① ツマイチノヒメニノヒメオット
左大臣に就きしはイチノヒメ
右大臣と成りしはニノヒメ
大納言は在りませぬ
そしてオットは中納言に任くられました
中庭のサバキ様からのお達しでございます
果て、勿論でございます
世の屋の摂政はツマでございます
序列を申し上げますると、
摂政 ツマ
左大臣 イチノヒメ
右大臣 ニノヒメ
大納言 -
中納言 オット
これが世の屋の並びとなっております
この令和の時代におきまして、
ツマの権勢は凄まじく逆らう者はおりませぬ
また、両左右には姫君等が次の世でその偉力を襲業しようと、威風堂々と座しております
さりながら、
時の移りと共にその勢威も移ろいますから、
10年前はこのようでした
関白 オット
中納言 ツマ
従四位 イチノヒメ
正七位 ニノヒメ
随分と世の屋は変わりました
関白であったオットの威光は眩きを失い、今は上位に構える姫君へも御機嫌を損なわぬよう、注意深くお声掛けせざるを得ない有り様でございます
勿論、任命権を有する中庭に御坐すサバキ様も時の盛衰を見極めた上で位を任じますから、権勢の興隆が変化しましたら、また序列であり並びも変わるでしょう
新たな位もできるでしょうか
嘗て類を見ないほどの力を持すること叶いし折には、
摂白でしょうか
それとも
関政が相応しいでしょうか
・・・・
さて、
バリウムという鉱石がありますが、
硫酸バリウムの粉末に硫酸ナトリウム水溶液を混ぜた物
これが皆さまの健康を確かめる為に使用されますアレのようです
年増を過ぎた、ああ失礼、過ぎし若き昭和様平成様はこの物質を腹に納めたことがあるのではないでしょうか
はて、
我が世の屋の庭にパリプルという石がございます
なんと、オットはこの物質の効力を発見しました
パリプルの粉末をミルクに溶かして、腹に納める
満月の夜、月明かりがその人間の腹の内を表わすというのです
悪巧みをして入れば黒い腹
恋をしていれば赤い腹
澄み切っておれば青い腹
情緒が凪の如し緑の腹
純粋な白い腹
腹痛の黄の腹
慣用句に"腹の内を探る"とありますが、
探る必要もなく、腹の内が目に見えて確認できるのです
このパリプルの石と共にオットは返り咲きを、
腹に決めています