池
シムゥンは絵を凝視する。
海の絵が見えた。
――あれ?
気のせいかと思った。
だが、気のせいではなかった。
黒い紙だったはずが、そこに海の絵があったのだ。
シムゥンはじっと絵を見る。
ふと、絵画の前で人差し指で四角を作ってみた。
その四角を覗き込む。
海が動いていた。
土の匂いや、水の匂い……、それらが風にのってやってくる。
シムゥンは今度は指で大きな四角を作った。
そして、その四角を通り抜けると、絵の中の世界だった。
いや、絵の中の世界ではなく、絵それこそがゲートだったのだ。
穏やかな海だ。
シムゥンの住んでる国の冷たい海ではなく、波も少ない。
――ここはどこだろう?
シムゥンは辺りを見回す。
辺りには誰もいない。
シムゥンは座り込み、しばらく海を見ていた。
* * *
――これ、海じゃなくて、池だ。
シムゥンは漠然とわかった。
海にしては、波が少ないと思っていたのだ。
ふと、そんな波のない水面の上に鳥の影が映る。
空を見上げると、それは人のように見えた。
背中に翼の生えた人物が飛んでいた。
――竜人……?
ジュピターは竜人に会ったことがある。
『また来いよ』
そんな言葉が思い出される。
それは誰だったろう?
『翼のある竜人はゲートを通れないんだ』
だから、また来いって言ってた。
誰かは思い出せないし、ジュピターは適当に返事してたように思う。
まさか生まれかわってから、またここに来るなんて。
――ここ、天空岩だ。
天空岩とは宙に浮かぶ大きな岩だ。
そこに竜人たちが暮らしている。
ジュピターが前に来たときは、竜人がもっとたくさんいたような気がする。
ゲートを通って来たジュピターを見ても、さほど珍しがるでもなくあっさり普通に話しかけられた記憶がある。
今は相当住人が少ないようだ。
――移住でもしたのかな?
宙に浮かぶ岩なんて、どう考えても暮らしにくそうだ。
そんな事を考えてるうちに、空を飛んでる竜人はかなり遠くの方へ飛んで行ってしまった。
大空に遠くに見えるその姿は小さく、なんだか儚くも見えた。




