説教その3
「はい、心得ております」
イオはシムゥンの言葉に深く頭を下げるのだった。
「もういいから」
シームァが止める。
「せっかくだから、ケーキ食べようよ」
と、シーザーがロールケーキを一口、口に入れる。
「……ぐふっ」
途端に口を押さえ、何とも言えない表情になる。
「シーザー?」
シーザーを気遣いつつ、シムゥンも一口食べてみる。
「なに、これ?」
甘いのだが、その甘さを追い抜く苦さがある。苦いだけじゃなく、渋くて、時折、辛いような刺激が舌に来る。
ジーラも、シムゥンのロールケーキをちぎって食べてみる。
「これは山菜?」
イオは小さくなって説明する。
「特製の山菜ロールケーキなのですが……」
「特製? ちゃんとアク取りした?」
「……品種改良した山菜でして、アク取りの必要のないものです」
「品種改良?」
「……それは内密事項ですので」
イオは、シムゥンの耳元で小声で説明する。
魔法使い同盟の研究中の食品のようだ。
「ふうん、そう? 内密事項ね……って誤魔化されるか」
シムゥンがまた怒りだしたので、イオはただただ頭を下げていた。
「なんで、ちゃんと味見しないの? 失礼なことしたらタダじゃおかないってさっき言ったばっかり!」
「……美味しいわよ」
と、シームァがロールケーキを食べていた。
「山菜の香りがして、とても個性的な味だわ」
「そうでしょう?」
イオは嬉しそうに、シームァに同意を求める。
その様子に、お茶目でちょっと感情表現が変わった人かしら、とシームァは思ったり。
「シームァ。食べないで、お腹壊しちゃう」
シムゥンは、ロールケーキを下げるようにイオに指示する。
イオは三人分のロールケーキを持って、そのまま退室した。
ちなみに、ステラはとっくに邪神の間から出ていた。
「かわりのお菓子を……」
とジーラが指を鳴らす。
テーブルの上に、箱菓子が出現する。
以前、ゼネバが持って来たお菓子だった。
「有り物だが」
という割にジーラは得意げだった。イオに対抗してわざわざ魔法で出現させたのだろう。




