覚悟
敵の悲鳴も聞こえなくなり、ジュピターは満足げだ。
だが、そこまでだった。
ジュピターはそのまま動かなくなった。
――ジュピター、ジュピター!
シムゥンが、死に際のジュピターと同じことをしている。
つい感情的になってしまうリムだった。
――ジュピター、やめろ! 死ぬぞ!
その声が聞こえたのだろうか?
シムゥンはリムのことを掴む。
リムには、それがまるで『大丈夫』と語ってるように感じられた。
シムゥンはこともなげに、ためらうことなく絵の中の世界へと足を踏み入れるのだった。
*
着いた場所は暖かい場所だった。
――ここ、天空岩だな?
かつてのリムがジュピターと一心同体だった頃、来たことがある。
最初のうちは驚いてた様子のシムゥンが、妙に落ち着いた態度で辺りを見回している。
リムは、そんなシムゥンを見守っていた。
そう遠くない将来また一心同体になれる――そんな気がした。
――ジュピター、覚えてるか? この場所?
だが、リムが問い掛けても、シムゥンは答えない。
シムゥンは空を見ていた。
そんな感動するような空だろうか? リムには情緒とか情景いうものがよくわからない。
――なあ? ジュピター? ここに住むつもりか?
それも悪くないと思う。
魔法使いたちはジュピターを邪神と呼び、名前すら覚えてないような連中だ。
そろそろ見切りをつけてもいいんじゃないかと思う。
ジュピターとならこの土地でも暮らしていけるだろう。
意思確認をしておこう。
――おい? ジュピター?
だが、やはり聞こえてないようなのだ。
――ジュピター、聞こえないのか?
そこで何か悟りを開いたような心境になる。
確かにジュピターの魂ではあるけれど、もうジュピターはいない……
そう思うと寂しい気もしたが、しかたない。
ジュピターはもういない。
リムは覚悟を決めて、その名前を口にした。
――おい、シムゥン。
「うわ、喋った!」
驚いたことに、その瞬間にリムの声が聞こえたらしい。
シムゥンは、剣が喋ったと大騒ぎしている。




