詠唱
「ジーラ、具合が悪いの?」
シムゥンの言葉に違和感があった。
「体、弱いんだから、無理しちゃダメだよ」
その言葉にぞっとした。
ジーラは今は健康だ。
体が弱かったのは子どもの頃の話で、その事実をシムゥンが知るはずがないのだ。
ジーラの子どもの頃を知っているとすれば、それは……?
「……邪神様?」
それを聞いて、シムゥンはふうとため息をついた。
「だから、それ悪口だから。名前教えただろ?」
「ジュピター?」
ジーラは、まさかと思いつつ子どもの頃に聞いたその名前で呼んでみる。
「うん!」
シムゥンはにこりとする。
「何回説明しても、誰も僕の名前呼んでくれないんだ」
ジーラはシムゥンを強く抱きしめる。
「違う! お前はシムゥンだ!」
「……シムゥン?」
シムゥンは不思議そうにつぶやくのだった。
*
「えーっと……?」
シムゥンは考え込む。
ジュピターが壊れてしまった記憶がある。
まるで自分が体験したかのようだった。
こんな記憶があるのは、さっきの詠唱と関係があるのだろうか?
「ねえ?」
シムゥンは、イオたち魔法使いに催促する。
「さっきの詠唱もっとやって」
「何を言ってるんだ」
ジーラが慌てて止めるが、シムゥンは「平気平気」と軽い返事をした。
呆気に取られるイオたちだが、シムゥンがイオをじーっと凝視する。
「なんでジーラは年とってるのに、イオはそのままなの?」
シムゥンの言葉に、イオもジーラもぽかんとしていた。
「レダやエウロパはいないの?」
レダもエウロパも、ジュピターの部下のような仲間のような存在だ。
ふと、シムゥンはジオに目が釘付けになる。
「え!? 僕!?」
シムゥンは自分の体を見た。
何かを確認するように、右手で左手をさすり、左手で右手をさすり、胴体を確認してみて……
どうにも違和感がある。
「鏡見せて」
シムゥンの望みを聞いたのは意外な人物だった。
ジオがシムゥンの元に鏡を持ってきた。自分を真っすぐ見ながら言うから、命令されたように思ったのだろう。




