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容姿端麗声完璧な私ですが、生活能力はポンコツでした。  作者: 髙橋ルイ
第4章恋人って、毎日が全部“特別”――!?
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第99話:それでも、ただいまと言えたなら

「……ただいま」


玄関に立つと、つい口からこぼれていた。


東京へ向かった玲奈が戻ってくるまで、あと数日。

だが、彼女がいないだけで、部屋の空気はまるで違っていた。


「うーす、勝手に上がったぞ~」


美桜が当然のように靴を脱いで入ってくる。手にはコンビニの袋。


「なに、飯も作らずにションボリしてるんだか。玲奈、留守だぞ?」


「……いや、別にションボリはしてない」


「じゃあ、なんで“ただいま”って言ったの?」


「……いや、それは」


言いかけて黙る。

どんなに否定しても、この家で玲奈がいないのは、ぽっかりと穴が空いたようだった。


「ま、分かるけどな。あの子、帰ってくるか不安だったんだろ?」


「……違う」


そう答えたが、嘘だった。

玲奈は――あの日、自分の足で東京へ行くと決めた。


けれど、その決意の裏に、ほんの少しの不安があることも、見抜けていた。


「……あいつ、強くなったよな」


「ふーん? それを言うなら悠真の方じゃない?」


「え?」


「玲奈がいない間に、ちゃんと“迎える準備”してるじゃん。ほら、ゴミも捨ててあるし」


「……当たり前だろ」


照れ隠しにそう言ったが、確かに今日はいつもより少しだけ掃除を頑張っていた。

――玲奈が、帰ってくるその時のために。


「ところで、玲奈の部屋って……まだあるの?」


「あるけど」


「じゃあ、帰ってきたらまた、ここで暮らすの?」


その言葉に、答えが詰まった。


「……どうかな。玲奈が、どう思ってるか次第じゃないか」


「ふーん……だったら、わたしが言っておくよ」


美桜は笑いながら言った。


「“おかえり”って。悠真のかわりにね」


「……ああ。でも」


俺は、拳を握る。


今度こそ――。


「次は、ちゃんと自分の口で言うよ。“おかえり”って」


遠く、夕日が差し込む。

そして、窓の外に、一台のタクシーが止まる音がした。

______________________________________




最後までお読みいただきありがとうございました。

互いに離れても、どこかでつながっていた二人。

そして、再び動き出す時間。

これまでの積み重ねが、ついに「今」に返ってくる。


次回、最終話――「ポンコツでも、好きでいてくれますか?」

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