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黒猫異世界探訪譚  作者: 七海飛鳥


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3/4

闇城家と桐生家

じっとレオ――玲央を観察する。

ああ、見れば見るほど間違いない。


俺を殺した憎き勇者、レオ・キリュウだ。


一体なぜここにレオがいる?

それとも、似ているだけの別人なのか?


「おれのなまえはれお!れおってよんで!」

「……」

「ノア、きちんと挨拶しなきゃ駄目でしょ」

俺が、玲央の自己紹介に無反応でいると、母さんに怒られた。

渋々俺は、自己紹介をした。


「……俺の名前は、ノア」

「のあっていうの?なかよくしよ!!」

「……別に」

「こら、ノア!!」

「まあまあ闇城さん、ノア君はきっと緊張しているんですよ。それに、うちの子はがさつなんで、全く気にしてませんよ」

「本当にすみません」

俺は、勇者と仲良くなりたくない。

だから、玲央に対してツーンとそっぽを向いた。


「のあ!おれのすきなものは、じゃんけんらいだーなんだ!てきをびゅーってやって、どーんってたおしちゃうんだ!」

お前は俺を、勇者のみが扱える聖剣でザクっとやって殺したけどな。


キラキラの眼で俺に興奮しながら伝える玲央は、今のところ普通の子供にしか見えない。

……今のうちに殺っておくべきか?


そうすれば、俺が死ぬこともない。

だが、懸念点がある。


まず、玲央を殺したとして、俺は元の世界に戻れるかどうか。

そして、元の世界に戻ったとしても、とんでもなく未来だった場合、いくら寿命が長い魔族であったとしても、ルナは生きていないかもしれない。


下手すれば、生まれる前に飛ばされるかもしれない。


俺は、必ず元の世界に戻ってルナを探す。

それが目標だ。


もし、レオが底抜けなお人好しだったなら、ルナは俺が死んだという事を、レオによって知らされる筈だ。

ああ、俺が死んでしまったばかりに、彼女に悲しい思いをさせてしまった。


絶対、元の世界に戻らなくては。



ここで、いくつかこの世界について、仮説が立てられる。


まず、この世界が、レオと全く関係ない場合だ。

こうなったら、もうお手上げに近い。

それでも、諦めるつもりはないが、かなりきついだろう。


次に、実はもう俺は死んでいて、この世界は、俺が無意識に作り出した、想像上の世界という点。

これは、最初より状況が酷い。

まず、生き返る必要があるものの、そんな術、あったらとっくに使っている。


最後に、ここは勇者レオ・キリュウが元々いた世界という可能性だ。

そうだった場合、この世界は恐らく、勇者レオがルナのいる世界に来るよりも前の時間軸になる。

つまり、こいつがあの世界に召喚された時、俺も一緒に異世界に行けばいいのだ。

そうすれば、ルナに会うことができる。


つまり、俺は玲央と仲良くすればいいだろう。


そうすれば、レオが異世界召喚された時、俺もその状況に居合わせることができる。

なんていい案なんだ……!



これしかない、と思った。

しかし、重要な問題が一つあったことに気づく。



――だが、俺は玲央と仲良くしたくない。



自分を殺した相手だし、勇者だし。当然だ。

だが、そんな俺の気持ちは、ルナに会うことよりも重要じゃない。


なら、俺は――。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



俺は考えた。考えに考えた。

結果、やっぱりルナを超えるものは何もなかった。



だから――。



「まあ!いい子ね~。ありがとね、毎日うちの子(玲央)の面倒を見てくれて~」

「いいえ~。こちらこそ、人見知りのうちの子と、玲央君が友達になってくれて嬉しいわ~」

母さんたちの声と共に、俺は自分の恰好を確認する。


七五三。袴を着て、神社に参拝する行事だ。


うちは、普段は着物を着ている家庭なので、桐生家に袴を貸出しして、一緒に七五三をすることになったのだ。



これがなんとも動きづらい。よく人間はこんな動きづらい服を着れるな。

これが平和ボケ、というやつなのか。


同じことを、あっちの世界の王侯貴族にも思ったのだが、いつ自分が戦いに巻き込まれてもいいように、とは考えなかったのだろうか?


全く、不思議なことだ。



幼稚園では、ずっと玲央に付きまとわれている。どこへ行くにも、何をするにも、ノア、ノア、ノア……。

だが、俺は玲央と仲良くする必要があるからこそ、そこまで邪険には扱っていない。


家が隣同士というのもあり、そして同じくらい経済力を持っているのも相まって、俺たちはすぐに、いつも一緒にいる二人、とみられるようになった。


そんな玲央のことが、少しは気になって、剣の腕を見てみることにした。


まあ子供だ。対して期待はしていなかった。


だが、チャンバラごっこと評してやったあの遊びは、案外他の幼稚園児からも人気が出て、トーナメントまで組まれた。

結果、玲央が優勝したが、俺はその才能が恐ろしい、と感じた。


俺?玲央と三回戦で当たって敗退したよ?


まあ何がともあれ、そこそこ仲良くしている。



「のあかっこいいね!」

「玲央も……」

「ありがとう!」

俺、ここまで懐かれるようなことしたっけ?



たまに思う疑問を内心で浮かべつつ、俺は母さんと父さんに連れられ、神社へと向かう。

父さんは普段から多忙な人なのだが、今日は息子()の七五三だからか、スケジュールに穴をあけてやってきてくれた。


たまにしか顔を合わせないが、時間があれば構ってくれる。

子煩悩な人だな、という印象だ。


玲央の父も、玲央にの顔をデレデレにして、カメラを構えている。あれ、一眼レフじゃないか?



「はい、チーズ!」

玲央の父の掛け声とともに、俺はカメラを向く。


最初は、魔法かと思ったあの機会にも、俺は慣れた。

この世界には、魔法がない代わりに、科学というものが発展している。


だから、視界に映る全てが目新しい。

本当にこれらすべてが魔法ではないのか、と何度も確認した。


魔力がこもってなかったから、魔法ではなかったが。


「うん、いい笑顔~。二人とも、可愛いね~」

そう言う玲央の父の顔は、レオと似ていたものの、全く締まりがなかった。


……そして一つ疑問なんだが、俺は笑顔を浮かべていた記憶がないのだが?

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