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第32話 一人目の断罪終了



 感極まった様子の彼女を見て満足そうなアデルヴァルト。


 腰に腕を回し、ソッと引き寄せる。


 彼としてはやっと手に入れた意中の女性を腕の中に閉じ込め、思いっきり抱きしめたい気持ちだった。



 しかし、ルイーザの友人達から放たれる無言の圧力に屈して、渋々思い留まった。


 女性達を、それも彼女の大切な友人を敵に回すつもりは毛頭ない。




「お見事でしたわ剣聖様。これからも末永く、わたくし達の大切なお友達をよろしくお願いしますわね?」


 ニッコリと微笑んで、バカと同じ扱いをしたら許さないとプレッシャーをかけたシルヴィアーナ。


 さすがに第一王子の婚約者だけあって肝が座っている。


 相手が剣聖であっても一歩も引かないその様子を好ましく思い、ニヤリと口角を上げる男。


 そんな表情も野性味溢れたイケメンがすると、一々魅力的である。



「勿論です、バーリエット公爵令嬢。貴女に認めていただけるよう、精進しますよ」


「まぁ、謙虚なお言葉ですこと」



 黒豹のように冷酷で獰猛なところもある人が、彼女の言葉に神妙に答える姿に思わず微笑む。



「ルイーザ様の大切な方ですもの、わたくしのことはこれからシルヴィアーナとお呼びくださいな」


「光栄です、シルヴィアーナ嬢」



 ルイーザを慈しむ気持ちは、二人とも同じだった。


 先程までの張りつめた空気が消え、皆に顔に笑顔が戻る。


 そのままの流れで祝福ムードになるかと思いきや、そうはならなかった……。




「何を、和んでいるんだ……」



 ようやく、予想外の事態に固まっていたランシェル王子が起動したらしい。


 サリーナと取り巻き達はまだ、腰を抜かしたままのようだが……。


 マニュアル以外のことが起こると、すぐに対処できず固まってしまう王子にしては上出来と言えるだろう。



「あら、お友達の幸せを祝福することがそんなにいけないことでして?」



 澄まし顔で平然と答えるシルヴィアーナ。



(そうでした……今はまだ断罪の途中でしたわね。相手をしなければいけないのは、殿下を含めて後三人……)



 せっかくのお祝いムードに水を差されたことは腹立たしい気持ちもある。


 だが、こちらとしてもまだ仕掛けたばかり。


 向こうから軌道修正したいと言ってくるなら乗ってやろうと、即座に気持ちを切り替えた。




 勿論、そんな思いを顔には出さない。


 ルイーザが暴走したことについても、一切謝るつもりはない。


 貴族とはそう簡単に、弱気な態度を見せてはいけないのである。


 サリーナのように、気軽に人前でシクシク泣いて弱腰なところを見せるなど、もっての他なのだ。






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