仮眠
シムゥンはやけに眠いと思っていた。
時刻は夕方の五時。
昼寝には遅いし、就寝するには早い。
そんなシムゥンにジーラが声をかける。
「調子が悪いようだが? 風邪じゃないか?」
ジーラはシムゥンを引き取り、育ててくれた男だ。
シムゥンは本当の祖父のように慕っていた。
「そうかもしれない」
眠気をこらえつつ、シムゥンが返事する。
「少し、ソファで休むといい。夕飯になったら起こすから」
毛布を持ってきたジーラに横になるよう促される。
本当はまだやりたいことがあったのだが、シムゥンはとにかく眠かった。
後回しにしてもいいか、そんなことを思いつつシムゥンは眠っていた。
*
そこは暗かった。
寒くて、静かで、孤独感がつのる。
だが、そこにいるのは嫌じゃなかった。
そこに来る前は、妙に大勢の中で奮闘していたように思う。
孤独な時間を過ごし自問自答したり、無音のはずの空間であるはずのない音を聞いたり、光のない空間で何か閃いたり――
そんな過ごし方も悪くないと思った。
そこでどのくらいの時間を過ごしただろうか。
そろそろ、そこを出ようと思った――
*
それが夢だと、シムゥンはわかっていた。
まだ夢を見ているのだろうか? なんだか肌寒い。
今いるのはあの真っ暗な場所?
いや、リビングのソファで仮眠してたんだっけ?
自分の部屋に戻って、ベッドで寝た方がいいかな?
そんなシムゥンの耳に、会話が聞こえてくる。
「これが邪神の依り代か?」
「この子はただ魔法が強いだけで、依り代とは……」
「まさか、愛情が芽生えたとでも? 依り代にするために育てたのに?」
「それは……」
これはジーラの声だ。
それともう一人。
ジーラはどうも困ってるようだ。
ジーラに加勢しなきゃ、シムゥンは目を開けた。
そして、びっくりする。
ジーラともう一人の男が、ソファで眠るシムゥンを見下ろしていたのだ。
「え?何?」
はっきり、二人の男が自分を見ていた。
「起きないはずじゃなかったのか?」
もう一人の男がジーラを睨んでいた。