別れ
やはり不思議な男だ。
どうしてこうも疲労困憊しながらもシームァの目を治してくれたのだろう?
シームァに手を出さないのは、心底惚れこんだからだろうか?
シームァの胸の高鳴りを感じる。シームァもまんざらではなさそうに思えた。
この二人が恋仲になれば、どうしてもリムも介入することになる。
――そうなれば楽しいだろうな。
ケイの魔力も気に入った。
リムはシームァが眠った後も腕枕で眠るケイを見ていた。
ケイの寝息を聞いて、ケイの鼓動を感じていた――。
余談だが、シームァの胸が高鳴りは別人に対するもので、それにリムが気づくのはもう少し先のこと――。
* * *
次の日、別れとなる。
ケイはバイオリンを弾いていた。
音はよく聞こえないし、音楽の良し悪しなんてよくわからない。
だが、嫌な感じはしなかった。
心地いいを通り越して、うたたねをしてしまっていた。昨夜の夜更かしがよくなかったのかもしれない。
気づいたのは、ケイと別れた後。
既にシームァはケイに見送られルウの地を出ていた。
ケイがいないことを、リムは残念に思っていた。
シームァは砂漠の中を歩き、北のネトク鉱山へとたどり着いていた。
そこにシムゥンがいる。
ネトク鉱山付近は集落があり、人がまばらに生活している。
すれ違う人と会釈しつつ、シームァは進む。
「どっち?」
言いながら、シームァは左肩に手を当てる。
「あっちだ」
シームァはリムの声が聞こえてるわけではなかったが、言わんとしてることは何となくわかった。
「頼りになる子ね……」
「子ども扱いするな」
どういうわけか、シームァという女はリムのことを小さな子どものように思い込んでいた。
具体的な姿かたちがあるわけではないから、シームァがイメージでそう思い込むのも無理ないのかもしれない。
リムは、自身のことは成人男性だと認識していた。
とはいえ、リムの訴えが聞こえないシームァにそれを説明するのは難しい。それにそんなことは大した問題ではない。




