不思議な男
廃墟同然の家に住んでるくせに、料理上手?
意外な一面はまだあって、バイオリン弾くのが上手いらしい。どんな曲かわからないリムは残念に思った。
素顔を見られるのを極度に嫌い、出かける時はピエロのお面をつけていた。
その割に、シームァには簡単に顔を晒している。
そして、毎晩のようにシームァと添い寝する割には、そういう行為をする訳でもない。
冷え性だったり寒がりというわけでもなさそうだ。
はじめのうちはわからなかったが、どうやらケイはシームァの目を治そうとしていた。
――無駄なことを……。
ザーグ研究所だって魔法使い同盟にだって成し得なかったことが、このケイという男一人にできるものか!
だが、ケイはそれをやってのけた。
常人に比べれば弱い視力だが、シームァの左目は見えるようになっていた。
それどころではない。魔力が見えるらしいのだ。
――なんという男だ!
リムは感嘆していた。
シームァ本人の魔力が見える視力。
研究所も魔法使い同盟も気づかなった能力をこの男は呼び覚ましたのだ。
感覚を共有しているわけではないので、シームァの見ているものがリムに見えているわけではない。
だが、一瞬だけシームァが見たケイの魔力が、リムにも見えた。
強い魔力ゆえ、それができたのかもしれない。
黒くて透明な光が虹のように光る。
かつてジュピターの魂と一緒にいた、あの暗闇での空間を思い出す。寒い闇の中でもどこか温かみがあって安堵感があった。
矛盾する奇妙な感覚。だけどすごく心地いい。
あの感じに似てた。
*
シームァの目を治したケイはぐったり眠り込んでいた。
ふと目を開ける。
しばらくして、こんなことを聞いてくる。
「彼かな、彼女かな、名前は?」
「リム」
シームァがケイにそう告げた。
「リム君ね……」
そうつぶやきながら、ケイはシームァの左肩に意識を集中させる。
そこにいるものの存在を確かに感じながら、また眠りに落ちていく。
ケイがはっきりとリムのことを認識しているのを感じ、リムは妙な満足感があった。




