0-1 特異点
――――目が覚めるとそこには何もなかった。
不思議な感覚だ。
周りを見渡しても、見える景色は何も変わらない。
ひたすら続く静寂、目の前に虚無があるというのに何も感じない。
「―――――... ――――――――――――!!!!」
声が出せない。
というよりいくら叫ぼうとしても、何も声が響かない感じだ。
―――――分からない、何も。
そもそもなんでこんな何もないところにいるんだろう。
ここで目覚める前のことが思い出せない。
自分が誰だったのかも思い出せない。
何一つ分からないというのに、何も感じない。
◇
ここで目が覚めてからしばらく経った........はずだ。
何をすればいいのか、何も分からない自分が考えたところで分かるわけもなく。
とりあえずひたすら歩いてみている。
歩き続けて分かったことは、奥に進むにつれて世界のイロが変わるということだ。
最初にいた場所を中心に、行く方向によって違う色に世界が染まっていく。
おそらく赤、橙、黄、緑、青、紫の6色に分かれているみたいだ。
.....ますます訳が分からない。
死後の世界とかそういう場所なんだろうか。
自分のことは何も分からないのにこういうことは考えることができる。
本当に分からないことだらけだ。
―――俺は一体どうしてしまったんだろう。