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第33話 気づかなかった人



「黙れ。今は貴女達のサリーナに対する罪を明らかにする時だというのに、なんだこの茶番はっ」


「あら? ではそちらの女性が、ルイーザ様やわたくし達の婚約者を奪い取った罪はどうなりますの?」



 首を僅かに傾け、逆に問いかける。


 こちらとしても仕掛けられた以上、一歩も引くつもりはない。



「被害者はわたくし達の方ですわ」


「またそうやって!?」


「周りをご覧くださいませ、殿下」


「……何?」



 声を荒らげるランシェル王子の言葉を遮り、冷静に指摘するシルヴィアーナ。


 視線を流した彼女につられるように、周囲に目をやりハッとする。



 その時になって初めて彼は、様子を庇っていた貴族達の顔をしっかりと見たのだった。


 皆一様に、冷ややかな視線を向けてくる。


 言葉にして詰ることこそなかったが、彼等の表情からはランシェル王子達の振る舞いを非難する姿勢がありありと感じられた。



「なっ!?」



 信じられないと言うように唖然とするランシェル王子。



「……これこそが答えなのですわ。外国の方も招いたパーティーで、私情を挟んだ騒動を起こされてはこうもなりましょう」


「わ、私はそんなつもりでは……」


「それにいくら貴方様が庇おうと、ボートン子爵令嬢の罪は無くなりませんわ」



 自分達の味方がいないという状況に思わず怯み、言葉を詰まらせた彼に更なる現実を突きつける。



「彼女の罪はこれだけではありませんし、ね」


「何を……言っている……?」



 シルヴィアーナの言うことが心底、理解出来ないと言うように眉を潜める。


 今度こそ本当に分からなくなったのだ。


 彼女が指摘する、()()()()()()とやらが……。



 それは王子王子だけではなく、側近達も同様だった。


 次は何を言い出すつもりだ、と警戒した表情を浮かべてこちらを見てくる。




「本来なら、彼女の罪を暴く役割は殿下がなさらなければいけなかったこと……例え、殿下がお気づきにならなくとも、せめて側近であるジョナス様がお気づきになって対処なされるべきでした。殿下の為にも残念でなりません」


「私が、ですか? 言っている意味が分からないのですが……?」


 突然、名指しで非難されて戸惑うジョナス。




「ではシルヴィアーナ様に代わり、ここから先はわたくしがご説明致しますわ」


 そう言って令嬢達の輪の中から一歩前に出てきたのは、ジョナスの婚約者であるアンジュリーナ・ロウ伯爵令嬢。


 普段は大人しく控えめな人なのだが、彼女も自立した令嬢の象徴であるシルヴィアーナやルイーザの友なのだ。


 いざと言うときにはしっかりとその場の空気を掌握し、取り仕切ることの出来る芯の強い女性でもあった。


 背筋を伸ばして凛と立つと、己の婚約者であるジョナスと向き合う。



「アンジュリーナ?」


「ジョナス様。貴方様のお家は魔法の専門家でいらっしゃる。お父上であられる今代のハーバー伯爵も魔法省の長官をお務めですわね」


「そうですが……」


「そして、貴方様自身も、大変魔法が得意でいらっしゃいます」


「それがどうしたと言うんです? 態々確認しなくとも、皆が知っていることじゃないですかっ」



 分かりきったことを聞くアンジュリーナの意図が分からず、イライラしながら睨み付ける。






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