漁光島の三日月ビーチで撮影されたホームビデオの真意
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」と「Ainova AI」を使用させて頂きました。
夏休みが始まって早々、私こと王美竜は家族と海水浴をする事になったの。
両親や妹の「大学受験の準備も良いけど、根の詰め過ぎは良くない。」という言い分は、確かに分かるよ。
それに行先が漁光島なのも気が利いてるよね。
何しろ私の住む台南市からも近いし、三日月型の海岸線は風光明媚で癒やされるし。
だけど両親や妹の妙な力の入り方は、単に高校進学を果たした私への労いってだけじゃ説明がつかないんだよね。
お母さんはエステや肌ケアに余念がないし、お父さんは編集技術を学んで画像や動画を撮りまくるし。
「良いよ、珠竜!もう少し目線は右が良いな。」
「こうかな、お父さん!」
小学生の妹にしても、カメラの前でグラドル紛いのポーズを取るんだもの。
幾らビキニを新調して貰ったからって、燥ぎ過ぎだよね。
「どう、美竜?楽しんでる?」
「う、うん…」
生返事な私より、お母さんの方が遥かに楽しんでいるよね。
あんな派手なビキニなんか着ちゃってさ。
「ねえ、お母さん?さっきから私達、撮影ばかりで全く泳いでないよ。これじゃ何しに来たんだか…」
「そりゃそうよ、美竜。だって海水浴は建前で、真の目的はホームビデオの素材作りなのだから。」
あまりの事に二の句が継げなかったけど、これには家族なりの正当な意図があったの。
「何しろお姉ちゃんの希望進路は、日本の大学への留学だからね。幾ら日本と台湾が近くても、そう気軽に会いに行けないよ。だからお姉ちゃんの事が懐かしくなった時の為に、ホームビデオを撮り溜めようってね。」
「珠竜…」
確かに私も、お父さんの単身赴任中は家族写真をよく見ていたからね。
備えあれば憂いなしだよ。
「それにこの動画はお姉ちゃんの為にもなるんだよ。漁光島の三日月ビーチは台南でも屈指の映えスポットだから、留学先で里心ついた時に見るのも良いんじゃない。」
成程、泣かせる心遣いだね。
蜃気楼が立ち上るような夏の台湾の暑さも、里心ついた頃に見れば感無量だろうな。
だけど私には、もう一つ疑問が残っていたの。
「敢えて海を選んだのは何故?この水着、流石に派手過ぎない?」
何せ紐で結ぶ黒ビキニだからね。
こんなグラドル紛いの水着、娘に着せるかな?
「親として娘の成長を確認したくてね。そんなの着れるのも若い時だけだし、遠慮しないの。」
それを言ったら、お母さんはどうなるのかな…
あのオレンジ色のビキニも随分派手だし。
とはいえ今は、家族の思い出作りと考えて割り切りますか!