を身に宿している俺は呪文を唱えずに魔法を行使することができる。魔方陣も要らない。ビバ精霊。


 ブレスが効かないと判じたのかゲルズナーがその巨大な体躯を横回転させた。八本の脚をまるで円盤に取り付けた刃物のようにぶん回してくる。ただの刃物ではない。高温の爪のある刃物だ。


 いや、それもう刃物じゃないだろ。


 俺は自分で自分につっこみつつジャンプして攻撃を避けた。上空から見下ろすとゲルズナーの背中がガラ空きなのがわかる。


 でもなあ、あれ、硬そうなんだよなあ。


 ま、とりあえず殴ってみるか。


 決めて即座に行動する。


 落下する勢いも利用して俺はゲルズナーの背中に拳を叩き込む。


 ガチンと分厚い金属を打ち鳴らしたような衝撃音がした。


 素手だったら間違いなく俺の拳は砕けていただろう。黒い光のグローブに守られているおかげで実際に俺の受けたダメージはゼロに近かったが強い衝撃はあった。ちっ、やっぱり硬いか。


 こいつはちと骨が折れそうだ。


 俺は四方から伸びてきた爪を躱してゲルズナーの背中から降りた。


 ゲルズナーが体を回して頭をこちらに向ける。


 ガチガチと牙を鳴らして威嚇してきた。


 おや?


 背中に乗られて怒ったかな?


 その怒り、俺の中にいる「それ」にとってはご馳走なんだが。


 俺は拳を握り直した。


 ゲルズナーが八つある目を同時に光らせる。


 周囲の気温が上昇した。ゲルズナーから水分が蒸発するかのように白いもやが浮かんでくる。


 俺は防御結界を張った。今度は大きめ。これなら大抵の攻撃を防げる。


 子供の声。


「むう、そればっかりだとつまんなーい。ケチャそれ嫌ぁい」


 パチン、と誰かが指を鳴らした。というか誰かじゃなくて子供だな。


 パリーン。


 そんな擬音がしそうな割れ方をして結界が壊れた。


「げっ」


 ゲルズナーの口の奥が赤く光る。タメがある分凶悪なブレスが吐かれるであろうことは容易に想像できた。そんなもんノーガードで食らったら死ぬ。とてもじゃないが死ぬ。死なないなんて無理。


 くっ、こうなったら……。


 俺は即断してゲルズナーに突進した。


 接近すればするほど体感する熱さは酷くなっていたが構わず距離を詰めた。


 ま、近づかないと殴れないからな。


 二本の爪が襲ってくる。


 ステップを踏んでそれらを避けると目の前にゲルズナーの口があった。ここでブレスされたら絶対にアウトな位置だ。


 発射。


 その刹那。


「ウダァッ!」


 気合いの一声と共に俺は拳をゲルズナーの口にぶち込んだ。


 そして、拳を中心に防御結界を発動させる。サイズは小さくていい。ゲルズナーの口からブレスを出さなければオーケーだ。


 粘りのある液体をかき混ぜたような水音がした。


 八つの目から次々と煙りが上がり、やがてゲルズナーの頭部が膨張し始めた。


 ブレスが内側に逆流して炸裂したのだ。


 俺は口から拳を抜いて横へ跳ね飛ぶ。


 そのまま後ろに逃げて万が一にも二発目なんてことがあったら大変だからな。戦いに油断は禁物だ。


 ゲルズナーはドスンと音を立ててその場に崩れた。八つの目から光が失われていく。


 ……やったか?


 俺は身構えた姿勢で様子をうかがう。自分でもうまくいくか自信がなかったのでまだこの結果を疑っていた。


 ぱちぱちぱち。


 子供が愉快そうに拍手した。


「わあ、やるねぇ。ゲルズナーってかなり強いんだよ。人間なんかに勝てる相手じゃないのに勝っちゃうなんて凄い凄い」

「そいつはどうも」


 応えて俺は子供に向き直った。本当に仕留めたのかわからないのでゲルズナーへの警戒も怠らない。


 こいつ……ケチャとか言ったか。


「何者だ?」

「ケチャはケチャだよ」


 子供……ケチャは挑戦的な笑みを浮かべた。


「お兄さんゲルズナーを倒した人間だから特別に名前を教えてあげる。ケチャ、強い人間って好きだからね」

「……」


 いや、名前を知りたい訳じゃないんだが。


 俺は質問を変えた。


「なぜこの馬車を襲った? お前の受けた仕事とは何だ?」

「うーん」


 こてん、とケチャが首を横に傾けた。


 その仕草はちょい可愛い。


 こいつ女の子か?


 よし、女の子ってことにしておこう。


「なーんか勘違いしてるよね? ゲルズナーを一体倒したくらいで終わったつもりになってる?」

「……っ!」


 ケチャの左右に三つずつ魔方陣が現れた。


 緑色の光を放ちながら周囲に魔力を撒き散らしている。まるでその魔方陣から強大な存在が呼び出されるかのようだった。


 ケチャの口角が上がる。


「さあーて、第二ステージの始まりだよぉ♪」


 六つの魔方陣から影が出現し、ゆっくりと形を成していく。


 反射的に俺はその一つへと駆けた。


 黒い光のグローブが波打ち、どくんどくんと鼓動する。


 俺は「それ」へと流す魔力を増やしその力をさらに多く借りる。自分への負担というか狂戦士化のリスクが高まるのを承知で「それ」の声に耳を傾けた。


 怒れ。


 怒れ。


 怒れ。


 強烈な激情が身体を震わせる。


 その熱量に肉体が焼かれてしまいそうだった。無限に燃え盛るかのような怒りが俺の中でさらなる力を呼び醒まそうとしていた。


 俺は本能的に理解していた。


 この戦いは相当の覚悟をしてかからないと負ける。


 黒いグローブに変化が生じた。


 手の甲の部分に黒い宝石が現出したのだ。左右のグローブにそれぞれ一個ずつ。対を成すように生まれたその宝石はそれ自体が意思を持っているかのようにキラリと輝いた。


 魔方陣から何かが出てくる直前、俺はその何かを殴った。


 ガチン。


 先程戦ったときより強化されているはずの俺の一撃は金属質な音と共に弾かれた。


 くっ、硬い。


 この硬さは……。


 魔方陣から爪が伸び、俺は身を引いて回避する。この爪には憶えがあった。


 いや、予想していたと言うべきか。


 魔方陣から一体ずつゲルズナーが現れる。


 それらは最初ケチャと大差ない大きさだったのだが魔方陣から離れるとすぐに巨大サイズへと変じた。


 ……あの化け物が六体。


 思わずゴクリと唾を飲み込んでしまう。一体相手ならもう負ける気はしないが……同時に六体か。


 だが、やるしかない。


 俺は身構えた。


 視界の端でケチャがニヤニヤしている。楽しそうで何よりだなおい。


 後で吠え面かかせてやるからな。


 六体のゲルズナーがぐるりと俺を取り囲んだ。


 一対六、いやケチャも入れたら七か。


 いいぜ、やってやる。


 派手に躍ってやろうじゃないか。


 俺は言った。


「全部ブッ潰すッ!」


 ゲルズナーが一斉に飛びかかり、俺を狙ってくる。


「ライトニングスラッシュ!」


 突如、六体のゲルズナーが閃光に包まれた。


 次の瞬間には黒く炭化した化け物の亡骸へと変わっている。すげえ、一撃だ。


 俺は声の主に顔を向けた。相手はもちろんシュナだ。


 彼は聖剣ハースニールを横降りに抜き放っていた。表情がやたら険しい。それでもイケメンはイケメンなのだから何かずるい。


 うん、こいつをお嬢様に会わせるのだけは断固阻止しよう。あれでお嬢様はイケメン好きなところがあるしな。


 また攻略対象がどうのとおかしなことを口走られても困るし。


 オトメゲーって何だ?


 どこの国の言葉だ? でなければ何の種族の言葉だ?


 などと思っているとケチャが叫んだ。


「ラ・ムー! えっ、あれってラ・ムーだったの?」


 おや?


 妙にうろたえてるぞ。


「何だかやたらと強い魔力を感じていたんだけど、あれラ・ムーだったんだね。ケチャ、すっごい驚きだよぉ」

「……」


 俺はシュナの肩へと目を遣った。


 意識して「視る」とあのおばちゃん精霊がシュナの耳たぶを撫で撫でしながらめっちゃいい顔で微笑んでいた。


 俺に気づいたのかこちらに向かって親指を立ててくる。


「……」


 わぁ、やっぱこのおばちゃん精霊ってメンタル削るなぁ。


 視るんじゃなかった。


 それにしてもそうかぁ。


 あのおばちゃん精霊強いのかぁ。


 もちろんシュナのことを「ラ・ムー」と呼んだ可能性もなくはないがたぶんケチャの言ってる相手はあのおばちゃん精霊のことだろう。すんごい納得いかないけど。


 シュナが聖剣ハースニールを構え直した。


「何の話をしているのかさっぱりわからないけど君って悪い子だよね? モンスターで人を襲ったら駄目だって大人に教わらなかった?」

「教わってないよ」


 悪びれもせずケチャが返す。


「それにゲルズナーに殺される人間がいけないんでしょ。死にたくなかったらゲルズナーに勝てばいいじゃない。このお兄さんは勝てたよ」

「……」


 おい、俺を指差すな。


 あとお前の論理は乱暴過ぎるぞ。



 **



 シュナがさらに表情を険しくする。


 彼は聖剣ハースニールを構え直した。


「君、人の命を何だと思っているの? 僕は弱いから殺されてもいいって考えは好きじゃないな」

「でも弱い奴が死ぬのは自然の摂理だよね」


 ケチャの声は明るかったがやけに冷たい響きがした。


「あと、弱い人間ほど命がどうのってつまんないことを言うんだよね。ケチャ、そういう奴嫌ぁい」

「僕が弱い?」


 シュナが前傾姿勢をとる。


 空気がピリピリとしてきた。シュナを中心として小さな放電が生じていた。たぶん聖剣ハースニールだけでなくあのおばちゃん精霊の力も関係しているのだろう。


 挑発的な口調でケチャが言った。


「怒った? でも本当のことだよね。だってその証拠にラ・ムーやその剣に頼らないと何にもできないんだから」

「黙れっ!」


 シュナが吠え、ちらと俺を見遣った。


 あ、こいつやる気だ。


 察した俺がケチャから離れるより早くシュナが聖剣ハースニールを縦に振るった。


「サンダーブレードッ!」


 雷鳴を轟かせ一筋の稲妻が刀身から放たれてケチャを貫く。瞬きする暇すらない早業だ。


 きっとゲルズナー相手であれば確実に仕留められただろう。


 だが。


「ふふっ、やっぱりこんなもんかぁ♪」


 ケチャは雷撃を食らっていたはずだ。


 なのに、まだ生きていた。それどころか無傷だ。緑色のローブも焦げ目一つついていない。


「ラ・ムーがいたのには吃驚したけど」


 ケチャがゆっくりと片手を上げた。


 人差し指を立て、くるりと一回転させる。軌跡を追うように緑色の光が円を描き何かの印となった。


「一緒にいるのが大したことない奴なら問題ないね」

「……シュナ、避けろっ!」


 俺は叫んだが、シュナの反応が遅れた。


 ケチャの正面に素早く形成された魔方陣から触手のようなものが伸びてくる。先端には鋭く高熱を発する爪。ゲルズナーのそれを連想させるが実物は遥かに凶悪だ。


 その爪がシュナを狙う。


 刹那。


 シュナの前に電撃が放出された。


 雷の幕を張ったかのように電撃はぐるりとシュナを包み込む。魔法の防御結界に似ているな。


 うん、これは雷の結界だ。でもってあのおばちゃん精霊の仕業。そういうことにしよう。


 触手の攻撃は雷の結界に阻まれた。


 攻撃を防がれたケチャが愉快そうに告げる。


「わぁーい、ラ・ムーはやっぱりすごいねぇ♪ ケチャ、これでも手加減無しでやったんだけどなぁ」


 やっぱあのおばちゃん精霊かよ。


「さっきから何なんだい? そのラ・ムーって?」


 自分の意思と無関係に雷の結界が張られたからだろう、シュナが戸惑いを隠せずにいた。


 俺はおばちゃん精霊のことを教えるべきかとも迷ったが、やめた。それを教えてシュナが精霊の姿を見たがったら面倒なことになるのは明らかだからだ。というかあの姿を目にしたらショックを受けるんじゃないか?


 寝込まれても困るしなぁ。絶対にイアナ嬢にも説明を求められるだろうし。


「案外鈍いんだね。ラ・ムーの存在にも気づかないなんて」


 ケチャが嘲るように笑み、指を二回転させた。


 いくつもの魔方陣が同時に周囲に現れる。数が多い。これ、どれだけの魔力で構築しているんだ?


「もういいや、ラ・ムーもろとも消えちゃえ♪」


 一斉に魔方陣から触手が伸びる。


 百は下らない数の触手が獰猛な獣のようにシュナを襲った。全ての触手が爪を有し、全ての爪が高熱を発している。


 その熱量は離れた位置にいる俺が熱さを感じるくらい凄まじかった。あれはかなりきつい。俺なら白旗を上げたくなるレベルだ。


 しかし、シュナは怯むことなく聖剣ハースニールを振るう。


「ライトニングスウィング!」


 剣先の軌道に合わせて電撃が雷の結界から放出される。おいおい、その雷の結界って今初めて使ってるんじゃないのか? 何使いこなしてるんだよ。


 あれか?


 剣士の本能か?


 シュナの肩の上のおばちゃん精霊がよりはっきりと見えた。


 すっげぇいい顔してる。


 彼女が腕を横振りすると電撃の数が倍増した。これでもかってくらい協力で容赦のない雷の矢だ。あんなの浴びせられたら俺なら死ぬ。たとえ怒りの精霊の力を借りてても死ぬ。規格外過ぎるだろあれは。


 中空で触手の爪と雷の矢が相殺された。無数の爆音がしたが爆煙が立つ訳でもなく爆風雅ある訳でもなくただ消滅するのみだ。これはあれか、ご都合主義ウェポンの影響もあるのか? マジで何でもありだな。


「まだだっ!」


 シュナが雷の結界を解除して飛び上がる。おばちゃん精霊の力もあってか常人より遥かに高くジャンプした彼はケチャに突き刺さんばかりの姿勢で落下した。


「サンダーフォール!」

「……」


 それにしても技の名前多いな。


 あれか、こういうのをチュウニって言うのか。王都にいた頃にお嬢様から聞いたことがあるぞ。


 シュナの攻撃がケチャを襲う。


 ケチャが肉眼で視認できるレベルの防御結界を張った。あれだけの強さだと生半可な威力では通じない。


 だが。


 シュナの聖剣ハースニールはいとも容易くその防御結界を砕いた。そのままケチャの右腕を切り落とす。おしい、避けられなければ頭から一刀両断だったのに。


 着地したシュナはすぐさまバックステップで距離を取り直した。大技を繰り出して消耗したらしいシュナが肩で息をしている。


 ケチャは信じられないものを見るような目で肘から先のない自分の右腕を見つめていた。


 やがて、その口が大きく歪む。


 そこに怒りはなかった。


「いいね、これすごく良いよ♪」


 一瞬で肉が盛り上がり右腕が再生した。


 ……っておい。


 肉体の再生を無詠唱でやりやがったぞ。


「化け物め」


 息を斬らせつつシュナが毒づく。俺も激しく同意だ。


「化け物とは酷いなぁ」


 クククと笑いケチャは目を細めた。その瞳が妖しく赤く光ったように見えたのは気のせいだろうか?


「高い魔力と技術があれば身体の再生くらい余裕でしょ? それとも人間ってそんな程度のことすらできないの?」

「……」


 うん。


 こいつ化け物だ。


 俺が再認識していると息を整えたシュナがまた構えをとった。横振りの姿勢。あのゲルズナーたちを一瞬で消し炭にした技を放つつもりだな。


 ケチャがにいっと笑みを広げる。


「ケチャにそれは通じないと思うけど? あ、それとももう他の攻撃手段がないのかなぁ?」


 シュナが眉をひそめる。


 彼は聖剣ハースニールを振るった。


「ライトニングスラッシュ!」


 ケチャが閃光に包まれる。


 さらに。


 シュナが聖剣ハースニールの切っ先をケチャに向けた。一歩で距離を詰める。これは「突き」だ。しかもバチバチと音を鳴らしながら刀身がスパークしている。


「ライトニングファングッ!」


 おおっ、これにも技の名前があるのか。


 こうなってくると他の技も見たくなるぞ。


 ……とか思いつつ俺もケチャへと突進した。


 シュナの攻撃の邪魔にならぬよう配慮するのは無しだ。チャンスがあるならそのタイミングで仕掛ける。その何が悪い。


 両拳が黒い輝きを増す。手の甲に浮かんだ黒い宝石が意思を持つようにキラリと光った。


 俺の中で「それ」が囁いてくる。


 怒れ。


 怒れ。


 怒れ。


 どくんどくんと黒い光のグローブが脈打つ。


 シュナが聖剣ハースニールをケチャの胸に突き立て、俺は横から頭を殴った。側頭部への攻撃に手応えを感じる。


 やったか?


 そう思った次の瞬間、俺とシュナは空中に放り投げられた。


 え?


 驚きのあまり受け身も取れずに落下した俺たちをケチャが嗤った。


「勝ったと思った? ね、思った?」

「……」


 駄目だ。


 俺の中から希望が失われた。ボキリと心が折れた気がする。


 それでも「それ」は俺に囁き続けた。むしろこれまで以上に激しく煽ってきている。


 怒れ。


 怒れ。


 怒れ。


 俺の身体から黒いオーラが溢れてきた。闇よりも暗い深淵の黒だ。


 俺はそれが怒りの精霊のせいだとわかっていた。ずっと昔、俺が「それ」を身に宿したときに見ていたからだ。


 内なる声が大きくなる。


 怒れ!


 怒れ!


 怒れ!


 無理矢理魔力を吸われるような感覚がして俺はぎょっとした。これはやばい。


 宿主の俺の危機を察した「それ」が暴走しかけていた。


 おい、俺はまだ狂戦士になるつもりはないぞ。


 ケチャの声。


「えっ?」


 それに反応してケチャを見るとさっきまでとは明らかに異なる彼女がいた。


 笑みが消えている。


「何それ、ひょっとしてヒューリー? えっ、ケチャあのヒューリーと戦っていたの?」

「……」


 ケチャは俺に向いていた。顔を青ざめている。元々顔色の悪かった彼女は真っ青になって別人のようにびくついていた。


「どどどどうしてヒューリーまで? ケチャ、こんなの聞いてないんだけど」


 あまりの豹変ぶりに俺まで戸惑っているとケチャがパチンと指を鳴らした。


「ランバダに文句を言ってやるッ!」


 その言葉を最後にケチャは緑色の魔方陣に飲まれるように消えた。



 **



 ケチャが姿を消し、俺の危機が去ったと判じたのか「それ」の暴走は収まった。


 俺とシュナは馬車へ戻り襲撃について簡単に説明すると持てるだけの荷物を持それ以外を馬車に残すよう指示した。


 こうなってくると雷光石を見つけられなかったのはかえって良かったのかもしれない。どう考えても荷物にしかならないからな。それにオロシーが絶対に運ぶとかごねただろうし。


 次の襲撃を警戒して御者と馬の死体はそのままにした。きちんと葬ってやれなかったことが心残りだがやむなしだ。


 御者と馬は殺られたが馬車事態は無傷だった。


 おそらくあのおばちゃん精霊がシュナを守るために何かの結界を張ったんだと思う。シュナとケチャの戦いを見た限り、おばちゃん精霊もなかなかにご都合主義な存在だと判じられる。


 ただ、シュナを守ろうとするあまり範囲が限定的になってしまった。そのため、御者や二頭の馬は犠牲になったのだろう。精霊にそこまで期待しろというのが酷かもしれないが。


 御者の代わりなら俺でもできる。しかし、さすがに馬の代わりは勘弁してもらいたい。他の面々も馬車を引こうなどという強者ではなく、結局歩いてノーゼアに向かうこととなった。


 足取りは重かった。


「ああもう駄目だ。足が痛くて堪らない。どうしてこんな目に遭うんだ。あれか? メラニア様こそが次の聖女に相応しいとガタキバイショー伯爵の阿呆が言ったときに聖女ならすでにグランデ伯爵のご令嬢が継ぐと思われますよってつっこんでしまったのがいけなかったのか? それとも晩餐会の場でカール王子にミリアリア様のような美しい方よりメラニア様のような愛嬌のある方がお似合いですって言ったのがまずかったのか? あれ、褒めたんだぞ。美人より愛嬌のある方がいいじゃないか。美人なんて結婚しても三日で飽きるんだぞ。何でわかってくれないんだ」

「……」


 なお、オロシーだけは手ぶらで歩いている。他の乗客たちの物言いたげな視線に気づく様子もない。図太いな。


「アーデス様もどうかしているんだ。娘を王族に嫁がせてアーデス家は安泰だっていうのに何でわざわざライドナウ公爵に喧嘩を売る必要がある。あんな娘を婚約破棄されるような連中なんて放っておけばいいじゃないか。どうせ自滅して落ちぶれるに決まってる。メラニア様だってあそこまで目の敵にすることもないんだよ。女としてはすでに十分勝ってるんだからさ」


 オロシーの不平が止まることなく続いて鬱陶しいことこの上ない。


 あと、つっこみどころが多くて困るのだが。


 あ、うん。もちろんスルーしますよ。面倒くさいし。


 ……てか、こいつを始末するためにケチャを寄越したってことはないだろうな。


 おいおい、オロシー程度にケチャとかやめてくれよ。どう考えても過剰戦力だぞ。


 *


 ノーゼアに到着したのは夜遅くになってからだった。


 門を守る警備兵に襲撃の件を話す。これで誰か御者と馬のもとに行ってくれるだろう。ギルドに報告はするが街道でモンスターに襲われたとあれば騎士団も動かざるを得まい。


 オロシーの泊まる宿の傍まで来るとうんざりしたように彼は言った。


「もう嫌だ。雷光石は見つからないし(そもそも探した場所が悪い)、モンスターに馬車を壊されるし(壊されてない)、ずーっと歩かされるし(こいつがすぐ休みたがるせいで余計に時間がかかった)。これだから辺境の地って嫌いなんだ。こんなところ来るんじゃなかった」

「オロシー様、お疲れですし今日はもう宿で休みましょう」

「そうです。また明日探索をし直すということで……」

「……」


 愚痴を零したオロシーを双子が宥める。


 だが、オロシーはそれには応えずふるふると首を振った。


「帰る。こんなのやってられるか。くっ、自前で雷光石を手に入れられたら経費も浮くと思ったのに」


 ぺっ、と道に唾を吐き捨てるとオロシーが宿の入り口へと歩き出した。


 慌てて双子が追いかける。そういや結局どっちがどっちだか見分けがつかなかったな。


「こんなところ一日だって居られるものか。明日朝イチで王都に帰るぞ。お前らも支度を済ませておけ」

「オロシー様、もう少し頑張りましょう」

「せめて一個くらいは持ち帰らないと……」


 帰る気満々の主を説得しようと双子が食い下がるが、あれは無理だろうなぁ。


 労いも挨拶もないまま三人が宿の奥に消えるとどっと疲れが押し寄せてきた。


 イアナ嬢も同じだったようで深いため息をつく。


「ま、一応護衛クエストは果たせたのよね?」

「そうだと思うが」


 まさか雷光石を入手できなかったから依頼達成とは認めないとか言い出さないだろうな。あくまでも俺たちの任務はオロシーの護衛だぞ。


「彼の態度から推察すると雷光石を採取できなかったから報酬を減らすって言い出しかねないけどね。ま、それにしても明日までは大人しくしてくれると思うよ」


 シュナが何やら不穏なことを口にしているが俺も構う余裕がないのでスルーした。面倒事はとにかく明日まで考えないようにしよう。


 とっとと銀の鈴亭に帰って休みたい。


 あーあ、でもギルドへの報告は早い方が良いよなぁ。


「グランデ伯爵令嬢とジェイは宿に戻っていいよ。ギルドには僕が行くから」

「……ッ!」


 ワォ。


 シュナ、お前何ていい奴なんだ。


 心の中で彼を讃えているとイアナ嬢がぽつりと漏らした。


「あたしかもしれないわね」

「えっ?」


 俺が聞き返すと彼女は一度目を瞑り、自分を納得させるようにうなずいてからまた目を開いた。


「ケチャ、だっけ? その子が襲ってきた理由。それとあたしたちにあんなくだらない指名依頼が来た理由。たぶん二つは繋がっているわ。ううん、あたしがノーゼアに来た理由も合わせると三つになるのかしら?」

「どういうことだ?」

「ジェイ、つまりあたしが狙われたってことよ」


 *


 デイブの店に場を移した。


 酔い潰れた客が何人かテーブル席でぐーすかやっていたがそいつらは無視することにする。デイブは信用できる相手だし他の雇い人も口外はしないだろう。もちろん口止め料もたんまり渡してあるしな。


 右からシュナ・俺・イアナ嬢の順にカウンター席についていた。それぞれの目の前にはエールと軽く摘まめる物が人数分並んでいる。


 俺はその中にあるこんもりと盛られた一皿を眺めた。


 この薄くスライスした芋を油で揚げた物は新メニューか? 程良く塩がかかっていて見た目だけでもえらく食欲を誘うのだが。


「ああ、そのポテチはこないだブラザーラモスが清めの儀式に来てくれたときに一緒にいた人から教わったんだよ」


 俺がその料理に興味を示したことを察したのか、訊いてもいないのにデイブが説明しだした。


 ちなみに飲食、特に肉料理を取り扱う店は一定の期間ごとに清めの儀式を行うのが一般的だ。食料にされる動物や魔物たちの魂を鎮めるためとか人が肉を食らう場所には不浄が溜まりやすいからとか諸説あるが、大方教会の資金集めのためだろうと俺は踏んでいる。


「ええっと、誰だったかな? すげえ俺好みの美人なシスターでシスターエミなんとかっていう人が……」

「よしわかった。もう黙れ。あと、そのシスターのことは記憶から消せ。お嬢様が汚れる」

「ジェイ、ストップ。店主に殺気を放っちゃ駄目だよ」


 俺がデイブを睨むとシュナが止めに入った。何故だ。


 ちょい変な空気になってしまったが俺はコホンと咳払いをして仕切り直した。


「で? 何故イアナ嬢が狙われてるんだ?」

「あたしが次代の聖女だからよ」


 イアナ嬢が即答し、ポテチに手を伸ばした。


 おい、折角真面目な話をしようとしているんだから横道に逸れる原因物質に手を出すんじゃない。


 塩味のついたそれを一口囓るとイアナ嬢が目をかっと見開く。


 何かに取り憑かれたように彼女はポテチを食べまくった。バリボリという音が妙に美味そうに聞こえる。てか、それ一皿全部一気食いするんじゃないだろうな? 一人前にしては結構量があるぞ。


「わぁ、ストップストップ! グランデ家のご令嬢がそんながっついたら駄目だよ」


 シュナの言葉にイアナ嬢はぴたりと手を止めた。


 口はモグモグさせてるけど。


 彼女はフフンと鼻を高くした。


「あら、今のあたしは冒険者の僧侶のイアナよ(ごっくん)。グランデ家は関係ないわ」

「……」


 こいつ、話してる途中で飲み込みやがった。


 行儀悪過ぎだろ。


 ほら、シュナがショックで呆けてるじゃないか。



 **



 ポテチのことは脇に置いて俺は再度訊いた。


「どうしてイアナ嬢が次代の聖女だと狙われるんだ?」


 イアナ嬢は最後の一欠片を指で摘まむと名残惜しそうにそれを見つめた。


「だって、それだとメラニアが聖女になれないでしょ?」

「……」


 またあの女か。


 きっと俺は酷く険しい顔をしていたのだろう。


 イアナ嬢が少しおどけた口調で付け加えた。


「一応言っておくけど聖女ってなりたいからなれるもんじゃないのよ。きちんとした信仰心と人々の信頼、そして何より神のご加護がないといけないの。あの女にそんなものがあると思う?」

「ないな」

「でしょ。だから本当ならあの女が聖女とか有り得ないのよ。少なくとも以前の教会なら相手にもしなかったでしょうね」

「なら、どうしてグランデ伯爵令嬢が狙われるんだい?」


 と、シュナ。


 話すときは口の中を空にしたようだがこちらもえらいペースでポテチを食べている。どうやら一口食べてみて填まったようだ。


 つーか、お前もかい。


 俺は小さく嘆息し、自分の前のポテチを一枚手に取った。


「単純にイアナ嬢が邪魔だからってのはあるだろうな。なりたいといってなれるものでないにしても候補者は他にいないに超したことはないだろ? ましてメラニアなら何かしらの方法で聖女の力を得るかもしれない。そうなればもう大威張りで聖女認定の儀式を受けるだろうよ」


 言い終えてからパクリ。


 うむ。サクッとした食感が素晴らしいな。塩加減もいい塩梅だ。デイブの力量が光ってるぞ。


 次また次とポテチに手を伸ばしたい気持ちを抑えて俺はエールを飲んだ。


 口の中の塩分と油分を洗い流してさっぱりする。


 それからまたポテチを食べた。なるほど、これはやばい食い物だ。いくらでもいける。


「あと、メラニアが学園でカール王子たちを取り巻きにしたように協会関係者、それも聖女選定や認定に関わるような奴らを取り込んでしまう恐れもある。そうなったらどうだ? 聖女の地位をメラニアが望めば取り巻き連中がそれを叶えようとするかもしれない」

「むう」


 イアナ嬢が憮然とした面持ちでポテチのあった皿を見つめた。うっすらと油の残った皿は厨房とホールを照らす照明用魔道具の明かりで鈍く光っている。


 ちなみに室内を照らす程度の照明用魔道具は比較的安価で出回っている。これは二年前から急激に製造方法が広まったからで、実はお嬢様の居る教会が発信源だった。


 旧来の照明用魔道具はその構造も複雑で必要とする魔力も大きく燃費も悪かったのだが新しい照明用魔道具は単純かつ低燃費となっていた。ついでに魔道具のサイズも二回り以上小さくなっている。


 その秘密は内部に描いた魔方陣にある、と以前製作者のお嬢様が教えてくれた。


 ……のだが、あまりそういうことを吹聴しても彼女のためにならないと思うのでとりあえず俺は効かなかったことにしている。


 どこにでも金の匂いを嗅ぎつけて近寄ってくる輩はいるからな。


 てか、俺のお嬢様ってマジ天使。


 えっ、天才の間違えじゃないかって? じゃあ、そっちでもいいや。


「……その、あれよ」


 諦めたように空の皿を自分から俺の方に押しやるとイアナ嬢は根菜の煮物にフォークを刺した。この店ではよく出る一品で、ニンジンを鶏ガラのスープと塩バターで煮込んだ物だ。


「父の派閥の人も含めて相当数の人間があの女を聖女候補者に加えるべきだって言い出したの」

「……」


 おおっと、予想的中かい。


 俺は何となく可哀想になって自分の皿から半分くらいの量のポテチを彼女の皿に移した。


 あと、イアナ嬢のポテチを食べまくる姿を見ているのは楽しい。お嬢様にもぜひ見て頂きたいものだ。


 イアナ嬢が驚いたように復活したポテチの皿と俺を交互に見て、それから表情をぱあっと明るくさせる。


 えっ、いいの?


 これ、いいの?


 もらっちゃうわよ?


 遠慮なんて、しないんだからね!


「……」


 おおっ、凄いな。


 一言も発してないのにイアナ嬢が何を考えているか手に取るようにわかるぞ。


「ジェイ、僕には?」

「男を甘やかす趣味はない。他を当たれ」

「いや、他なんてないんだけど」

「良ければもっと作ってやるぞ」


 しゅんとなったシュナを見かねたのか、カウンターの向こうでデイブが言った。


 にっこり。


「もちろん、追加注文になるがな」


 *


 結局、全員ポテチを追加注文した。


「最初、カール王子の付き添いって形であの女は教会に来たの」


 振り返ってみればそれがメラニアの浸蝕の始まりだったのかもしれない。


 訪問の回数を重ねる毎に教会の内部はおかしくなった。上の空で作業をする者。口を開けばメラニアの名を出す者。第一王子の妃の話を耳にしない日は無く、神を讃えるようにメラニアを讃える者が続出した。


「メラニア妃を新しい聖女候補に」


 という声が教会内で高まるのに時間はかからなかった。


 そして、ゆっくりとイアナ嬢の立場は悪化していく。


 中の良かった僧侶は地方に送られ、イアナ嬢とはそりの合わない者が周囲に残された。


 比較的緩やかな雰囲気だった教会の中は急に締め付けが厳しくなり、規則に違反した者は神の名の下に処罰された。


 その澱んで息苦しくなった教会の中にメラニアという風が吹き抜けた。


 彼女は王命を理由に教会の改革に乗り出した。問題となった者たちと個別に面談し改心させるとこれまでにない画期的な事務処理方法と運営方針を提示した。それにより教会はそれまで煩雑で無駄も多かった作業内容が一新され、旧来よりも著しく成長することができた。信者数も利益も大幅に増えたのである。


 アーデス男爵の養子となるまでメラニアはただの平民だった。


 しかし、彼女は第一王子の妃となり、さらには教会の改革の立役者となってしまった。


「で、あたしはなーんもしなかった次代の聖女とか言われちゃったの」


 自嘲気味にそう告白するとイアナ嬢はポテチを数枚まとめて口に放り込んだ。


 バリボリ。


 俺は信じられない気分で彼女を見つめた。


 え?


 メラニアが教会を改革?


 えっ、だってノーゼアの教会にそんな話来てないよ?


 それとも俺、単に聞かされてないだけ?


 ま、まあ、俺って教会に出入りしているけど別に教会側の人間じゃないからなぁ。


 わぁ、凹むうっ。


 肩をがっくりとさせているとシュナが質問した。


「それでグランデ伯爵令嬢はなぜノーゼアに? 今の話だとここに来た理由と繋がらないよね?」

「ここに来た直接的な理由はあなたと同じよ。カール王子の命令。でも王子にそれをさせたのはあの女ね」


 そして、王都から遠く離れた北の辺境で襲撃して亡き者としようとしたのか。


 俺は内心で納得した。ついでにオロシーたちはクエストを受注させるための道具だったのだろう。イアナ嬢がいる俺たちのパーティーが指名されたのも彼女一人を狙わなかったのも全て次代の聖女を秘密裏に抹殺するためだ。クエスト中にモンスターに襲われて死んだとなれば下手するとやむを得ないことで済まされてしまうかもしれない。


 まあ、おまけでオロシーも片付けようって腹だったのかもしれないが。あれ、メラニアにとっても邪魔そうだしなあ。いつ足を引っ張られるかわからんし。


 ケチャを送り込んだのはイアナ嬢の実力を侮っていなかったからか。そこらの奴らだと返り討ちにされそうだしな。結界の力も強いし、腰にぶら下げたメイスもお飾りって訳でもないだろうし。


 たまたまパーティーを組んだ俺とシュナが前衛だっただけで彼女なら僧兵(モンク)としてもやっていけるんじゃないか? まぁ、まだ実践での接近戦を見たことないけど。


 ほら、イアナ嬢の印象的に強そうじゃん?


「……」


 何かを察したのかイアナ嬢がギロリと俺を睨んだ。


 いや、そういうところだぞ。


 *


「とまあ、あたしの話はこんなもんね」


 イアナ嬢は締め括るようにそう言うとエールを傾けた。


「となるとあのケチャとかいう子供を差し向けたのってメラニア妃ってことになるのかな?」


 シュナがようやく煮物に手を付け始めた。こいつポテチばっかり食ってたからなぁ。


「そうだと思う。ただ、どこであんな化け物を見つけたのかは謎だな。王都の魔道士師団でもあれだけの奴がいるかどうか……」

「それ、恐いんだけど。その子が王都を襲うような事態にならないことを祈るわ」

「おや、グランデ伯爵令嬢は優しいんだね。王都にはメラニア妃もいるんだよ?」

「あたしが心配しているのは市井の人たちよ。何の罪もないのに巻き込まれたら可哀想でしょ」

「お、ちょっと聖女っぽいな」


 俺が感心すると足を蹴られた。何故だ。

 

 

 


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