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第四話 カウストの戦い その一

 冷静に、かつ忍耐強く、未来を見通す力だけが、未来を実現していく。


ナポレオン・ボナパルト

 


 フロス王国陸軍側

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 数日後、


 事は、唐突に起こる。


 それは、偵察に向かわせていた部隊からの報告であった。


「敵兵は、南西の方角へと退却していき、その場に陣地を敷いております。」


「そうか。なら敵の総数は?」


「敵の総数は約2万ほどです。」


「わかった。下がっていいぞ。」


 ハッケンは、偵察に向かわせていた部隊を下がらせる。


(意外にも数が多いな、敵が退却している時も、攻勢を仕掛けるべきであったか……? いや、攻勢を仕掛ければ向こうも損害を負うだろが、此方もそれ相応の損害を受ける。やむを得んな。)


 攻勢を仕掛けようが仕掛けまいが、兵数の増減は微々たるものでしかない。だが、戦場を有利に運ぶ事は出来よう。ならば、攻勢を仕掛けた方が良かったが、それは後の祭りである。


 ハッケンは、自身の後悔をかき消すと、隣にいる副官へと視線を向ける。


「リリーバーバルド大尉、将校らを招集させろ、作戦会議だ。」


「了解しました。」


 と会釈を介し、急いで将校達の元へと向かっていく。ハッケンは、その背中を見ながら物思いにふけながら会議へと向かっていく。



  ▼



 ハッケンは会議場へと着く、そこは会議場とは名ばかりのただ木の机が一人堂々と立っているだけである。


 会議場へと着いた時にはもうすでに将校らは揃っていた。

 

(流石だ、リリーバーバルド……準備が早いな。)


 と内心で思いつつ表情には出さなかったが、リリーバーバルド大尉へと目線を向けると、リリーバーバルド大尉は会釈を介す。


 ハッケンは、上座へと進み出ると、


「会議を始めようか。」


 ハッケンの言葉を皮切りに、将校達は議論を開始する。それは奇しくも、リッケンハイム王国の時と同様、白熱した議論となっていた。


 議論した作戦は徐々に輪郭が形成され、肉が付いていく。そして、


「会議を終わろうか。」


 その言葉をもって会議は終了すると、将校達は作戦を遂行する為に準備に取り掛かる。



  ▼



 リッケンハイム王国陸軍側

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 とある偵察兵の一報により、事態は急速に加速する。


「敵兵は軍を三方に分け、リンネとルリネントへと侵攻を開始、もう一軍は我らの陣地へと侵攻しております!」


「なるほど。」


 リンネとルリネント。その両方はカウストとそれ程離れていない場所に位置する都市である。


(良い作戦だ、リンネとルリネントは約5年ほど前に起きた戦いに於いて我々が勝ち取った領土だ。その領土を狙うことにより、我々をこの場所から離すという目的、敵軍の領土奪還という目的を果たすとこができる。)


 実に理にかなった作戦である。もし仮に、正面衝突を仕掛けた場合、フロス王国陸軍の数が、リッケンハイム王国陸軍を上回っていたとしても、万全な状態で、ましてや有利な地形でかまえられた状態では、凄まじい損害を被る。最悪の場合、敗北するであろうことは必定。


「で、双方の敵の数は?」


「見たところによると約1万ほどです。」


「わかった。下がっていいよ。」


 その言葉を聞いて、偵察兵は下がる。


「各将校に作戦通りに動くように伝えてくれ。」


 と不敵な笑みを浮かべる。そしてノックス少将の隣にいたソフマン参謀長はその表情を見て取ると、ノックス少将に話しかける。


「楽しそうですね。」


 その問に対してノックス少将はさもありなんといった様相で言葉を紡ぐ。


「あぁ、楽しいよ。生死の駆け引きが合法化されているのはここだけだからね。」


 ノックス少将は、心底楽しそうな表情で愉悦に浸っているかのようであった。その表情はまさに戦争狂である。


「狂っていますね。」


 とか細く、他人には聞こえないような声色であったが、だが、ノックス少将は返事を返す。


「狂っていますね、か……狂ってなければこんな馬鹿げた、人類を破滅させるような戦争をやっていけるわけがないからね。狂った者だけが、上へと登っていく。だから...…狂うのさ。」


 ソフマン参謀長は細く誰にも悟られないような声で話したはずが、ノックス少将に聞こえていたことに驚く。ノックス少将はホフマン参謀長を見て、笑みを浮かべながら


「そんな驚くことの程でもないよ。ただ、私は昔から耳が良かっただけだよ。」


 その笑みには今までにはない何処か儚げであった。


「……それでは私はこれで失礼します。」


 とその場を離れ、持ち場に戻る。ホフマン参謀長はそれ以上のことを詮索することはなかった。ノックス少将が醸し出す雰囲気がそうさせたのである。


 ノックス少将の周りには誰もいず、一人ポツンと戦場を眺めていた。






 ここから始まるは大戦。各軍は自らの大義を内に秘め、この戦へと乗り出す。それは領土の防衛であったり、領土の奪還であったりと、各々違いはあるが、各自秘めたる思いは同じである。それは勝つ事である。


 かくして、カウストの戦いと呼ばれる戦の火蓋が切って落とさせる。

どうもklemaクレマです


前話の後書きで本格的な戦が始まるとか言っておきながら始まっていないという。申し訳ないです。


第五話は戦になると思うのでお楽しみ下さい。







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