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美麗魔獣使いは聖女の去った国で奮闘する  作者: 黒笠


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83/258

83 風の大木

(メイヴェル・モラントにも、彼女なりの考え方や意思がある。当たり前だけど、なんか意外)

 レアンはこれまでどおり、アブレベントの頭で揺られながら考え込んでいた。

 別にやるべきことは変わらない。カドリがいれば、そうしていたであろうとおり、手柄を立ててメイヴェルに譲るのである。

「そろそろ、だいぶ良いところまで来たかしら?」

 レアンは1人呟く。

 空気が変わった。少しずつこれまでにも冷えた硬質の空気に変わりつつあったところ、いよいよハッキリと肌寒く感じられる。

 ドドドッと馬蹄の音が近づいてきた。

「レアン様っ!」

 アブレベントの下からダミ声が響く。

 確かめるまでもない。カドリに心酔している騎兵隊の隊長ヘイドンだ。騎乗しているが非礼ではない。アブレベントと移動中のレアンと話すには馬を並走させるしかないのだから。

「全兵士、集めておいてくれた?」

 レアンは途中滞在した宿屋でヘイドン宛に手紙を出していたのである。

 それには合流予定地点と、全兵士を大戦のため集結させるようにと書いておいた。

「はっ!騎馬2000に、歩兵1000をこのライトナー平野に集結させておりますっ!」

 ヘイドンが敬礼しつつ報告する。

 想像以上の数だ。だが騎兵隊の総数は本来2500騎だったから、幾らかは各所に散らしているのだろう。

 レアンもそこを咎めるつもりはない。全兵士というのは当然、集結出来る全兵士ということだからだ。

(にしても、凄い数ね。この髭男のどこに、そんな組織力があったのかしら)

 レアンは驚くのだった。特に歩兵1000などどこから湧いて出たのだろうか。

「歩兵?」

 ゆえにレアンも素直に疑問を口にして尋ねる。

 もともと騎兵隊のヘイドンだから、兵種も騎兵隊に偏っていたのだ。

 なんとなくアブレベントにも足を止めさせる。少し、状況を整理したかった。

「ムカデの女王陛下っ!失礼しますっ!」

 同じく停止したヘイドンの隣に立つ歩兵が声を張り上げた。どうもヘイドンと同世代と見える。こちらは顎髭をきれいに刈り揃えていた。四角い顔のいかつい男だ。30代後半くらいだろうか。

「陛下はまずいでしょ、陛下は」

 おそらく渾名が女王だから『陛下』呼びなのだろう。だがあくまでムカデの女王というのは渾名なのだ。

(勘弁してよね、まったく)

 今、アブレベントの後ろには、どこぞの殿下の婚約者にして、自他ともに認める偽聖女もいるのである。不敬罪のネタなど提供しないでほしい。 

「なんとっ!では、しかし!」

 露骨に歩兵の隊長がうろたえてしまう。

 ヘイドンが紹介しようというだけあって、どことなく同じ人種のようであった。

 ベージュ色の軍服に身を包み、腰には短い剣を吊るしている。さらには槍の穂先も肩口から覗く。

「ですが、女王であらせられると、陛下ではないのですか?ヘイドン殿から自分はそのように聞いております」

 歩兵の隊長がヘイドンを見上げつつさらに並べ立てた。事の発端であるヘイドンも、さすがにまずいと思っているのか、額に汗を流しつつ黙り込んでいる。その辺りは人柄なのかずるいのだった。

 だが、ここまでだけでもヘイドンと同じ波長を感じる。馬が合うのだろう。カドリの洗脳なしでこの人柄ならば筋金入りの変わり者だ。

「レアンでいいわよ、レアンで。そもそもあたしはムカデの女王と呼べ、なんて、誰にも言ってないっていうのよ」

 レアンは手をヒラヒラとさせて告げる。

 突き詰めれば自分は一般人である。かつては、ハロルド伯爵の魔術師軍団に所属していたものの、既になし崩しに抜けてしまっていた。だから、もはや軍属ですらないのだった。

「では、レアン様!私はレアン様の直下歩兵団のカートンと申します!此度の戦からヘイドン騎士団長の紹介により、お目通りかない!まことに光栄至極であります!これからは粉骨砕身!」

 一気にカートンがまくし立ててくる。

 自分はいつの間にか騎士団と歩兵団を直下に抱えることとなったらしい。

(なんでカドリ様じゃなくて、あたしになってんのよ)

 この平野に集まった軍人全てが自分の軍団なのだという。あまりの破茶滅茶にレアンはげんなりとした。

(この連中、一応、カドリ様の精神操作を受けてるんでいいよね?あってるわよね?)

 もし自分やアレックスの大暴れに心酔したというのなら、とんだ暴れ者集団を抱えたということでもある。

 レアンは苦笑いを浮かべるしか無かった。なお、カートンの剣幕にはアブレベントですら呆れ果てている様子だ。

 とりあえずあまりにカートンの口上が長いので、レアンは聞き取りを諦めた。粉骨砕身して、何をするつもりなのかも分からない。

 隣に立つヘイドンも同感だ、と頷き、あの軍人たちも感極まった顔でカートンの所信表明演説に聞き入っている。

 白けきっているのは、自分とアレックスだけなのだ、とつくづくレアンは思い知らされるのであった。

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― 新着の感想 ―
レアンにもカリスマ性があるのですね。 一体どこまで信者を増やすのか……。 このまま肥大化したら第三勢力になれる? (´・ω・`)
レアンちゃんの軍団!?が凄い事になってきましたね! ヘイドンさんとカートンさん、似た二人ですが忠誠心が凄まじくて面白かったです。 偽聖女、メイヴェルさんは反感を買わなきゃ良いけど(;'∀') 今回も楽…
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