人気者と完全無視
時も過ぎていき、小学生。
玲央への対応に困りつつも、突き放せないでいる間に、俺はこの世界に生れ落ちて、7年になろうとしていた。
「ノア!帰ろ!」
玲央は、俺の手を取って駆けだす。
俺はそれに慣れっこだったため、重いランドセルを背負って玲央に続く。
「玲央、そんなに慌ててるといつかぶつかる――」
俺は、呆れながらも玲央に注意をするが、遅かったようだ。
ちょっとした衝撃と共に、玲央は尻もちをついた。
「痛!」
「大丈夫!?」
横にも縦にも大きい少年が、慌てて玲央に手を差し伸べる。
玲央は、ゆるく笑いながらその手を取った。
「ありがとう!ねえ、大丈夫?ぶつかってごめんね」
「いいぜ!別に痛くなかったしな!」
確かに、痛くはなさそうだ。
どことは言わないが。
「俺の名前は土屋大地!お前らは?」
「俺の名前は桐生玲央!こいつは闇城ノア!」
「おい!」
勝手に俺の名を教える玲央に、俺は抗議の声を上げた。
「いいでしょ……?」
「チッ」
俺は舌打ちした。
正直、俺はまだ俺を殺した玲央に対し、憎しみの感情がある。
レオがいなければ、俺は今頃ルナとイチャイチャできていたのに……!
ルナと俺を殺しやがって……!
本当に勇者が嫌いだ。
「ノアって、なんか怖いな……。保育園の時、玲央と一緒にめっちゃ女子たちに人気だったのに……」
「俺が?なんで?」
正直、そんなの聞いたことなかったが。
「そりゃあ、ノアがイケメンだからだよ!」
「ふーん、興味ない」
「あってよ!」
玲央が何か言うが、俺は女子にもてるより、ルナと一緒にいる方がいい。
ルナの方が可愛いし。
口に出したところで仕方ないから、何も言わない。
「全世界のモテない男子の敵になったぞ、ノア……」
「興味ない」
大地が何やら悔しがっているが、知らない。
「さっさと帰ろう」
「あ、待ってよ、ノア!」
俺は、面倒になったので、さっさと帰路につくことにした。
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Side Daichi
ノアが、玲央を引き連れて、帰ってしまった。
俺は、あまりの速さに呆然としていると、教室から少女二人――愛羅と雪菜が現れた。
「あれ?もう帰っちゃったの?」
「早すぎ……」
幼馴染の、落胆の声に俺は済まない気持ちになる。
「すまん!引き止めれなかった!」
「逃げ足早いね……」
「残念」
ノアと玲央が去っていった後を、口惜し気に見ている二人。
2人とも、太っている俺に似合わない程の美少女だ。
玲央とノアは、どっちも金持ちだし、それに玲央は可愛い感じ、ノアは格好いい感じだ。
だからこそ、かなり人気がある。
保育園の女子人気を掻っ攫っていったあの二人は、男子連中からの恨みを買っている。
正直、これからどうなるんだろうな……と思いつつ、俺はあの二人にハートを飛ばしている二人の幼馴染に、これからの学校生活に不安を覚えた。
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Side Noah
翌日、俺はなぜか男どもに睨まれていた。
「一体何なんだ?うざい」
「こら、そんなこと言っちゃいけないでしょ」
「知るか」
あっちでも、こういう視線はあった。ぽっと出で、好待遇を受けている存在がいたら、嫉妬で狂うだろう。
そいつらに対し、俺は実力で黙らせていたが、子供に対し、そんなことはできない。
でも、特に害はないため、無視すればいい。
それを一週間続けただろうか。
完全に、存在ごと無視したら、玲央と数少ない男子と女子しか、俺に話しかける人間は少なくなった。
それが気に入らなかったのだろう。
二日目に愛羅と雪菜に話しかけられたのが、面白くなかったのだろうか。
玲央によると、保育園で、かなり人気だったらしいが、そんな人気者に話しかけられて、嫉妬したのだろう。
子供らしいし、そもそも俺は子供に興味ないし。
だが、そんなの、相手に伝わることがないことくらい、俺は知っていた。
「お前、生意気だな」
男子が、徒労を組んで俺に高圧的に接する。
中休み。二時間目が終わるや否や、すぐに俺の方へと向かってきたやつがいることに気づいてはいた。
「……」
俺は無視した。そもそも、俺はルナを敵認定した人間が嫌いだ。
「おい!話聞けよ!」
「……」
無視。
「聞けって!」
「……」
うるさいなあ。
「調子乗ってんじゃねーぞ!」
「……」
よく魔王軍四天王最強に、言えたよな、それ。
「なあ、なあって!おい!」
「……」
俺は、三時間目の準備をする。
「聞こえてるだろ!?おーい!」
「ノア!」
「……なに」
俺は、玲央に話しかけた。決して、奴らに答えた訳ではない。
「あのさ!」
「ちょっと静かにして」
俺は玲央を冷たくあしらう。
「あのさ」
「なに」
「昨日のテレビ、見た!?」
「見てない」
なんかテレビがついていたような気がしたが。
「ちょっとは聞いてくれよおおぉぉ」
「……」
「相変わらずだね、ノアは……」
俺は、基本的に話は無視する。
くだらない話に乗るのは、玲央くらいなものだ。
母さんが怒るから、と言う理由だが。
それに、別に玲央は悪人じゃない。底抜けの善人だ。だから、もしかしたらルナを殺してはいないかもしれない。
それをおいておくにも。
情けなく泣きだした男子に、俺が構う義理はなかった。
その後、教師に呼び出しをくらって、空き教室で今日の出来事について聞かれたが、勝手についてきた玲央が、彼らは俺にいちゃもんを付けたが、ずっと俺に無視され続けたので泣いただけだ、と言った。
別に、全て事実だから、教師の真偽を確認するような目に、俺は小さく頷いた。
「ああ、そうなの……」
そんな、やや困惑した声を尻目に、俺は帰ってもいいですか、と問いかけた。
「いいわよ」
許可が出たので、俺は玲央と一緒に教室から出た。
その翌日から、彼らは自業自得の泣き虫、と言われるようになった。
玲央は、可哀想、と言ったが、正直俺は自業自得だと思ったため、彼らを庇うようなことはしなかった。




