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118 魔窟の最奥1

 アシュラスケルトンを倒した後のガランとした大広間で、フォリアたちは休憩を取った。

 次で最後であるとともに、とにかく魔力と体力だけでも回復させなくてはならない。フォリアとしては少しでも確実を期して臨みたいのだった。

「はっ!」

 レーアが下から這い上がってきたスケルトンを細剣の突きで仕留める。

 魔素溜まりから時折、魔物が生じるのだ。

 完全には気の抜けない場所なので、フォリアも光球だけは維持している。

「魔窟の奥にこんなものがあるなんて」

 しみじみとスケルトンを倒したレーアが呟く。

 大広間の奥は下への階段となっていた。

「ここだけは確実に通るから、アシュラスケルトンがより下級の魔物に整えさせたのかもしれませんね」

 フォリアは推測を述べる。

 本音としては何かどうさせたのかもどうでも良かった。この先には間違いなく魔素の噴出口があって、そこを塞げば魔窟は終わる。

(いよいよね)

 フォリアは目を細める。

 休憩を取って皆の魔力、体力が回復したらこの魔窟最後の戦いに挑むのだ。階段の下はフォリアも一度覗き込んではいて、下からはかなりの邪気を感じた。

(アシュラスケルトンにすら勝てたのだから普通は、常闇のゴーレムにも勝てるはずだけど)

 勝てはしたものの、消耗は大きかった。特に矢も魔力も使い果たしたバーガンの消耗が激しい。休憩となるなり、地面に横倒しに寝転んでいた。

 そしてまだ目覚めず、いびきをかいている。

「大丈夫?」

 さすがにいつもはツンケンしているレーアですら心配していた。

「うん?おお」

 バーガンが身を起こす。魔窟で堂々と眠っていられるのは、改めてバーガンという人物の肝が太いせいであろう。

「あぁ、矢は戻らねえが、魔力は休んでりゃ回復するし、ああ、かなり戻ったな」

 座ったまま、頭を掻いてバーガンがレーアに話している。

 日頃の態度はともかくとして、2人とも気持ちは繋がっている様子だ。それが見て取れて、フォリアとしては微笑ましい。

「フォリア殿も大丈夫ですか?かなりの魔力を放出したでしょうし、今も光球を出したままだ」

 レックスも自分を気遣ってくれる。

「ええ。光球も最低限にしてますし。とは言うものの、たった一撃ですから。私は敵の強さの割に楽をさせていただきました」

 フォリアは微笑んで告げる。

 実際、自分のとどめに繋げるまでのマクシムやバーガンの魔術、それに最前線で戦い続けていたレックスの方が大変だったはずだ。

「殿下の方は?あの巨体に一歩も引かなかったではありませんか」

 フォリアは故にむしろレックスを気遣うのだった。

「なに、私も鍛えているからね。なんのこともないよ」

 レックスが笑い返してくれた。少年のような無邪気な笑顔である。

「あとは常闇のゴーレムを倒しつつ、魔素だまりを私が封じるだけです」

 照れくさくなってフォリアは横を向いて告げる。事務的なことを話して気持ちの揺らぎを隠したい。

「ほぅ、具体的にはどうなさるのですか?」

 マクシムが口を挟む。こちらはもうすっかり回復したらしい。スッキリした顔をしていた。主に黙々と水を飲んで兵糧を取っていた気がする。

「皆様に常闇のゴーレムを引きつけて頂き、その隙に私が魔素の噴出口を結界で塞ぎます。そして魔素溜まりにいる常闇のゴーレムを仕留めるのです」

 フォリアは一同を見渡して告げた。いつの間にか真面目な話になるや集まってきたのだった。

「先にそのゴーレムを仕留めてから、ゆっくり魔素溜まりを封じてしまえばいいんじゃねぇですか?」

 バーガンが質問を飛ばしてくる。

 フォリアは首を横に振った。

「なるほど。正直、私もあわよくばその常闇のゴーレムを、私たちでフォリア殿の手を煩わせることなく仕留めてしまいたいが、甘くない相手だと。そういうことかな?」

 レックスが冷静な口調で尋ねてくる。

 魔素の噴出口を塞いでから仕留めるというのは、フォリアを待てと。そう言われたと解釈したらしい。 

 そのとおりである。

「確かにそう出来ればいいのですが、難しいと思います。常闇のゴーレムはとにかく硬いので」

 フォリアの言葉に一同が嫌な顔をした。誰だって硬い敵とは戦いたくないのである。

 魔窟の最奥で、魔素を浴び続けた岩の硬さは尋常ではない。最早、岩とすら呼べない代物だ。

(厳にゴーレムになって動いてるわけだしね)

 あらゆる物理的な攻撃をはじき返す。フォリアの昔、ベルナレク王国で読んだ資料にも書いてあった。効果的なのは神聖魔術だけだ、とも。

「なるほど。とにかく硬いが魔素の濃い敵だ。神聖魔術に弱いのだね?」

 レックスの理解が早い。頷いて説明を先回りしてくれた。

「そのとおりです、私にとっても初めての敵で、初めての場所ですから。どれほどのものか、詳しくは分かりませんが」

 不安も緊張もある。フォリアは胸に手を当てた。

(それでもいつもと変わらない。なんであろうと、私は邪悪を消し飛ばす)

 フォリアは固く決意を新たにするのであった。

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