精子ランクと男性護衛官
大浴場での修羅場から、三日ほどが経過したある日のこと。
ようやくこの世界の常識に慣れてきた俺だが、今だに退院できずにいた。
その理由は、事故による怪我のせいではなく俺の精子ランクがSSSだからいう意味不明なものだった。
どうやらこの世界の男性は精子にランクが付けられ、それによって優劣が決まるらしい。
ちなみに俺の精液ランクは、最上位であるSの更に二つ上という規格外のものだそうだ。
その検査のため俺の入院が長引いてるとのことだ。
この精子ランクによって男性は国からの補助金が出たり、仕事上の優遇措置などを受けることができるため男性たちは一応必死になっているらしい。
また、精子ランクが高いということはそれだけ子孫を残しやすいということなので、女性もより良い遺伝子を持つ相手を求めて躍起になるのだ。
この世界は女性の数より男性の数が圧倒的に少ない。
だからか知らないが、俺が入院して数日の間にも何人も看護師が夜這いに来たことがある。
その度に、雪奈が撃退してくれているのだが……
とにかく男性と言うだけで国にとって貴重な存在になり、精子ランクの高い男性はそれこそ王族並みの待遇を受けることができる。
王族並みと言うのは誇張でもなんでもなく、例えばAランクを超えた男性には男性護衛官が、24時間体制で常に側に控えるようになるという。
入院する前の俺はBランクだったようで男性護衛官は付いていなかった。
しかし、事故後の改めて検査すると規格外のSSSランクという結果が出て、俺の護衛のために急遽、男性護衛官が配属されることになったのだ。
そして今日、病室に二人組の女性がやって来た。
一人は二十代後半ぐらいの女性で、もう一人は十代後半の若い女性だ。
どちらもとんでもない美人であり、スタイルも抜群であった。
二人ともスーツを身につけており、前世でいう所のSPのような格好をしている。
二人は俺専属の男性護衛官として、これからずっと一緒に行動することになるらしい。
「初めまして。本日より優馬様の護衛を担当させていただくことになりました。橘紅葉と申します」
「同じく、桜井楓と申します」
「えっと、よろしくお願いします」
俺は、頭を下げてくる二人の迫力に押されながらもなんとか挨拶を返す。
片方の橘紅葉と名乗った年上の女性は、髪は赤毛のロングヘアー、目は切れ目、唇は薄く、鼻筋は通っている。
そして何よりも特徴的なのは、胸の大きさだろう。
おそらく、彼女のバストは100センチを超えている。
さらにお尻も大きく、腰はくびれていて脚は長い。
まさにボンキュッボーンなナイスバディなのだ。
もう一人の桜井楓は、銀色の髪をショートボブにした女の子だ。
瞳は大きくてクリっとしており、顔立ちも整っていてとても可愛らしい。
年齢は俺と同じ十六歳らしく、身長は百五十五センチほどで、少し小さめかなと思う。
だが、彼女も巨乳の持ち主で、ウエストは細く、ヒップは大きい。
まるでグラビアアイドルのような体つきをしていた。
そんな二人が、俺の護衛をしてくれるのか……なんか緊張してきたぞ。
「まず最初に言っておきたいことがあります。私たちは、優馬様に対して恋愛感情は一切持っていません。そのような特殊な訓練を受けおります。私たちの仕事は、優馬様の身の安全を守ることです。決して優馬様に危害を加えません。ですから、ご安心ください」
「はい……」
なんか、少し寂しな……
この世界の男性からしたら嬉しいことなのだろうけど、俺にとっては悲しい気分だ。
それにしても、彼女たちは本当に凄いな。
さっきから全く隙がない。
視線の動きや呼吸の仕方などから、周りを警戒していることが伝わってくる。
「それともう一つ、大事なことを言い忘れていました」
「なんですか?」
「優馬様の精子ランクがSSSであることは極秘事項となっています。このことは、くれぐれも他言無用でお願いいたします」
「なんでですか?」
「それは、優馬様の精子ランクが高すぎるため、他国などが優馬様を誘拐する可能性があるからです。優馬様を独占するために、優馬様を監禁したり殺そうとする者が現れるかもしれません。そうなれば優馬様の命の危険にも繋がりかねません。ですので、くれぐれも秘密にしておいてください」
そんな危険なことが起こるのか……
この世界って思っていた以上に物騒なんだな。
とにかく、この世界のことはまだよくわからないことだらけだから、もっと用心しないとダメだな。
俺は、改めてそう心に誓ったのだった。
「ですが、私達がついてるのでご安心ください。どんな危険からも必ず守り抜いてみせます!」
桜井さんが、頬を赤く染めながら力強く宣言してくれた。
「ありがとうございます」
俺はそんな彼女に、感謝の言葉を伝える。
すると彼女は、更に顔を真っ赤にしてしまった。
「あ、あの、私! ちょっと失礼致します! 何かありましたら、この番号で呼び出してください! 5秒以内に駆けつけますので!」
そういうと、桜井さんは足早に部屋を出て行ってしまった。
「ちょ、桜井さん! 貴方どこ行くの!」
「ちょっと、頭冷やすために、おしょと走ってきます!」
橘さんの制止の声を振り切り、桜井さんは病室から出て行った。
俺は、その様子を呆然と眺めていた。
一体どうしたんだろう?
急にあんな態度をとって……
俺は、不思議でしょうがなかった。
桜井さんが退出した後、病室に沈黙が訪れた。
すると、今度は橘さんが話しかけてきた。
その表情からは先ほどまでの緊張感が消えており、柔らかな雰囲気になっていた。
そして、どこか楽しげな様子である。
「申し訳ございません。あの子はまだ若いので優馬様のような魅力的な男性を目の前にしてしまうと照れてしまうんですよ。でも、安心してください。彼女は男性護衛官の中ではトップクラスの実力の持ち主です。いざと言うときはきっと優馬様を守ってくださるでしょう」
「そうですか……橘さんは照れたりしないんですか?」
気になったので聞いてみた。
すると、橘さんは少し恥ずかしそうな顔になりながら答えた。
「私ですか? もちろん……照れてますよ……ですが、幾ら四六時中一緒にいるからと言って私が優馬様を襲うことはありませんよ」
いや襲うって……この世界の女性は本当に性欲が強いんだな。
「でも……」
橘さんの顔つきが優しくなり、片目をとじ人差し指をたて口前にもってくる。
悪戯ぽい笑顔をみせ、彼女は話を続ける。
「優馬様の方がから襲ってくれるのはいつでも大歓迎ですよ♡ それと、私は未だに処女ですよ♡」
「えっ!?」
顔が熱くなり、自分の顔が赤くなっているの感じる。
橘さんは、俺の反応を見てクスリと笑った。
それから、橘さんは俺に向かってウインクをした。
「うふふ、冗談ですよ♡」
「はい……」
俺はドキドキしながら返事をするのだった。
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