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第17話 盲目的

 


「ひどい侮辱だわっ。まるでわたしを……ち、痴女みたいに言うなんて!?」


「え」


「えぇ!?」



 とっても心外で傷つきましたという顔をして反論されたが、違うとでも言うつもりだろうか?


 思わず白目になってしまうのは許してほしい……。


 だって、あれが痴女でなくてなんだというんだ。



 今だってデザインは可愛らしいが、たわわな胸が零れ落ちそうな程に深い襟ぐりのドレスを着て、誘惑する気満々ではないか?


 胸元を覆う、ふんわりと幾重にも重ねられたレースのおかげでむき出しでこそないものの、透け感のある素材のため動く度にチラチラと見えそうで見えないあたりが余計に男心を唆るのだろう。


 あれだと身分に関係なく、どんな男でも敏感に反応してしまいそうである。



 つい先程もランシェル・ハワード第一王子相手に、ベッタリ引っ付き胸を押し付けて愛嬌を振りまいていたばかりだ。


 シルヴィアーナ達に見せつけるかのように、思いっきり女の武器を使っておいて惚けるつもりか……。


 今更、被害者ぶっても無理があるだろう。呆れてしまう。




「……痴女みたいなお振る舞い、されてましたわよね、皆様?」


「ええ、シルヴィアーナ様。間違いなく。わたくしもこの目でしっかりと拝見しましたわ。別に見たくて見たわけではありませんでしたけれども、目の前で行われましたので仕方なく……でしたが」


 淑女としては答えにくい問いかけに、言いにくそうに恥じらいながらも真っ先にダフネが声をあげてくれた。


「わたくしもですわ。ダフネ様がおっしゃるように……その、ご立派な双丘を殿方のお体にムギュっと押し付けられていては見逃しようもありませんもの。思わず顔が赤くなってしまいました」


「まともな神経をしていればそうなりますわ。人前であっても気にする素振りもなく、その……破廉恥で婀娜っぽい仕草をなさいますでしょう? まるで秘め事を見せられているようで、目にするのも恥ずかしくって……」


「他にもありましてよ。いつも悩ましげにクネクネと体を動かされて、その度に大事なところがユサユサとなるのですわ。あまりに勢いよく揺れるものですから、いつかポロリと零れ落ちてしまうのではとハラハラしてしまいましたもの」


 サリーナ相手に淑女の嗜みをしっかり守って話していては通用しないと、大人しいアンジェリカさえ直接的な表現を使って援護してくれる。




「皆様、ひ、ひどいわっ。そんなことやってませんってば! どれだけわたしを傷つけたら気が済むの!? 意地の悪いことばっかり言うシルヴィアーナ様達の言葉なんて信じないでくださいっ。サリーナを信じて、ランシェルさま!」


「勿論、信じるよ。そばにいた私が一番よく知っているからね、君が男に慣れていないのは。そうだろう?」


「ううっ、ラ、ランシェルさまぁ……」


「だからほら、そんなに不安そうな顔をしないで?」


「ぐすっ、は、はい。ごめんなさい……」



 ハラハラ涙を流しながら上目遣いで切々と訴えてくるサリーナを、相変わらず甘やかし、優しく慰めるランシェル王子。


 彼女の言葉を鵜呑みにし、盲目的に受け入れている。




 もう何を言っても無駄なのかと憂鬱な気分になっているシルヴィアーナの気持ちなど、サリーナに夢中の彼にはどうでも良いことなのだろう。



 ――まるで大事な花を汚す、害虫を見るような目でこちらを睨みつけてくるのだから……。






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