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魔王は悪魔を喰らって再臨する  作者: 増田 サトシ
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魔王 冒険者になる

―アンヘラ公国—


三大都市の一つ。アンヘラ公国首都、キーテンに魔王の影が潜んでいた。


「冒険者の情報を知りたい??無理無理、ここでは冒険者のみを対象として活動してんだ。アンタみたいな姿をマントで隠すような怪しい輩に渡す情報なんてないさ」


冒険者ギルドの受付嬢がフードで顔を隠す男を指さす。


「そもそもアンタ、誰?ここが何処か分かってる??冒険者以外の人間は依頼でしか来れないの!分かったらとっとと帰んなさい」


「………………。分かった。その冒険者になるにはどうすればいい??」


フードの男が口を開いた。


「どうすればいいって、、、」


ちらりと男の顔を見て目を逸らす。


「分かったよ、、冒険者ギルドの加入方法を教えりゃいいんだろ。まずこの紙に名前を記入して、アタシに提出する。そしてこの紙をギルドのお偉いさんに渡して許可が出ればアンタに冒険者ギルドへの加入試験を受ける権利が与えられる。その試験で受かれば無事一人の冒険者となる」


「そうか、、じゃあこの紙を出しておいてくれ」


受付嬢が紙へと視線を落とすと名前が記されていた。


「アンタ!いつの間に、、、というか名前、ロイ・リュークなのね…。まぁ、いいわ」


紙を机の引き出しに仕舞うと煙草に火を付けて男に話しかける。


「アンタその歳で冒険者目指すならやめておきな。冒険者なんてまともな人間はなれないし、なったところでろくでもない人間になるだけよ…。それに夢見がちな歳でもないだろう??」


「、、、、ふっ…。そうだな。冒険者にまともな人間はいない………」


一言だけそう言い残すと男は冒険者ギルドを後にした。



男は宿泊していた宿に戻りフードを取る。


「まったく、これくらいの変身魔法も見破れないなんて人間は愚かだな……」


クフェアはベットに腰かける。


「はぁ、、、」


大きいため息を吐き肩を落とす。


コンコンッ


部屋のドアをノックする音にゆっくりと足音を盗んで近づく。


「誰だ?」


「”対魔省”の者で―す。ここの宿に魔族の匂いがすると報告があって参りました。良ければドアを開けてくれませんかー?」


“魔族の匂い”その一言にクフェアの顔が曇る。


「はい」


ドアノブを回しドアを引くと男が部屋を覗き込んだ。


「何の用だ」


「いやぁ、この部屋じゃないみたいですね。すいません!ご協力ありがとうございます!!もう、()()()()()()()()いるわけないですよね。へへ…」



パリィィインン!!


男の胸に付けていた水銀の砂時計が砕ける。


「アレ?どうしたんだろう??すいません、片付けて行くので、、すいません」


男はしゃがみ込み散乱した砂時計の破片を集める。


「いや、大丈夫ですよ。俺が片付けときます。対魔省の方々にはいつも俺達を守ってくれていますから」


そう言うとクフェアは散乱した破片を集め始める。


「すいません!!自分、この後も仕事が入ってて、任せていいですか?」


「えぇ、大丈夫ですよ」


ニッコリと優しい笑顔を作り男に向け、そのまま男の去る背中を見届けた。



クフェアは椅子に座り込み深く考え込んでいた。


大聖教会のお守りか、、、コレが無ければあの男の首を刎ねていた。だが事前に危機を察知して所有者に知らせるこのお守り。実に興味が沸く。少し弄るぐらいはあの男も許してくれるだろう。


机の上に散らばった破片を全て集め魔法を掛ける。


『修復魔法 グルト』


カタカタと音を立て破片が集まり元の形へと修復を始める。



「やはり、これではダメか……」


修復されたお守りを手にベットの上で横になるクフェアは考え込む。


魔法回路の修復までは出来たが聖魔法の刻印がされている以上、コレ本来の力は発揮できないな……。いや待て、そもそも聖魔法は何故魔族に扱えない?人類が聖魔法を創造して何百年と経つがそれを扱える魔族は今まで現れなかった。()()()()()とは言えそれはあくまでも加護に過ぎない…。魔法発動には加護の他に条件があるとしたら……?


「ふむ、気になるな…。大通りの近くにある広告管轄の書物庫にでも行くか……」





流石は三大都市の一つにある書物庫だ。ここの中には人類の歴史が記されている書物が幾らでもあるだろう。()()()に関する書物も…………。


大きく構える扉を押し中へ入る。


何かと人間の書物庫に侵入するのは初めてだな。まぁそれも戦争が無ければありえなかったと考えると皮肉だな。


しばらく魔法に関する書物について調べ日が暮れ始めた頃にようやくクフェアは聖魔法が記された書物の場所へとたどり着いた。


『女神の祝福』か……くだらないな。いつまで経っても人間は神を崇め称える。()()()()について何も知らずに、、、馬鹿馬鹿しいがこれも復讐の為だ。仕方ない。


「あのぉ、良ければそちらの本を取って頂けないでしょうか?」


声の方を見ると冒険者の少女が頭上を指さしていた。


「………。これか?」


頭上に置かれていた『神聖魔法について』と大きく記された本を少女の手に乗せる。


「ありがとうございます!!あなたも聖魔法について興味があるんですか?」


首を傾げて問いかける少女に背を向け立ち去ろうとするクフェアの手首を少女が掴む。


「こっこの、手の包帯!怪我をされているのですか??」


「していない。手を放せ冒険者」


「でっでも手に包帯を、、、」


振り向いて少女をキッと睨んでクフェアは言い放つ。


「俺は怪我をしていない。二度言わせるなガキ」


しりごみ手を放す少女を無視して歩み始めるクフェアに少女が叫ぶ。


「じっ実は私、聖魔法が使えるの!だから教えても良いわよ!」


「そうか…。良かったな」




魔法書を読むクフェアの視界の端で桃色の髪が揺れる。


パタン


「何のつもりださっきから?」


魔法書を閉じ冒険者の少女を睨む。


「え?」


キョロキョロと辺りを見渡して、、、わざとらしい演技はよせ。そんなもので騙されるのは貴様の様な人間のガキまでだ。


「わっ私?」


「そうだ、それ以外この場に誰が居る?」


「あーーー、いや、、、あなたの読んでいる本について気になって………」


もごもごと喋り視線の合わない少女に怒りを感じながらもクフェアが問う。


「これがどうかしか?」


「その本は聖魔法についてはあまり詳しく記されていなんですよ、、」


「ほう、それで何が言いたい?」


「だから、この本をおすすめします。私が知る限り一番分かりやすく記さているので」


少女が差し出す魔法書をパラパラと捲るクフェアに今度は少女が問う。


「あなた、、実は魔族でしょ?」


少女がボソリと溢したその一言がページを捲るクフェアの手を止めた。

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