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瑠璃の絶望

その後、少し落ち着いた彼女は涙を拭い、俺を教室の中へと招く。


その顔は赤く染まっているが、もう涙は止まっていた。


俺が教室に入ると、クラスメイト達は一斉にこちらに注目する。


そしてーー


クラス中の女子が「「「きゃゃゃぁ♡」」」と、悲鳴を上げた。


その悲鳴は徐々に大きくなり、女子達の黄色い歓声へと変わる。


「「「優馬様ぁぁぁ♡!!」」」


女子達の歓声がうるさ過ぎて、俺の鼓膜が破けそうだ……


「ねぇ、みんな!  この人が私の旦那様の如月優馬様だよ!」


「こら、真里ぃ!! お前は何を言ってんだ!?」


「そうだ! 嘘ついちゃダメだよ! 優馬様は私の旦那様だよ!」


「佳奈ちゃん違うよ! 私の旦那様だよ!」


「ちょっと待ちなさい、二人とも! 優馬は私と結婚するのよ!」


「違うわ! 私が、一番に結婚を申し込まれたの!!」


歓声が止まると今度は俺の奪い合いが始まった……


何が怖いって、俺は誰の旦那様では無いってことだ。


つまり彼女達は全員妄想で喋っているのだ……


いや待てよ……もしかして俺が転生する前の如月優馬が、本当に彼女達にプロポーズしていた可能性もあるのか……


うわぁ、そう考えるとめちゃくちゃ怖いな……誰が本当の事を言ってるのか俺には判断がつかないってことだろ?


あ……詰んだ。


もう、無理だ。

私はあなたの彼女よ、なんて言われても俺は否定できないのだ……


しかも相手は全員ヤンデレだという……


もう、包丁で刺される未来しか見えない。


これは俺の目標である『ハーレム作って青春謳歌するぜぇ!』を達成するのは絶対無理だな。 


なら新たな目標は……『ヤンデレに殺されないように60股かけるぜぇ!』に決定だ!


よくよく考えると……なんか俺って最低だな。


「貴方達、いい加減にしなさい!」


「「キャー! 礼ちゃんが怒ったぁ!!!」」


「当たり前でしょ! 今は自習だけど授業中でもあるのよ! それに……優馬は私の幼馴染なんだから、私が認める相手じゃ無いと優馬と結婚なんてさせ無いわよ!」


「なんで!? 礼ちゃん、おかしくない?」


銀髪オッドアイの美少女、真里が言う。

うん、俺もそれはおかしいと思うぞ、礼ちゃん!


「なんで幼馴染ってだけでそんな権利があるんだよ!」


今度は青い髪の瑠璃が反論する。


「幼馴染は家族みたいなものだからよ! 家族が結婚に口を出すのは自然のことよ!」


胸を張って豪語する礼。


「え? なら礼ちゃんは優馬様と結婚できないね。だって家族なんだもんね」


背の高い黒髪ロングの美少女が、笑いながら言う。


「バカね佳奈。幼馴染は結婚できる家族なのよ! だから、私は優馬と結婚できるの!」


一番常識がありそうな礼が実は一番常識が無いのかもしれない……


なんて俺が考えていると、教室にチャイムの音が鳴り響く。


「礼ちゃん! チャイムなったからもう自由よね! 優馬君に抱きついても良いよね?」


「ま、待ちなさい、真里! 授業が終わったからって抱きついて良いわけないでしょ!」 


「ええぇぇーーじゃ何ならしても良いのよ!」


瑠璃と真理は礼をジト目で睨んでいる。


「何もしちゃダメなのよ! だって優馬に何かしていいのは幼馴染の私だけなんだから!」


礼が勝ち誇ったようなドヤ顔で宣言する。


だがクラスメイトの女子達は、礼に同意することはなくブーイングの嵐だった。


「礼ちゃん、ズルい!」

「そうよ! 不公平よ!」

「そうよね、みんなもそう思うわよね?」


クラスメイトの女子達は口々に不満を言っている。


そんなカオスな雰囲気に包まれた教室に、更に事態を悪化させるようなカオスが乱入してきた。


「優馬様! 会いに来ましたわよ! 優馬様の妻たる私、天上院天音が!」


この世で一番『オホホ』という笑い声が似合う美少女、天上院が勢いよく教室の扉を開けた。


「て、天上院!? なんでここに!?」


「え?  だって私は優馬様の妻ですから! そして、妻として夫に会いに来るのは当然のことでは? これからは休み時間ごとにここに訪れますわよ!」


「えぇ! それは少し困るというか……」


「優馬様、もしかしてこのクラスの庶民と戯れるおつもりなんですか?」


天上院の言葉にクラスの女子達は敏感に反応し、空気が凍りつくを感じた。


クラスみんなの目が、絶対に許さないと殺気立っている……


「天上院、少し落ち着け。俺はクラスに馴染めるようにみんなとコミュニケーションを取りたいんだよ」


「クラスの有象無象より私達の交流を深めるのが先ですわ! ……そうですわよね優馬様♡」


天上院は俺に同意を求めるように、上目遣いで見つめてくる。

その可愛い仕草に俺は少し心が揺らぐ……そんな俺の反応を見た天上院は、さらに畳み掛けてくる。


「優馬様は私のものですわ♡ 誰にも渡しません」


クラスの女子達はまるで親の仇を見るような目で天上院を睨む。


明らかに天上院の挑発的な言葉と、俺へのアピールで教室には殺気が充満していた。


流石にこれ以上クラスの女子を刺激したらヤバい!

どうにかして天上院を止めないと……


俺が天上院を止めようと、口を開こうとした時、礼が天上院の前に立ち塞がった。


そして、礼は天上院を一瞥すると口を開いた。


「天上院さん、随分と好き勝手言ってくれたわね。優馬の妻とか言ってるみたいだけど……うふふ、妻とほざいている貴方はなぜ、指輪をしてないのかしら? まさか無くしたとかは言わないですよね?」


天上院は礼に挑発されて、美しい顔を歪ませ明らかにキレている様子だ。


一触即発の雰囲気にクラス中が息を呑む。


「お互いに愛し合ってるんですから指輪なんて必要と思わなかっただけですわ!」


「ふふふ、優馬は天上院さんの事なんて好きでも、愛してすらもないわよ」


「そんなはずありませんわ!だって私はこんなにも優馬様の事を愛してるんですもの!」


「天上院さん。もういい加減に認めなさい。あなたみたいな派手で奇抜な女は優馬の趣味じゃ無いわ! 私は優馬の幼馴染だから知ってるの! 優馬は黒髪が好きで、髪型はツインテールが好み! 清楚で、おしとやかな女性が好きなのよ! 私のようにね!」


うーん、嫌いじゃ無いけどドストライクじゃないかな?


ごめんね礼、昔の如月優馬の好みに寄せてたんだね……


そんな風に思っていると、クラスの女子が一斉にツイテールにし始めた。


だが瑠璃は、ショートカットでツインテールに出来ないため、絶望的な顔をして落ち込んでいた。


「そんなはずありませんわ! そんな地味な容姿の女より私の方が絶対に優馬様に似合うはずです!」


ちゃっかり天上院もツインテールに髪型を変えていた。


このままじゃ瑠璃以外の生徒が全員、髪型がツインテールになってしまいそうだ。


これはどこかで訂正した方が良さそうだな……


残りの花嫁『59人』

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