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優馬のお家

「到着しました、ここが今日から優馬様が住むお家です。以前まで住んでいらっしゃったお家は、セキュリティ上の問題から住むことは出来ません。申し訳ございません。ですが、新たな住まいに揃っているものは全て優馬様に合うように最高級です。足りないモノ、必要なモノがあればすぐに私か桜井にお申し付けください。すぐに用意致しますので」


俺は車から降りて、目の前にあるビルを見上げる。


高過ぎてここからでは、最上階まで見ることができなかった。


病院の窓から見た一番高いビル。

それがまさか。俺の新しい住む場所だなんて……


「えっと……俺の住む場所は何階ですか?」


俺は恐る恐る質問してみた。

やはり最上階の部屋だろうか?


「……何階ですか? ここが優馬様のお家ですよ?」


桜井さんがキョトンした顔で答える。


「ええ、それは分かるんですが……このビルの何階に住むのかと……」


「あ! 寝起きをする階のことですか? でしたら、最上階のお部屋が一番よろしいかと思います!」


なんだろう、質問に答えてくれているようで、答えてくれてないような気がする……


それとも俺は、もしかして見当違いをしているのかも知れない……


俺の脳味噌が導き出した、とんでも無いこと答えを尋ねてみる。


「あの……もしかしてですけど……このビル全てが俺の家ってことですか? いや、そんなまさかね……」


「はい!  その通りでございます!  このビル全てが優馬様のお家でございます! どの階に住んでもらっても構いません!」


桜井さんは、俺の予想通りではあったが想定外の回答をしてくれた。


いや! 馬鹿なの!? こんな大きなビルに俺が住むの!? どう考えてもおかしいでしょ!?


俺は心の中でツッコミを入れる。


しかし、桜井さんは俺の心の声など聞こえるはずもなく、ニコニコしながら話を続ける。


「このビルの中には映画館にスポッチャ、プール、ジム、温泉、エステサロンなどなど色々な娯楽施設があります。もちろんですが、その全てを無料で楽しむことが出来ます。他にも、優馬様が望むならこのビル内に新たな施設をつくることもできます」


驚き過ぎて、言葉が出なくなってきた。

なんだろう……ここは天国だろうか?


俺が唖然していると、橘さんが話だす。


でもその橘さんの言葉が更に俺を固まらせた。


「それで優馬様が通う学園ですが……天上院様のご協力により以前まで通っておられた学園を敷地内に移転してもらいした。これで登下校時のセキュリティ面もバッチリです。優馬様、安心して学園に通ってください」


俺はもう呆然とするしかなかった。


天上院家ってマジで何なの!?


「ちっ! あの女、優馬様に気に入られようと金の力にものを言わせたわね……でも、優馬様にとってこれはメリットになるから認めてあげるわ……」


桜井さんは複雑な表情になって呟いた。


「優馬様、どうかされましたか?」


俺が呆然としていたため、橘さんが心配そうな声で訊いてくる。


「いえ……さっき敷地内に学園を移転をしたって言ってましたけど……どこにあるかと……」


「優馬様が通う天上院学園は、このビルの隣の建物ですよ。車でここまで来たので分かり辛かったと思いますが、このビルから約半径4キロは全て優馬様の敷地内です。もちろん、この敷地内に不審者が入れないように周囲を塀で囲っております。主に学園関係者と優馬様のお世話をする者のみしか立ち入れません。ですので、ご安心してくださって大丈夫ですよ」


「そう……ですか……」


俺はもう考えることを止めた。

もうどうにでもなれ……


「優馬様、今日はお疲れになったでしょう。ですので、詳しい話はまた明日にしましょう。明日はこれから優馬様が、ここで生活していただく上でのルールを教えさせていただきます。それと、明後日は早速登校日ですので、何か不明点があればいつでも私達に仰ってください」


橘さんは俺の体調を気遣ってくれたようだ。


確かに、気疲れというか、驚き疲れというかなぜだかげっそりと疲れていた。


「はい、分かりました。ありがとうございます」


俺は素直に感謝の意を伝える。

すると、桜井さんが俺の手を取ってきた。


「それでは、ここからは私がこの建物の案内を致します! まずはエレベーターに乗って最上階に行きましょう!」


「はい、よろしくお願いします」


俺はその積極的な行動に少し驚きつつも、桜井さんに手を引かれながらビルの中に入るのだった。


それにしても、顔が真っ赤になるほど照れるなら手なんか繋がなければいいのに……


そんなことを考えながらも、俺も手を振りほどこうとは全く思わないのだった。


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