脳裏
一緒に研究所に入るよう促され……
「そういうのはちょっと……」
「そういうのってどういうの?」
カーラの顔が近い。
「あの?」
カーラの腕に力を感じる。
このまま押せばいける!という確信があるようだ。
しょうがないと思いつつ、シームァはゲートの方へ振り返る。
「あれ? シーザーがいる」
と、指さす。
「え? 本当?」
カーラがゲートの方に目をやると、シーザーに気づいた。
「シーザー」
名前を呼びながら、そちらの方へ行くのだった。
*
ゲートの前で、涙ぐんでいたシーザー。
名前を呼ばれハッとする。
「シーザー」
名前を呼んだのは、カーラだった。
「あ、カーラ。研究所にいたんだっけ」
「そうよ。ねぇ? シーザーって好きな子とかいるの?」
「えっ!?」
シーザーは今まさにその好きな子のことを思い出し、泣きそうになっていたのだ。
「あの、ちょっと……」
後ろからついてきたシームァは、カーラの服を引っ張る。
シーザーは泣いてたように思う。視力のいいシームァにはそう見えた。
おそらく、その子のことを思い出していたんだと思う。
そんな心境のシーザーに、少し無神経な質問だと思ったのだ。
シームァが小声で催促するような喋り方なものだから、カーラは誤解する。
「いいことする気になったの?」
「じゃなくて……」
「照れなくていいわよ」
カーラは、シームァの手をがっしり握る。
「悪いけど、そんな気分じゃないの」
シームァは、そっとカーラの手を離す。
カーラに好意はあるし、シーザーを傷つけたくない気持ちもあるし、だけど今一番強いのは弟シムゥンのことだ。
シムゥンは無事だろうか?
ふと、シームァの脳裏にシムゥンの姿が見えた。
シムゥンは困ったような顔をしていた。
――もしも、姉が他の女性に言い寄られている場面を目撃したら、そりゃ困るわよね。
ふと、シムゥンが人差し指を振っているように見えた。
こちらの考えを否定しているようだ。
――え? この恋、応援してくれてる?
いやいや、そんなわけはない……?




