記憶
ぐわんぐわん頭を揺さぶられてるようだ。
ジーラが泣かせたこと、前にもあったな、シムゥンは思った。
ジーラがまだ子どもだった頃――?
親し気に話しかけてくるジーラを怒ったことがある。
「だから邪神って呼ぶなよ。神って崇め奉るならわかるけど、邪神って悪口だからな」
「だって、みんな邪神様って呼んでるのに……」
――邪神?
「なんで、邪神なんだ? 『様』つけたって、邪神って呼んでる時点で悪口だろう」
「じゃあ、なんて呼べばいいの?」
子どものジーラは泣いている。
そうだ、そうだ。
否定しても否定しても、みんな邪神様って呼んでくるんだ。
それが悪口じゃないから、タチが悪い。
この時は、なんとかジーラを泣き止ませようと宥めるのに必死だった。
――なんだ?この記憶は?
* * *
台座の上でシムゥンが横たわっていた。
魔法使いたちが詠唱を唱えている。
台座の向こうに扉がある。そこに邪神の魂が封印されているという。
邪神の魂を復活させる儀式が行われていた。
ジーラは、台座の上で横たわる眠るシムゥンを見ていた。
もうそこにシムゥンの意識はないかもしれない。
詠唱は続く。
邪神をシムゥンの体に宿らせるための儀式だ。
邪神を復活させるため、研究所から健康で魔力の強い子どもを引き取った。
情なんかわく訳がないと思っていた。
だが……。
* * *
台座に寝かされているのはわかった。
大勢の詠唱が響いている。
これは邪神である自分を復活させようとしている儀式だ。
これだけ慕われているのを実感して嬉しくもあった。
だけど……。
――みんな、幸せにやってるのかな? 僕のことよりまず自分らの幸せを考えなきゃ。
詠唱がぐわんぐわん響く。
なんだか、それが心地よくなってきた。
意識を洞窟内に巡らせてみると、一人のシミュレーションドールがいる。
女性型、壊れかけているのか。よろよろ歩いている。
どうやら、異世界から迷い込んだようだ。
――そうか。ゲートがまだ動いているのか。
今のゲートの管理人は……? いないんだっけ?




