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181 レアンとマリー・オコンネル2

(アレックスの奴も、カドリ様といちゃついてんのかしら)

 つとレアンはまた残してきた2人が気になってしまう。ピッペン村に残り、魔物を食い止めるのだという。

 いくらカドリでもかなり苦しい。少なくない同胞を他ならぬレアンが引き抜いてしまった。

(羨ましいな。本当にどこまでも優しい人だから。カドリ様は)

 未だにカドリからの魔力供給も感じる。意にそぐわぬことをしているはずのレアンにも、だ。

(結局、カドリ様は政治的な思想よりも同胞を取る、そういう人なのね。それがもっとはっきりしてたら、説得なんて要らなかったのかも)

 少なくとも黙認はしてくれたのだろう。

(で、そんなカドリ様と人間の女の子だと判明したアレックスが2人きりなわけよ)

 レアンは嘆息する。下世話な想像をしている自覚もあった。

「どうかしたのかい?とても悪そうな顔で含み笑いをしていたよ」

 ベリー・オコンネルが顔を覗き込んでいた。

 ちょうど、どうカドリとアレックスがいちゃついているのかを妄想しているところだったので、レアンとしてはとても恥ずかしい。

「いいえ?アレックスの奴が、とうとう誤解されるのをやめたから。残してきたあの2人は今頃、どうしてるかなって」

 正直にレアンは答えた。

「ふむ。カドリぐらいだろうな。あのアレックスを漢だと思っていたのは。自分があの見た目だから、他者の美醜に無頓着だからな、奴は」

 同じく笑ってベリー・オコンネルも応じる。

「アレックスもアレックスで、死ぬまでカドリ様に男だと勘違いされたままでも、構わないって感じだったんですけどねぇ」

 レアンはしばしば可愛らしくしていたアレックスを思い出しつつも告げた。

(でも、女の子だって、カドリ様に気付かれたんなら、アレックスには勝ち目ないな。あれはあれで可愛いし、なんか、カドリ様のツボを突いているような感じしてたし)

 アレックスからレアンは別れ際、眩しいばかりの笑顔を向けられていた。別人のように可愛かったのだ。

 隣りにいた気まずげなカドリとは好対照で。

(あれされると、いかにもお似合いでさ。私のほうが後付けの余分ものに見えちゃうじゃないのよ)

 レアンは更に思うのだった。

「何か心境の変化があったのかな。我々の決心で。カドリも数多の女性に言い寄られてもなびかない、まるで興味を持たなかったものだが。あの槍使いが好みだったと?君よりも?」

 ベリー・オコンネルが驚いた顔をする。

「それ、地味に私の傷に塩を塗ってますからね?」

 レアンは睨みつけてやった。自分が負けたような言い方ではないか。

 そこまでは言っていないのである。

「いや、カドリの好みの話だ。そんなつもりはない。私なら、ほら、このとおりだからね」

 白々しくもベリー・オコンネルが熱を帯びた視線を作って自分に向けてきた。

(ま、それはカドリ様はアレックスが好みなのは見え透いてたわよ?お尻ペーンッ、散々やってたしさ。悪しからず思ってなきゃ、あんなことしないわよ)

 当然、レアンもされたいわけではない。

 アレックスもよく尻を押さえて恨めしげにしていたものだ。

「ま、ちょくちょく見せつけられるみたいなことはありましたよ?」

 レアンは自分の膝を抱きかかえるようにして告げた。

 正直、あの2人から離れてしまったことへの寂しさもある。また、アレックスをからかい、カドリに媚びて、ということをしたい。短い時間だが自分にとっては楽しいやり取りだった。

「なんだかんだ、君は優しいよ。カドリのこともアレックスのことも心配なんだろう。仲間思いだからね」

 妙なところでベリー・オコンネルも鋭いのだった。

 自分の気持ちを正確に言い当ててくる。

「別に。あの2人が私のいないところで、よろしくやってるところを、妄想して。ただの下世話な女ですよ」

 それでもつい悪ぶってレアンは可愛くないことを言い放つのだった。

「君そっちのけで、あの雰囲気を見せつけられれば、そういう気にもなるだろうさ。分からないでもないよ、私には」

 笑顔のままベリー・オコンネルが言う。この人も優しいのである。

(かなり、阿呆なこと、言ってる自覚があるっていうのに。馬鹿にしないのよね、私のことを)

 平時に出会って、もし、見初められたなら。レアンも嬉しかったかもしれない。夢見心地で今の状況を甘受していたのだろうか。

「そうなんですよね。拾われた時から、大変だったんですよ?あの間に割って入るの」

 ヤキモチを焼いてばかりだったアレックスを思い出して、またレアンは笑いそうになった。

「はっはっはっ、君でないと出来ない行動だろうね」

 どういう意味だろうか。

 またレアンはベリー・オコンネルを睨みつける。ついでにずっと折りたたんでいた両脚を伸ばした。ずっと縮こまっていたので、気持ちが良い。

「大丈夫。あの2人よりも、私が君を幸せにしてみせる。それが私の甲斐性さ。今、この場でも誓うよ」

 そして真正面からベリー・オコンネルがいつもどおり、レアンを口説いてくるのであった。

 

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