蛇足
シームァの背中に抱きついてる女に気づく。
「えっと……?」
誰だっけ? と言うのは、さすがに失礼な気がする。
ここまで密着しているからには、親しい相手なんだろう。
はっと思い出す。
シムゥンはその女を知っている。
以前、ゼネバと一緒に会いに来た女だ。
あの時は隠していた魔力を見抜けなかったが、今はこの女のすごさがありありとわかる。
強い魔力。
加えて、男どもをたちまち虜にしてしまう妖しい魅力……
その魅力で何人もの男をダメにしてきた女……
シムゥンよりも、ジュピターがこの女をよく知っていた。
「……ルウ!」
かつてのジュピターの仲間がこの女にたちどころに惚れてしまい、とんでもない修羅場になったことがあった。
思い出したくもない。
女神と称され賛美されてもいたようだが、ジュピターからすればただのヤリ〇ンだ。
そこまで思い出して、シムゥンは気づいた。
ルウの今の姿はかつてとは別人だ。
ジュピターがシムゥンとして生まれ変わったように、ルウもまた生まれ変わったに違いない。
たまたま、自分は前世と同じ状況になって思い出しただけで、この女は前世の記憶を持っているのだろうか?
持っていたとしたら文句を言うのも筋が通るが、全くの別人としての人生を歩んでるんだとしたらこのまま別人として接するべきだろう。
だが、それを確認するにもどう切り出せばいいのか?
迂闊なことを喋ったらやぶへびになりかねない。
どうにか、この女が前世の記憶があるか確認する方法がないか?
逡巡するシムゥン。
だが、カーラから意外な答えが返ってきた――。
「そうよ」
カーラは肯定した。
シムゥンに緊張が走る。
「ルウ族のカーラよ。よくわかったわね」
「ルウ族? カーラ?」
シムゥンはほっとしたように力が抜ける。
「あ、そうだ。カーラさんだった」
*
にこやかに微笑むカーラ。
シムゥンもとりあえずにこやかにしておくが、この女と関わるのはよそうと思った。
蛇足になるが、今のルウがヤリ〇ンじゃないことを祈るばかりだ。




