以心伝心
コーヒーを売りたいという動機も去ることながら、カーラらしき人影が見たというのが動機でもある。
そこでいろんなことがあった。
そのいろんなことを話そうとすると、シムゥンがシームァの顔を凝視していた。
「もう気づいた?」
「シームァ? 目、どうしたの?」
「ちょっと長い話になるけど……」
シームァはルウの地での出来事を話すのだった。
*
「え? 襲われた?」
シムゥンの表情が固まる。
普段穏やかなシムゥンだが、その表情はわなわな震え鬼気迫る顔になっていた。
「えぇ、それで親切な人に……」
と続けるシームァだが、シムゥンは聞く余裕もないくらい激怒していた。
「そいつ、どこにいる?」
「それがどこにも……?」
「そいつ、今すぐ八つ裂きに……」
「安心しろ。もうとっくにそうした」
「………」
リムの言葉にシムゥンは沈黙する。
高ぶった感情が突然治まることはない。
だが、その怒りの対象がすでに消えている? どういうことだろうか?
シムゥンはどうにか感情を押さえ込む。
「シームァ、ちょっとごめん。直接聞くから」
シムゥンはシームァの左肩に手を置いた。
シムゥンの脳裏に、リムの経験したことが伝わってくる。
この頃のシムゥンは触れるだけでリムと以心伝心で心情を伝え合うことができた。
「……えぇ」
シームァは少し戸惑う。
リムは、シームァが着替えたりするところも見てるはずで、そういうのは伝えたりはしないだろうが、だとしても抵抗はある。
シムゥンがわかったこと。
栗色の髪の男がシームァに襲い掛かって来たこと。それをリムが返り討ちにしたこと。黒色の髪の男に助けられたこと。その男が数日かけてシームァの目を治したこと。それらが伝わって来た。
シムゥンは複雑だった。
シームァを一人にするんじゃなかったとか、リムがついていながらとか、結果的にはシームァが本来の目を取り戻したこととか、でもそれは魔法使い同盟が無能の証拠でもあった。
今や魔法使い同盟のトップクラスといっても過言ではないシムゥンにとって割り切れない問題でもあった。




