散歩
* * *
シームァは研究所の敷地を散歩していた。
いつもの見慣れた風景でもなんだか色あせて見える。
いつも歩いてる場所だが、どうにも現実感がないようなおぼつかないような足取りになる。
シームァは弟シムゥンのことが心配だった。
数日経っても、あれから何も連絡がない。
何かあればさすがに連絡はあるだろう。連絡がないうちは何も大事にはなってないということだろうか。
だが、以前会ったシムゥンはどうにも様子がおかしい。
何か大きな病気にでも……で、なければいいのだが。
ふと、ゲートの方にシーザーが見えた。
シーザーは目をこすっている。
――泣いてる?
シーザーは従姉弟にあたる。健康に生まれ一般家庭に引き取られたシーザーとは、なんとなく距離を置くようにしていた。
それでなくても、今、泣いている状態ならそっとしておこうと思った。
くるりと振り返ると、驚いた顔のカーラがいた。
実は、カーラは目隠して『だーれだ?』という古典的なイタズラをしようとしていた。ちょうどいいタイミングでシームァが振り返ったので苦笑いになる。
「シームァ、風邪引くわよ」
などと取り繕うようなことを言ってみるカーラだった。
「……そうね。中に入るわ」
シームァは完全に意表を突かれたような気分だ。
カーラはここ最近はいつもゼネバと一緒にいるのに、一人でいるなんて珍しいと思った。
「ゼネバさんと一緒じゃないの?」
「ゼネバは、あのカイって人と打ち合わせだって。なんかあの二人の関係が気になるのよね?」
と、カーラは不機嫌そうな表情になる。
「あの二人、どういう関係なの? 知らない?」
「さあ、深くは……」
「そうだ。今ならゼネバも見てないから、今のうちに……」
と、カーラがシームァの肩に手を回す。
「……いいことしようか?」
シームァはドキドキしてしまう。
カーラに好意を抱いているのは事実だが、だからといってそれを受け入れるのはまた別な話だ。
それに今は弟のことで頭がいっぱいの状態だ。こんな状況でそんな気分にはなれない。




