灼熱
それから、シムゥンは何故か聖剣を片手にあちこち出かけるようになった。
洞窟内を探索したり、かと思えば邪神の間でぼうっとしていたり。
邪神の間で何か考え事をしているようでもあった。
何か思い出そうとしてるようだが、何も思い出せないようで、ただぼんやりしてるようにも見えた。
――この朴念仁、早く思い出せ。
そんなリムの声はやはり聞こえてないようなのだ。
――ジュピター。早く!
*
シムゥンは邪神の間で絵を見ていた。
思えば、かつてのジュピターもその絵をよく見ていた。
リムの記憶にあるジュピターはとても絵が好きだった。絵画鑑賞が趣味といってもいいくらいだ。
絵を見ては微笑んでるのか、時には怒ってるような表情を見せたり、感心してるようでもあり。
リムは懐かしい気持ちでシムゥンを見ていた。
――自分がジュピターであると思い出したか?
だが、やはりシムゥンにはリムの声が聞こえてないようだった。
リムはハッとした。
まさに、この場所でジュピターは心臓を貫かれたのだ。
どうして、そんな重大なことを忘れ去っていたのだろう?
ジュピターが壊れた瞬間がそれだけショックだったということか。
心臓を貫かれたジュピターは……?
リムは思い出す。
敵と戦っていたジュピター。
心臓を貫かれ、床に片膝をつく。
床に絵が散乱していた。
敵がジュピターにとどめをさそうとした時、
ジュピターは逃げるでもなく、なぜか手で四角を作るジェスチャーをした。
リムはぎょっとした。
シムゥンがまったく同じジェスチャーをしているのだ。
――おい、ジュピター。やめろ!
落ちていたのはただの絵画ではなかった。
それこそ、異世界へのゲートだったのだ。
その絵の向こうは、灼熱の溶岩だった。
ジュピターが異世界へ敵を落とす。
敵はもがいている。絵の淵に手をかけ、這いあがろうとする。
その絵をジュピターが破壊した。
――そんなことより自分の修復を優先しろ!
絵であるゲートを破壊したことにより、敵はもう戻って来ることは叶わない。




