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容姿端麗声完璧な私ですが、生活能力はポンコツでした。  作者: 髙橋ルイ
第4章恋人って、毎日が全部“特別”――!?
100/100

第100話:ポンコツでも、好きでいてくれますか?

玄関のドアが、ゆっくりと開いた。


「……ただいま、です」


玲奈の声が、ほんの少しだけ震えていた。


でもその瞳は、まっすぐに悠真を見つめていた。

彼女の髪は、いつもより少し風に乱れていたけど――その表情には迷いがなかった。


「おかえり」


悠真は、まっすぐに言葉を返した。

それだけで、胸の奥がいっぱいになる。


「……ん。あの、帰ってきました。えっと……また、ここに住んでもいいでしょうか?」


「なに言ってんだよ。玲奈の場所は、最初からずっとここだろ」


玲奈の目に、涙がにじんだ。


「……そっか。よかった。迷惑じゃなかった、ですか?」


「迷惑だったら、部屋のゴミ捨てたりしねーよ」


玲奈はクスッと笑って、そしてふいに、頬を染めた。


「……あの」


彼女は両手で自分のスカートの裾をぎゅっと掴んだまま、顔を上げる。


「わたし、少しだけ……変わったと思います。前よりも、自分でできることが増えたし、

東京でもいろいろな人と話して、自分のダメなところも、少しだけ認められるようになりました」


「うん」


「でも、全部できるようになったわけじゃなくて……まだ、失敗するかもしれなくて……それでも」


深く息を吸って、彼女は言った。


「それでも、わたし――あなたのことが、好きです」


それは、まっすぐな告白。

あの日の夜、ふたりの距離が近づいたあの浜辺よりもずっと、強く、確かな想い。


「……俺も」


悠真は、玲奈の頭に手を伸ばす。


「生活能力ゼロで、すぐ迷子になって、スマホもまともに扱えないポンコツでも……ずっと好きだったよ」


玲奈の目から、大粒の涙がこぼれた。


「……バカです。そんなこと言われたら……また泣いちゃうじゃないですか」


「泣いていいよ。家、もうここなんだから」


「……じゃあ、泣きます。あと、ちょっとだけ……」


玲奈は、悠真の胸にそっと額をあずけた。

彼の手が、優しく彼女の頭を撫でる。


波の音も、風の音も、静かに鳴り続けていた。


玲奈が泣き止むまで、悠真はずっとその頭を撫でていた。

強がらず、素直に泣ける彼女が、今ここにいる――

それがただ、嬉しかった。


しばらくして、玲奈はようやく顔を上げた。


「……あの」


「ん?」


「やっぱり、帰ってくるって言ったら……掃除、してくれてたんですね」


玲奈が部屋の隅を指差す。

テーブルの上には、玲奈の好きなお菓子と、温かい麦茶が置かれていた。


「ま、まあな。……ちょっとくらいマシにしておかないと、また“ポンコツ同士”って言われかねねーし」


「ふふ……言いませんよ。今の悠真くん、ちゃんとしてます」


玲奈は笑ったあと、ちょこんとテーブルについた。

そして――お菓子の袋を開けた瞬間。


「……これ、わたしが東京でハマったやつ……!」


「え、マジで? 適当に選んだんだけど」


「もうっ……運命ですね」


玲奈が口を膨らませながら笑って、悠真の方へそっと寄り添う。


「――これからは、ふたりでちゃんと生活、していきたいです」


「一緒に?」


「はい。失敗もたぶんいっぱいすると思うけど……

でも、前よりはちゃんと、自分でやってみたいなって思えるようになったから」


悠真は、玲奈の頭をもう一度なでた。

それはもう、あの日の“仕方ないな”の撫で方じゃない。


「俺も、ちゃんと支えるよ。ポンコツでも、玲奈がいい」


「……うれしい」


――そして。


「……じゃあ、最初の家事は……一緒に、お風呂掃除からお願いしますっ」


「え、おい! 帰って早々それかよ!?」


「だってぇ……お風呂、久しぶりにふたりで入りたいなって思って……」


「バカ! そういうのはまず掃除してから……って、え、今なんて?」


「ふふっ♪ 内緒ですっ」


玲奈がいたずらっぽく笑って、逃げるように洗面所へと走り出す。


悠真は少し赤くなりながら、それでも立ち上がってあとを追った。


部屋には、いつもの日常が、また戻ってきていた。


でもそれは、もう“前と同じ”ではない。

ちゃんと進んだ、ふたりの新しい一歩だった。

______________________________________






最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


玲奈と悠真の物語は、今日ここで一区切りを迎えます。

たくさんの失敗とすれ違いの中で、それでも「好き」が交差した二人。

そして、この日常の先に、きっとまた続いていく未来があると信じて。


この作品を、ここまで読んでくださったあなたに――心からの感謝を込めて。


これにて――完結。

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