夢のよう
*
その日の夕食は、ジーラがやけに『食べたいものあるか?』『何かしたいことがあるか?』そんなことを聞いていた。
またゼネバに会いたい、そんなことを喋ったように思う。
ゼネバとは少し前に遭難していた女性だ。女性ながらにアンドロイドハンターを生業にしている。
失礼にもジーラが産業スパイじゃないかとか言い出し、結果的にジーラとシムゥンが保護する形になった。
美味しそうに山菜を食べていたのが印象的だった。
「他には? 何かあるか?」
ジーラが問う。
ジーラはなんでこんなことを言うんだろう? ぼんやりと不思議に思った。
だが、シムゥンはそんなことではなく、自分の願望を語っていた。
シームァとシムィンにも会いたい、そんなことを口走っていたような気がする。
シームァは姉で、シムィンは兄だ。
シムィン、シームァ、シムゥンはザーグ研究所で生まれた三兄弟だ。
健康なシムゥンは魔法使い同盟のジーラに引き取られた。
シームァには最近会ったが、兄のシムィンにはここのところ会ってなかった。
実の兄弟なのだし、たまには三人そろって話でもしてみたい。
シムゥンの話に、ジーラはうんうん頷いていた。
頭の中がどうもぼんやりしている。
頭の中がふわふわして現実味がない。
この時の出来事をシムゥンは夢でも見てるかのように感じていた。
* * *
次の日、起きるとまた夢のような出来事が起きていた。
会いたいと思っていたゼネバがいたのだ。
驚いているシムゥンに、ゼネバは作り笑いのような表情だ。笑顔は苦手そうなのはあいかわらずだと思った。
「今日はお招きいただき、ありがとう」
ゼネバがシムゥンにお土産を渡してきた。
「急だったから。口にあえばいいけど」
それは箱入りのお菓子だった。
確か港町で売ってるお土産で、シムゥンは食べたことがある。
「ありがとう。僕、これ大好き」
そう答えたつもりだが、どうも呂律が回ってないような気がする。