6万人のヤンデレと花嫁序列システム②
これで第一章の『入院編』は完結です!
ようやく正気を取り戻した橘さんが、再び話し始める。
橘さんの切り替えの速さに俺は少し呆れていた。
俺はそんな橘さんの言葉に耳を傾ける……
「つまりですね、優馬様にはこの特別行政特区に住む6万人の女性の中から、60人の花嫁を選んでハーレムを作って欲しいのです。この特区は優馬様のための国だと思ってもらって結構です。優馬様が、誰を選ぼうが自由なのです!」
橘さんは真剣な眼差しで俺を見つめる。
「俺の使命はなんとなく分かりました。でも……ハーレムって具体的にどんな風に作ればいいんですか?」
俺は首を傾げながら、橘さんに質問する。
すると、橘さんは自信満々に答える。
「簡単です……桜井、例のモノを持って来てちょうだい」
橘さんがそう言うと、桜井さんは頷き席を立つ。
そして、アタッシュケースを橘さんに手渡した。
アタッシュケースを受け取った橘さんは、それを俺の前に置いた。
俺はそのアタッシュケースを不思議そうに見つめる。
そんな俺に、桜井さんが説明を始めたのだった……
「こちらのケースに入っているのは60個の指輪です」
桜井さんは、アタッシュケースを開けて俺に見せてくれた。
そこには、大きなダイアモンドが輝く指輪が綺麗に60個入っていた……
俺はその指輪をじっくりと眺める。
「す、凄いですね……これが60個も……」
俺は、その指輪の綺麗さに見惚れてしまう。
「この指輪は優馬様が選んだ女性に渡すモノです。渡された女性は優馬様の花嫁になり、このビルに住むことになります。どうぞ優馬様、おひとつお手にとって見てください」
橘さんは、指輪をひとつ取り俺に手渡す。
俺はその指輪を受け取り、じっくりと眺めた。
ダイアモンドがキラキラと輝いている。
その輝きはいつまでも見ていられるほど綺麗だ……
だが、そのダイヤモンドに奇妙な刻印がされていることに気がつく。
それは、60と書かれた数字だった。
「お気づきになりましたか? その指輪には住むことができるフロアの階数が刻まれております。つまり、その60と刻まれた指輪を受け取った花嫁は、このタワーマンションの60階に住むことになるのです。そして、優馬様の花嫁として一生を過ごすことになります」
「じゃあ……そのケースには60から119の刻まれた60個の指輪があるってことですか? それで……俺の住む120階に一番近い119の指輪を貰った花嫁が正妻だと……?」
俺はまず6万人の中から60人の花嫁を選び、そしてその60人の花嫁の中から一人の正妻を選ばなくていけない訳だ……
あはは……なんか……もう、頭が痛くなってきたよ……
「はい、その通りです。優馬様が花嫁を選び、その花嫁の優劣を決める。これが花嫁序列システムです。この特区に住む6万人の女性は全員、優馬様に選ばれるの待っています。そしてこのビルに住みたいと心から願い、いつもここ見上げているのです。まるで神様にお願いするように……優馬様に選んでもらえるように、必死に祈っているのです。どうか彼女たちの思いに答えてあげてください」
橘さんは、真剣な眼差しで俺を見つめる。
俺はそんな橘さんに少し気圧された。
俺は少し軽く考えていたのかもしれない……
この特区に住む6万人の女性は、全員真剣なんだ……本気で俺の花嫁になりたいと願っているのだ。
俺は、そんな真剣な彼女達の思いに答えなくてはいけないのだ。
橘さんの言う通り、真剣にこの特区に住む6万人の女性の中から60人の花嫁を選ばなくてはいけない。
俺は、橘さんの言葉を深く胸に刻み込んだ。
それがこの世界での俺の使命なのだ……だったら……!
「分かりました……この特区に住む女性の中から、60人の花嫁を選びます! そして俺は花嫁になってくれた女性を全力で幸せにします!」
俺はそう宣言した。
「はい! 優馬様ならそう言ってくれると信じていました!」
そんな俺を橘さんは嬉しそうに見つめている。
そして、橘さんは桜井さんの方をチラリと見た。
すると、桜井さんが俺に指輪の入ったアタッシュケースを手渡す。
「では、優馬様。こちらのケースをお受けとりください。こちらに入っている指輪は偽装が出来ないように、特殊な技術で作成されております。そのため再び作成して、同じ指輪を60個用意することは不可能です。ですので、大切に保管してくださいね」
俺は、アタッシュケースを受け取り頷く。
そんな俺を見て、桜井さんはニコッと微笑んだ。
そして橘さんの方に向き直る。
「以上で、この説明は終了です。何かご質問はあるでしょうか、優馬様」
「いえ、大丈夫です」
「では、最後に私から優馬様にお願いがあります」
橘さんは真剣な表情で俺を見つめる。
「はい……なんですか?」
俺はそんな橘さんに返事をする。
「どうか……この世界では、優馬様の好きなように生きてください。私は、優馬様が楽しく自由に生きていること、それが一番嬉しいのです! それだけが私の望みです!」
橘さんは真剣な表情で俺に言った。
「……え? 今、橘さん……この世界って……!?」
「うふふ……私、そんなことおっしゃいましたっけ? でも優馬様、私はいつでもどこでも、どんな時でも優馬様の味方です。それだけは忘れ無いでくださいね♡ それでは私は、今後の警護スケジュールを学園の者と確認してきます……退出する無礼をお許しくだい。桜井、優馬様をしっかり守るのですよ!」
「は、はい!」
「いい返事ですね、桜井。それでは少しの間失礼をします」
そして橘さんは、意味深な言葉を残し去っていったのだった……
俺は橘さんの言葉の意味『この世界』という言葉が、ずっと気になっていた。
「橘さんも、もしかして……」
俺は一人、そう呟いたのだった……
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次の話から第二章の『学園編』がスタートします!




