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黒塗りのリムジンの中で



黒塗りのリムジンが病院の正面に到着する。


驚く間もなく、橘さんと桜井さんがを俺をその車に誘導し後部座席に座らせられる。


自分の病室からリムジンに乗るまでの時間は、ものの数秒だった。


あまりの早さに呆然としていると、桜井さんと橘さんが俺の隣に乗り込んできた。


橘さんは運転手に短く「出して」と告げる。


そして、俺が戸惑っている間に車は速やかに発進した。


俺が車に乗ると、桜井さんは俺の手を握りしめてきた。


その大胆な行動には少し驚いたが、柔くて暖かい感触が心地よかったため振りほどこうとは思えなかった。


巧妙といか何というか、桜井さんは橘さんから見えない位置で握っていたので、俺が変な反応をしない限りはバレることは無さそうだ。


そう言えば、桜井さんとこんな密着したのはこれが初めてだ。


いつも俺が近づくと顔を真っ赤にして照れてしまい、彼女から距離をとってしまうからだ。


ならなんで今日はこんなに積極的なのだろう?


俺が不思議に思っていると、桜井さんがぶつぶつと何かを言っていた。


「優馬様は私を嫌いにならない。優馬様は私を嫌いにならない。優馬様は私を嫌いにならない。優馬様は私を嫌いにならない。優馬様は私を嫌いにならない。優馬様は私を嫌いにならない。優馬様は私を嫌いにならない。優馬様は私を嫌いにならない。優馬様は私を嫌いにならない。優馬様は私を嫌いにならない。優馬様は私を嫌いにならない。あんな女のせいで嫌われるなんてありえない。あんな女、死ねばいいのに。そうだ死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。どうせあの女は優馬様に触れたことすらない負け犬だ。そもそも触れてこようとしたなら私が排除してやる。それにしてもああ、優馬様の手暖かい……もうこの手は絶対に洗わないわ……あ! 待ってすごいこと思いついたわ! この優馬様と握った手でアソコをいじれば、実質、アソコを優馬様に触ってもらったことになるわよね! ……ああああああやばい! 濡れてきた……お、お、お、お、お落ち着きなさい私! 今は仕事中よ! 気持ちよくなるのは仕事の後よ! 生きてて良かった! 辛い男性護衛官の訓練を耐えて耐えて耐えて。本当に辛かったけど、優馬様と触れ合えて近くにいられるのならば、あの時の何千倍も苦しい訓練でも余裕で耐えらるわ! それくらい私は幸せ……ぐへへえへへっへへ」


桜井さんの目にハイライトがなくなって、死んだような顔になったと思ったら急に笑い出した。


めっちゃくちゃ怖い。

それに呟いていた内容も怖い。


俺はそんなことを考えながら、恐怖で体を震わせていると、車がちょっと急に停車した。


俺はそのブレーキの衝撃で前のめりになる。


その衝撃で俺の手は、桜井さんのもとから離れる。


「あっ!」


桜井さん悲痛な声が聞こえる。


そんなことを悠長に考えて衝撃に身を任せていると、橘さんが俺を衝撃から守ろうとして抱き締めてきた。 


俺は橘さんの胸にダイブしてしまい、柔らかい感触が頭に広がる。

慌てて離れようとするが、橘さんが俺を離そうとしない。


「大丈夫ですか優馬様! どこか怪我をされてませんか? なんでしたらこの私の胸をずっとクッションにして構いませんよ」


橘さんは心配そうな声で俺に聞いてくる。


「ありがとう橘さん。俺はどこも怪我していないから安心して! だからもう離してもらって大丈夫だよ」


「本当ですか? 嘘はいけませんよ? それとも私の胸では安心出来ませんか……? 」


「いや、そういう訳じゃ……」


「なら、もう少しこのままでいせてください」


橘さんは頑なに俺を離さない。

俺は困ってしまい、助けを求めるように桜井さんの方を見る。


桜井さんは、先程までのフニャけた顔ではなく羨ましそうに橘さんを見ていた。


ダメだ、この人は変態だった。

期待した俺がバカだった!


俺は諦めたように橘さんにされるがままになっていた。

すると、橘さんは俺の頭を撫で始めた。


俺は突然のことに驚いてしまう。 


しかし、橘さんは俺の驚きなど気にも止めず、優しい手つきで俺の髪をすいていく。


その手はとても暖かく、俺の心を落ち着かせてくれた。


「優馬様ってやっぱり男の子なんですね……女性と違って髪がツンツンしています。でもそれがまた良いです。とても可愛らしいです」


橘さんはそう言いながら、俺の髪を整えてくれる。


「優馬様、私に触られて嫌ではありませんか?」


「全然、むしろ嬉しいかな。なんだか心が落ち着く気がするから。でも……橘さんみたいな綺麗な人に触られていると思うとドキドキします……」


俺は照れながらそんことを言う。

子供みたいな扱いをされて恥ずかしいけど、それ以上に安心感の方が強かった。


これが母性というものだろうか……


「ふぇ!?  そ、そうなんですね……私なんかが触っても優馬様は喜んでくれるんですねうぅ……嬉しすぎて死にそうです……もう死んでもいいかも……でも死ぬ前に優馬様の髪の毛をもっと堪能したい……あ、そうです! 優馬様! これから毎日私が優馬様の髪をセットさせていただくのはどうでしょうか?」


あれ、橘さんも桜井さんと同じような雰囲気を纏ったような……


「えっと、それはさすがに悪いですよ! それに、毎日だと大変じゃないですか? 」


「いえ、私にとってはご褒美なので全く問題ありません!  それに、私の仕事は優馬様の護衛です! それには優馬様の生活をサポートすることも含まれているんです! ですので、遠慮なく私を頼ってください。優馬様のお世話をするのが今の私の生きがいであり、幸せなのです! 」


橘さんは力強く断言してくる。

そこまで言われると断りにくい……


それに、正直言って助かる。俺、朝起きるの苦手だし……


今まで自分でやってて、結構面倒くさかったんだよなぁ。


「わかりました。それじゃあお願いしようかな。よろしくお願いします」


「はい、任せてください!」


俺が了承すると、橘さんは満面の笑みを浮かべる。

その笑顔を見て、俺は思わずドキッとしてしまう。


それからしばらく、橘さんに髪をいじられて、俺はその間ずっと胸の感触を頭で味わうのだった。


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