天羽みのり
幽体離脱というのだろうか?天井から自分の姿が見えている。先程まで点滴や様々なチューブが着いていたのはきれいに外され整えられた。早朝、この時間なら病室の入口は開け放たれているのに看護師たちは閉めてまわっていた。 白い布で全体が覆われたストレッチャーが黒いスーツの男女2人の手によって運ばれてきた。看護師たちが病室の入口に立ち廊下に出ないように見ている。先に待たせたエレベーターに素早く乗り込みしまる。医師と看護師が頭を垂れる。お礼を言いたい、お世話になりました。ふと、なにかに引き寄せられると思ったら凄い勢いでまわりが見えなくなった。 気が付くと夕暮れの空の見える場所に立っていた。すでに体はないけれど足が地面を踏んでいる感覚がした。 光る人型がゆらりと現れ語りかけてきた。(天羽みのり享年70歳)音ではなくそう言われたと感じた。返事はどうしたらと悩んでいたら(思うだけでいい)とまたきた。(光る人型?ああ貴方もですよ。正しい認識です。私は貴方を次の場所へ案内します)案内人はここをいわゆるあの世の手前と言った。魂を正しく導く場所だという。[天国とか地獄行きを決めるの?]それを聞くと変な事を言った。(貴方はこちらの世界の人ではないので修正されます。ご両親が異空間を越えてはいられてから産まれてますね。お戻しします。)なにを言われているのかがわからない。どこかに行かされる?(本来生きるべき世界に生まれ変わります。)ここまで聞くと怒りが込み上げてきた。 [ちょっと待て!案内人!さっき死んだばかりで来たのよ!イキナリなにいってんの!]驚いたのか少し間があってからやや小さく(はい)と返した。(天羽みのりさんですね。)[そうよ!](ご両親の魂が異空間より来てこちらの世界で丁度亡くなられたカップルのカラダに入られてるんです。)[えっ?!]思い当たる節がある。確かに事故からの生還者とか言ってたわ。死んでても不思議じゃないとか。[そんなことって](ご理解頂けましたか。では送りします。)ちょっとまって、人の話は最後まで言いかけた時はすでに遅くあのキレイな夕焼け空は瞬く間に消え去り私の意識も無くなった。